道の駅グルメ日本一を決定する『道-1グランプリ』で見事1位に輝いた道の駅もてぎの『ゆず塩ら~めん』。栃木県・茂木町が作り出した逸品は、地域創生にかける情熱のたまものだった! 単なる道の駅版のB級グルメ決定戦ではない裏側をレポートします。

『ツインリンクもてぎ』がある町

 去る9月24~25日の2日間、道の駅丹後王国・食のみやこ(京都・京丹後市)で『道-1グランプリ』が初開催された。全国にある1100(!!)を超える道の駅のグルメNo.1を選ぶもので、本選に進んだ20の中から、来場者の投票によって初代グランプリに輝いたのは栃木県・茂木町にある道の駅もてぎの『ゆず塩ら~めん』。「ゆずの香りが食欲をそそる女性好みのヘルシーな激ウマら~めん」という噂を聞き、現地にお邪魔してきました!

ゆず塩ら~めん(640円/税込み)。爽やかなのに、うまみが抜群!

 栃木県・茂木町は国際的なモータースポーツが行われる『ツインリンクもてぎ』がある町としても有名。宇都宮市と茨城県水戸市の間に位置し、車なら常磐道か北関東道で、電車ならSLが走ることでも知られる真岡鐵道からアクセスが可能。パンジーをはじめとした四季折々の花がたくさん植えられている道の駅もてぎは、野菜直売所や茂木産米粉で作ったバウムクーヘンを販売する『バウム工房 ゆずの木』など多岐にわたった施設がそろっているため、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層に人気なんです。

 話題のゆず塩ら~めんは、構内にある『十石屋』にて販売されており、いたるところに「グランプリ受賞」の文字が! 取材に応じてくれた道の駅もてぎの企画・広報担当の阿島佳央さんによれば、「平日100食、土日祝150~180食だった、ゆず塩ら~めんは、グランプリ受賞後には平日600~800食、土日祝800~1200食になるほどの人気で行列状態に。うれしい悲鳴です(笑)」と、“道1”効果をさっそく実感しているという。とはいえ、「まったくグランプリをとれるとは思わなかった」というから驚きだ。

 そもそも『道-1グランプリ』は、参加希望の道の駅がエントリー用紙を出すところから始まる。そのうえで「地元食材の利用」「商品の製法」「商品への熱意」の3項目を主な審査基準として、最終的に20の商品が本選に選ばれるプロセスがあったという。であれば、道の駅もてぎにはどのような背景があったのか気になるところだ。

葉タバコ栽培から“ゆず”による村おこし

 茂木町はJT、専売公社の工場があり、葉タバコの生産で潤っていた過去をもつ。しかし昭和50年代に工場が撤退し、葉タバコ農家が激減するや過疎化が進む。打開策として葉タバコ栽培をしていた遊休農地を利用し、ゆずの生産による村おこしを開始すると、1996年には栃木県第1号の道の駅のもてぎが誕生した。

 ところが2005年に高速道路の北関東道が開通すると茂木町を素通りして茨城、栃木方面に抜けてしまう人が続出。町は、立ち寄ってもらえるよう“茂木ならではの商品=ゆずを使用した加工品やメニュー”へと舵をきることにした。

 当時、ゆずを生産できる北の限界地であった茂木産のゆずは、南で作られるゆずよりも甘みや香りが強いという特質を持っていた。寒暖の差が激しく、寒さをしのぐため皮が厚くなり、より風味が強くなる傾向にあったのだ。ゆずの生産が増えると、ゆずを加工品などにして使いやすい形で流通を開始。茂木=ゆずの町として認知してもらうため、積極的に道の駅でも販売。その集大成が、構想1年以上を費やし、地元の製麺業者とともに開発した特製麺を使った『ゆず塩ら~めん』というわけだ。

道の駅もてぎからは真岡鐵道を走るSLの雄姿も楽しめる!

“道の駅もてぎ”だけが有名になっても意味はない

 このような情熱と努力を傾けた20の道の駅がしのぎを削ったのが『道-1グランプリ』で、3位になった『あわじ島オニオンビーフバーガー』も淡路島の玉ねぎを知ってもらうために開発された。淡路島南ICから降りて淡路島にいかにして立ち寄ってもらうかを熟考したうえでの誕生だったという。だからこそ「どこがグランプリを受賞してもおかしくなかったし、まさか自分たちがとるとは夢にも思わなかった」と、阿島さんは振り返る。

「グランプリを獲得していちばんうれしかったことは、ゆず塩ら~めんを通じて“茨木町のゆず”が全国に広まったこと。宇都宮=餃子と認知されているように、茂木=ゆずとなることが、この町で暮らす人と働く人の目標。道の駅もてぎだけが有名になっても意味はないんです。ゆず塩ら~めんの売り上げが伸びても、ゆず農家の後継者がいなくなれば作れません。たくさんの観光客が茂木に来て、町が活気を取り戻すことがいちばん。そのための一つが、ゆず塩ら~めんなんです」(阿島さん)

 そんなことを聞いた後でいただいたゆず塩ら~めんの美味しさは格別。鼻に抜ける芳醇なゆずの香りと、ゆずの味とケンカしないのど越しのよい特製麺。炒めずにゆでただけのご当地野菜のシャキシャキ感はヘルシー&さっぱり。女性のリピーターが多いのも納得! 付け合わせ調味料の「ゆず酢」をサッとかけると、お椀全体からゆずの風味がよみがえる。ここでしか味わえない“ゆず酢マジック”とも言いたくなる、何度でも美味しくなる仕掛けをぜひとも体験してほしい。

 道の駅は総じて町の入り口にある。そこに集う商品は、その町に来てもらうための呼び水であり、その町に暮らす人々の情熱を知る入り口でもある。道の駅のグルメは、個人競技ではなくて団体競技。そのことを知ると一層味わい深いものがあるはず。

取材・文/我妻アヅ子

◎道の駅もてぎ
栃木県芳賀郡茂木町茂木1090-1
営業時間9:00~19:00(10月~3月は18:00まで)
野菜直売所8:00~17:00
休館日:第1・第3火曜日は十石屋おみやげけやき(欅)のみ営業

【『道-1グランプリ』出店20店舗】

1位 ゆず塩ら〜めん(道の駅もてぎ/栃木・茂木町)
2位 苺氷り(道の駅大月/高知・大月町)
3位 あわじ島オニオンビーフバーガー(道の駅うずしお/兵庫・南あわじ市)

釜茹でじゃがいも(道の駅すず塩田村/石川・珠洲市)
ちゃっぷ丼(道の駅あさひかわ/北海道・旭川市)
大塔カレー(道の駅吉野路大塔/奈良・五條市)
漬物やきそば(道の駅来夢とごうち/広島・太田町)
上州太田極黒焼そば(道の駅おおた/群馬・太田市)
豚の味噌麹焼き丼(道の駅発酵の里こうざき/千葉・神崎町)
おいしかバーガー(道の駅奥伊勢おおだい/三重・大台町)
いかメンチ玄米そば(道の駅なみおか アップルヒル/青森・青森市)
トマトカレー(道の駅シルクのまち かや/京都・与謝野町)
しいたけバーガー(道の駅龍遊館/和歌山・田辺市)
尾道青パパイヤフリッター(道の駅クロスロードみつぎ/広島・尾道市)
広島お好み丼(道の駅世羅/広島・世羅町)
太刀魚ちりめん丼(道の駅うわじま きさいや広場/愛媛・宇和島市)
金星豚バーガー(道の駅太良/佐賀・太良町)
海軍さんのコーヒーミルクソフトクリーム(道の駅させぼっくす99/長崎・佐世保市)
みやざきチキン南蛮スティック(道の駅都城/宮崎・都城市)
スーパーホルモン(道の駅黒之瀬戸だんだん市場/鹿児島・島町)

※1〜3位以外は予選を勝ち抜いた17商品(順不同)