「最近、母に“顔が変わった”って言われたんです。僕自身としては顔も中身も変わってないと思っていて、それが誇りでもあったんです。でも“いいんじゃないの。しっかりしてきたんじゃない”って。“覚悟”みたいなものがちょっとずつ表に出てきたのかなと、うれしく思いました」
昨年1月に女優・杏と結婚し、今年の春には双子のパパとなった東出昌大。
「やっぱうちの子はかわいいと思います(笑)。どこの親御さんとも同じ気持ちです!」と時折、パパの顔を見せる東出だが、父親として役者として彼は変わったのか――。
東出が今回、心新たに“覚悟”して挑んだというのが映画『聖の青春』。
29歳という若さでこの世を去った天才棋士・村山聖(松山ケンイチ)の生涯を描いた作品で、東出はライバルで同志でもある若き名人・羽生善治を演じている。今なお棋界のトップで活躍する実在の人物という難しい役どころでありながら“どうしてもやりたい、自分以外の人にやってほしくない”と熱望したそう。
「羽生さんって“人間国宝”みたいな方なんです。将棋界の人たちは、同じ時代に生きれているっていうのを誇りに思っているほど。要は“神”だと。そんな羽生さんになりきるため研究を重ねました。将棋の指し方ひとつをとっても、プロ棋士の方たちはみんな“羽生さんの指し手は優雅だ”と言うんです。映像を見たり周りの方のお話を聞いたり、ご本人にもお会いして、動きやクセなどを取り入れていきました」
「“恋愛映画”だと思って見てもらえれば」
撮影では棋譜(指し手を記録したもの)を覚えて、3時間にもおよぶ長回しの撮影に挑んだ。緊張感高まる死闘のシーンは、まるで“殺し合い”のようだったと振り返る。松山は役作りのため大幅に体重を増やしたというが、東出扮する羽生の姿もソックリと話題に。
「実はメガネもご本人のものを譲り受けたんです。初めてお会いしたときに、もし当時のメガネのブランドや特徴を覚えていたら教えてくださいって聞いたら、次にお会いしたときに“家にあったので、持ってきました”って。“うわ〜! これはちょっと……”と、いち羽生ファンとして最初はさすがに触れられなかったです。今は家の宝石箱というか、大事なカフスボタンが入っている箱の一番下の段に“鎮座”しています(笑)。
いずれ羽生さんの記念館ができたときに、そういうところに所蔵されるべきものだと思うので、それまで大事にお預かりしておこうと思っています」
将棋を題材にした映画ってなんとなく男性向けのイメージがあるけど、女性にはどう見てもらいたい?
「この作品は“恋愛映画”だと思って見てもらえれば。松山さんいわく、僕はこの映画の中では“ヒロイン”なんです」
羽生という存在に強いライバル心を燃やす一方で、強い憧れの思いも抱いていた村山。東出は、2人にしか理解しえぬ世界みたいなものが描かれていると話す。
「男同士のそれってすごいはかないけど、美しいものがあって。男2人の境地っていうのがこの映画には詰まっているので、僕は今回の作品は恋愛映画だと思ってるんです。将棋がわからない人にも絶対伝わるものがあると思います」
父親になって変わったことは?
どこまでもまじめに作品と向き合う東出。ずっと俳優として活躍してきたイメージがあるが、実はまだ5年目というから驚き! ここ数年で、自身の境遇は公私ともに大きく変化した。
「僕自身、驚いてますよ。まだ役者になる前の自分に“これこれこういう人と出会って結婚して、5年後は役者をやりながら父親になってるぞ、しかもまさかの双子!”って言ったら“いやいや、まさか”って信じてもらえないでしょうね(笑)」
父親になって、何か大きく変わったことは?
「子育ては自然にやるようになりました。あとは外に飲みに行かなくなったことかな(笑)。役者としては、父親になったことが仕事に直結するかといったらそうでもなく、子どもができたからといって何か大きく変わったりしたことはありません」
20代もあと1年とちょっと!
「あんまり意識したことなかったけど、もうすぐ30歳か……。30歳ってやっぱり大台だと思うんです。僕、小学校5年生のときに担任の先生が30歳になって、そのときみんなで“おじさん”って冷やかしたんですけど、今考えると胸が痛くなりますね(笑)。1年1年ムダにせず、いい年の重ね方をしたいです。そういう意味では楽しみでもありプレッシャーでもあり。もっと頑張らなくちゃと思います」
<作品情報>
映画『聖の青春』
難病と闘いながら全力で将棋人生を駆け抜けた天才棋士・村山聖(松山ケンイチ)。ライバルであり憧れでもあった羽生善治(東出昌大)との友情、師弟愛、家族の愛情を通して、29年間の“奇跡”の生涯を描きだす。松山、東出をはじめ、キャストたちの徹底した役作りにも注目! 11月19日全国公開