『スニッファー 嗅覚捜査官』(NHK総合 土曜夜10時~)は、ウクライナ発の世界的ヒットドラマをリメイクしたドラマ。主演に阿部寛、相棒役に香川照之が凸凹コンビを組み、犯罪事件を解決する。オリジナルにはないコメディー要素など、日本版ならではのこだわりのポイントをプロデューサーに直撃──。
日本版のリメイクはコメディー&人情プラス
ウクライナで制作され、世界的に大ヒットしたドラマの日本版。海外のテレビドラマ祭で数々の賞を受賞、世界60か国以上が放映権を取得。世界に先駆けてリメイクした日本版は、評判を呼び香港での放送が決定した。
阿部寛扮する主人公・華岡信一郎は、犯罪事件の解決に協力するコンサルタント。人並みはずれた嗅覚の持ち主で、事件現場のにおいを嗅ぐだけで犯人の年齢、性別、生活状況などを言い当ててしまう。優れた才能はあるが偏屈な華岡のお守り役としてコンビを組む人情派刑事の小向達郎を香川照之が演じている。
「おふたりがいなければ本作は実現しませんでした。サスペンス、コメディー、人情など、いろんなエッセンスを詰め込んでいるのですが、どうしたら視聴者の方に面白く伝わるか、阿部さん、香川さんはいろいろなことを試しながら、ひたむきに作品作りに向き合ってくださいました」と、磯智明プロデューサー。
ウクライナ版はハードボイルドタッチ。日本版では“本家”の斬新なテイストを生かしつつ、新たな要素をプラスしている。
「ユーモアや笑いを入れたほうが楽しめると考え、例えば、オリジナル版では主人公はクールにカッコよくにおいを嗅ぎますが、華岡は違う。現場の空気を鼻から一気に吸い込むような感じです。これがまず、笑いを誘う。そして華岡と小向のやりとりもコミカルです。さらに、オリジナルは犯人を捕まえると物語が終わりますが、本作では犯人側と華岡の人情味のあるエピソードを描いています」(磯P、以下同)
嗅覚が敏感すぎる華岡は普段はにおいをシャットアウトするため鼻栓を使っている。それをはずす注射器のような道具をあえて目立たせたのも日本版ならでは。
「フランスはじめ、この先リメイクする国々との差別化として、セットにもこだわりました。小向の部屋は典型的な日本家屋、華岡の自宅は、ある意味、日本文化のひとつともいえるオタク的な世界観のあるものにしています」
華岡がにおいを嗅いだとき成分の難しい単語を羅列するのは、阿部からのリクエストという。
「専門用語だらけの説明をとうとうと述べるのはいかにも華岡らしいので、そういう長ゼリフを書いてほしいと言われました。空気の読めない華岡らしさを表す見どころといえます」
ストライカー阿部とミッドフィルダー香川
“凸凹コンビ”の阿部と香川の掛け合いが絶妙だが、阿部と本格的に初共演した香川は、こう語る。
「サッカーで言えば、阿部さんがストライカーで、僕はミッドフィルダーみたいなものですね。画面を見ると、僕がさまざまなパスを出しているようにも見えるといいなと思います」
そんな香川を磯Pは“もうひとりの演出家”という。
「監督はゲーム全体の流れを作るけれど、現場に入ったら香川さんが司令塔。物語のシリアスな部分とコメディーの部分を香川さんの計算でバランスよく、成立させてくれています」
第5話(11月19日放送)では、ニュースキャスターの鹿島吾郎(原田泰造)の隠し子が誘拐された。しかし鹿島は隠し子の存在すら認めようとしない。そんななか、テレビ局に脅迫状が送られてきて─。
「原田さんは撮影初日に阿部さん、香川さんの前で延々と長いセリフをまくしたてるシーンでした。おふたりの前でNGを出せないという並々ならぬ決意があったのか原田さんは、どのシーンも見事に演じきっていますので、ご注目を。この先も、華岡、小向の前には次々に強敵が現れます。それをどう乗り越えていくのかにご期待ください」
●必見!毎回違う“顔芸”
本記事の1枚目の画像に注目してほしい。4枚組の左上の写真で、必死でにおいを嗅ごうとしている華岡の顔は、変顔ともいえるけど、すごいこだわりのワンショットなのだ。
「阿部寛さんはこのスチール撮影が華岡の初演技となったのですが、60パターンくらいにおいを嗅ぐポーズをとっていました。そのなかで選りすぐりのものです。
われわれとしては華岡らしくて大満足だったのですが、俳優としての阿部さんのイメージもあり、“本当にこれを使ってもいいですか?”と何度も確認しました。すると阿部さんが“これじゃなくちゃ嫌だ”と言ってくださった」
毎回登場する、華岡がにおいを嗅ぐ顔は、全部違った表情をするので要チェック!