「高学歴化するアイドルたち」
嗣永桃子さん、同じくハロプロで介護福祉の道に進むため、モーニング娘。'16を卒業した、モーニング娘。第9期メンバーの鈴木香音さん、そして弟の学費に目処がついたとして芸能界を引退すると発表した乃木坂46の橋本奈々未さん。いずれも、自分の目標とする新たな道に進むため、あるいは自らの目的を達成したため、アイドルそして芸能界を引退するという形を選びましたね。
彼女たちのように、今のアイドルたちは、その活動の合間を縫って学業にも精を出し、大学に進学したり、専門的な勉強をして資格をとったりするケースも多く、アイドル以外の道で生きていくという選択ができるようになりました。
今までイメージしてきた、いわゆる昭和のアイドルとは、アイドルの形そのものが変わってきているよなあと思うわけです。
「アイドルのあり方の変化は、メディアの多様化が生み出した」
アイドルの形が変わってきた背景には、メディアが多様化してきたということが挙げられると思います。メディアが多様化し、みんなの好奇心が色々なところに散らばってしまった。
大衆のために楽しむ芸能を作ってきたメディアの代表はテレビだったけど、もはや小中学生のあいだでは、テレビに出てるから何? っていう感じすらあるからね。
逆にいえば、テレビに出なくとも、ネットを中心としたその他のメディアで、素人がそれこそ一時的にアイドルのような存在になれる可能性もあるわけです。
メディアが多様化し、次々にアイドルが生まれては、すぐに消費されてしまう状況。そうした状況に晒されていることをアイドル自身もわかっているから、マルチに活動するための資格をとったり、あるいはアイドルを引退したあとの転身先を見据えて、アイドル活動をしながら勉学に励んだりする動きが増えてきたんじゃないかな。
同時に、事務所側もそうしたアイドルたちの意志を尊重しているように思えるし、さらにはファンもそれを暖かく応援しようとする風潮があるよね。
芸能界に一度入ってしまうと、顔バレしてしまうし、一般社会ではなかなか受け入れてもらえないというイメージがあったので、この変化はとても良い変化だと思います。親の立場からいえば、もし自分の子どもが芸能界に入りたいといったときに、どこか安心できる部分があるように感じます。
大衆芸能を象徴する存在がいなくなり、国民を代表するスターが生まれにくくなってきている昨今。その最後の存在だったのがSMAPなんじゃないのかな。だからこそ、昭和のアイドル時代に生きた人間としては、彼らが解散してしまうことにどこか寂しさを覚えずにはいられません。だけど、アイドルの形としては、今起こっている変化は決して悪いことではないのかなとも思うんです。
《構成・文/岸沙織》