第45代の米大統領に決まった不動産王ドナルド・トランプ氏(70=共和党)。安倍晋三首相(62)は早く首脳会談できることに満足げで、日米関係はすでにトランプ氏のペース。
「あなたの勝利はアメリカン・ドリームだ」
トランプ氏に電話をかけた安倍晋三首相は、いきなりヨイショしてみせたという。氏はよほどうれしかったとみえて、
「安倍首相の功績を高く評価している。いろいろアドバイスしてほしい」
と謙虚な発言を繰り返したらしい。約20分の電話会談はいい雰囲気で終わった。
来年1月の正式就任を待たず、安倍首相は17日にもNYを訪問し、異例の早さで“日米首脳会談”にこぎつける見通しとなっている。
しかし、これでめでたし、めでたし─とはならないだろう。全米各地で「トランプを認めない!」「トランプは私たちの大統領ではない!」などと抗議デモが続いており、怒りや虚脱感がごちゃまぜになっている。米国内の情勢は不安定で、日本にかまっている余裕などないはずだ。
「これをアメリカン・ドリームと呼んだら米国民が怒りますよ。言いたい放題のトランプ氏は非常に危険な人物です。州知事や議員の政治経験が全くないのに、最高権力を身につけてしまった。
成金らしい人生観が色濃く出ていて、大国のトップリーダーとしては資質に欠けます。親米派の安倍首相は早く良好な関係を築きたいんでしょうが、焦りすぎてトランプ氏に首根っこをつかまれるのではないかと心配です」
と政治評論家の浅川博忠氏は話す。
「選挙戦と違って、トランプ氏も軟化せざるをえない部分が出てくる。媚を売る必要なんてありません」
小泉純一郎元首相の在任当時、ブレーンとして支えた浅川氏は、'02年にブッシュ大統領が来日したときのことを振り返る。
「小泉氏は形式主義を徹底的に嫌う。どんなときも、オレはオレ、のスタイルを貫くんです。訪米したときはブッシュ大統領とキャッチボールし、ブッシュ氏の運転するカートでゴルフ場を回った。来日したときは、東京・西麻布の手打ちそばがおいしい居酒屋に誘いました」(浅川氏)
日米首脳が非公式の夕食を楽しんだのは西麻布『権八』だった。そばや串焼きが評判の店で、高級料理でもなんでもなかった。小泉元首相は常日ごろ銀座に出かけるよりも警備人員が少なくすむ麻布を選ぶことがあったという。
つまり、気を遣う相手が違うというわけ。浅川氏は「ところが安倍首相は……」と続け、'14年4月に来日したオバマ大統領を東京・銀座の高級寿司店『すきやばし次郎』でもてなしたことに触れる。安倍首相が選んだのはミシュラン三つ星の名店だった。
「どうして妙な格好をつけたがるのか。小泉氏以降の首相は独立国家のリーダーという自信に欠けている。とくに安倍首相は、祖父の岸信介元首相や大叔父の佐藤栄作元首相と同じように米国に迎合しがちです。
国会答弁でも米国の言い分にばかり理解を示している。もし、トランプ氏が来日することがあったとしても、別に高級寿司を振る舞う必要なんてありません」と浅川氏。
関係者の後日談によると、オバマ氏は寿司20貫をペロリと平らげ、中トロのおいしさにウインクしたという。
一方、トランプ氏の好きな食べ物は、ファストフードやベーコンエッグ、アイスクリームや炭酸飲料。さらにこれまでの言動を見る限り、被爆地の広島・長崎を平和アピールのため訪問することはなさそうだから、国民の血税で寿司をおごるなんてバカバカしいといえる。