10月29日、30日に行われたスケートカナダを終えて、日本男子フィギュアスケート界の若きエース・羽生結弦がこう語った。
「悔しさ9割、達成感1割。でも、光がちょっと見えたかなと思います。僕にしては初戦でここまで希望が見えたのは珍しいですね」
史上初のグランプリファイナル4連覇がかかるなか、グランプリシリーズ第2戦の結果だけを見れば、納得のいくものではなかった。
「ショートプログラムで4位と出遅れると、フリーでもコンビネーションの抜けや回転不足が取られて点数が伸びず、元世界王者のパトリック・チャン選手に次ぐ2位に終わっています」（スポーツ紙記者）
五輪プレシーズンという大事な時期だが、4月に『左足リスフラン関節じん帯損傷』を公表、全治2か月の診断を受けていた。ケガの影響からか、思うように練習ができなかったことを明かしている。
「ケガが治ってすぐだというのに、オーバーワークぎみの羽生選手に、ブライアン・オーサーコーチが休むよう促すこともあったそうです」（スケート連盟関係者）
オーサーコーチのもとには世界選手権王者のハビエル・フェルナンデスもいるだけに、ゆづクンの気持ちが逸るのもうなずける。
さらに今季は、新世代の台頭が著しい。闘志をかきたてられるライバルは、フェルナンデスひとりではない。
「1番乗りでファイナル出場を決めた宇野昌磨選手のほか、昨季ジュニアグランプリファイナル王者のネイサン・チェン選手は、SP、フリー合わせて4回転ジャンプを5本跳びます。
負けず嫌いの羽生選手だからこそ、ほかの人の調子がいいと“自分も頑張らなくては”と気合を入れているそう。特にチェン選手を意識しているそうです」（前出・スポーツ紙記者）
周囲が好調で、高いレベルでぶつかり合える。だからこそ万全の状態でなくても、ゆづクンの瞳は冒頭のような場面でより輝きを放つのだろう。
同時に、SPで使用するプリンスの楽曲『Let's go Crazy』にも勇気づけられているという。
「この中に“失敗することで、成功するための要素が見える”という歌詞があるのですが、それを今までの自分に重ね合わせ、勇気をもらっていると話していました」（前出・スケート連盟関係者）
衣装は上下真っ白なシャツにパンツで、その上に紫のサイケデリック柄のベスト。
「足もとまで白で統一していますが、白はリンクの色と同化してしまいがち。ジャンプの着地やステップなどが見えにくく、回転不足などの不利な採点になることもあるんです」（前出・スポーツ紙記者）
高橋大輔も現役時代、1度も白いパンツを使用したことがない。選手が避けて通る“鬼門”のカラーを使用しているところにも絶対王者の自信が漂う。それにしても、衣装にこだわる理由とは？
「できるだけこの曲を再現したいと思ったそう。曲の解釈も採点に含まれますから、衣装を白にすることで、プリンスの世界観を表現したかったのでしょう。
羽生選手は常々、“最終的に、音楽の的を射るプログラムにすることが目標”という旨を語っています。4回転ジャンプはもとより、スキルに自信があるからこそ、あえて白い衣装を選んだのではないでしょうか」（前出・スケート連盟関係者）
次戦は11月25日開幕のグランプリシリーズNHK杯。絶対王者の輝く瞳は、常に頂点を見据えている。