日本人の“若さ信仰”は根深い。ちょっと老いが顔に出ようものなら「劣化した」とささやかれ、若見えの女優やタレントは「奇跡の○歳!」と称えられる。そのくせ、若くあろうと努力をすれば、「美魔女とか、イタイよね〜!」と手キビシイ……。われわれ中年世代のエイジング、一体ど〜したらいいの!?
そこで、「こんな大人の女性になりたい」と誰もが憧れる永遠のファッション・アイコン、野宮真貴さんに、そのエレガントな雰囲気と美貌の秘訣を聞いた!
年を重ねなければ似合わないものもある
「赤い口紅はエイジングケアできるアイテム」
と語るのは国内外にファンをもつ伝説のバンド『ピチカート・ファイヴ』の元ボーカルで、音楽からファッションまで注目を集める野宮真貴さん(56)。
「もとはピンクリップが好きだった私ですが、40代になったころから赤に移行していきました。ダイヤの指輪などもそうですが、若いころは似合わなかったものや色が、年を重ねて変化した髪や肌の質感によって、逆に似合うようになったのだと思います」
実は赤は万能色で、何色ともよく合う。つけるだけで背すじがすっと伸び、仕草もエレガントになる効果があるとか。
「年を重ねると、フェイスライン、目元・口元の印象など、さまざまな部分があいまいになります。だからこそ、赤を使ってはっきりした部分をつくることがポイント。実際、赤い口紅は顔色がパッと明るく華やぎますし、口角が上がってリフトアップして見えます」
とはいえ、“え! 真っ赤な口紅!?”とたじろぐアラフィフ世代もいるはず。
「赤といっても今はさまざまな赤があります。自分の肌や髪の色、雰囲気に合ったものを選べば大丈夫」
それでも不安という人は美容師や化粧品会社のプロを頼るのもひとつの方法。
「意外かもしれませんが、私には小さいころから外見に多くのコンプレックスがありました。私がファッション・アイコンと呼ばれるようになったのは、仕事柄、周囲に一流のスタッフがいたことが大きな要因。ヘアメイク、スタイリスト、カメラマン、アートディレクターなど私を輝かせるために多くのプロが私をプロデュースしてくれたのです。
プロデュースしてもらうというと一部の有名人の特権と思われがちですが、けっしてそうではありません。美容師、行きつけのブティックの店員、皮膚科医、エステティシャンなどのプロに意見を聞き、上手に取り入れること。これも立派なプロデュースといえると思います」
「雰囲気美人」になるために必要な3つのこと
野宮さんは、ケア次第で雰囲気美人には誰でもなれると断言する。
「雰囲気美人とは、けっしてリアル美人ではないけれど、その人がまとっている“雰囲気”、つまりムードで美しいと感じる人のこと。例えば表情や仕草、声や言葉遣い、清潔感や空気感から発せられるもので、かくいう私も雰囲気美人への道を歩いてきたひとりです」
雰囲気美人になるには次の3つが必要と野宮さん。
・外見をよく見せるテクニックを持つ(着こなし、ヘアメイクなど)
・心身ともに健康である(元気で機嫌がよいこと)
・個性を大事にする(自分が好きなことを大事にする)
人生も折り返し地点を過ぎると、リアル美人と雰囲気美人が逆転するという現象が起きてくるという。たしかに同窓会に参加して、学校一の美女だった女性がちょっと残念な姿に変貌していたり、冴えなかった女性が素敵に変身していて驚いた……といった体験はよく聞く話だ。
「リアル美人はうらやましい存在ですが、ふとした瞬間に“素敵な人だな”と思うのは、雰囲気美人のほうが断然多い。女性は誰でもそれぞれの魅力を磨けば、雰囲気美人になれますよ」
“ある程度の年齢になったら上質なものを”というが、日々の生活のなか、おしゃれのために大枚をはたくのはなかなか難しい。
「すべてを上質な品でそろえるというのは非現実的。お財布と相談しながら優先順位をつけてそろえていくのが賢明です。年に何度着るかもわからない一張羅ではなく、使用頻度の高い日常のものこそ上質にしたいもの。代表的なものでいえば、靴。といっても無理して10万円以上の靴を買う必要はありません。1万円台の靴を2足買うなら、自分にしっくりくる3万円の靴を購入し、手入れをしながら大事に使えばいいのです。大人の女性に大切な“きちんと感”が出るのはもちろんですが、安価な靴よりもラクに長くはくことができるので、結果的には経済的だと思います」
とはいえ、もう“おばちゃん”というカテゴリーに自ら足を踏み入れてあきらめてしまったアラフィフ世代も多いはず。
いまさら、何をどうすれば……。
「そんな人にこそ“赤い口紅をつける勇気”が必要だと思います。
私は30代、40代までは、若さにしがみつくことに頑張っていた。それが50代になると頑張りすぎず、この先を生きる知恵もつき、思った以上にラクに生きられるようになった。そして、年齢を重ねることもなかなか楽しいものだと思えるようになってきました。
私にとって、赤い口紅やヒールは、女性であることを意識させてくれる大切なアイテム。せっかく女性に生まれたのだから、ヘアもメイクもファッションも、この先もっと楽しみたい。その第一歩を踏み出す象徴が“赤い口紅”なのです。赤い口紅は、悩める多くの女性の背中をそっと押してくれるはずです」
野宮真貴さんに聞く! 『週刊女性』読者のお悩みQ&A
Q.現在、おばちゃん街道まっしぐらの私だけど、心の中では上品な仕草や立ち居振る舞いができる女に憧れてる。もうムリ!?(45歳・既婚・パート)
A.「女性は話し方や声のトーンを変えるだけで落ち着いた雰囲気になります。例えば、意識して低めの声にしてみたり、早口をやめてゆっくりしゃべるだけでも印象はまったく違います。また、言葉遣いも重要です。若者言葉はできるだけ使わずに、丁寧な言い回しをすると大人の“きちんと感”が周囲に伝わるはずです」
Q.家庭を持ってから、おしゃれをするきっかけや場所がない。センスも錆びつき、このまま普段着だけのおばさんになるのは寂しいです!(48歳・既婚・専業主婦)
A.「部屋着と普段着のローテーションがファッションの中心になっているというのは、よくあること。そんな人は“普段着革命”を! 今まで外出着として大切にしていた服を、普段着にしてしまうのです。何でもない1日のために素敵なコーディネートを考え、アクセや小物も合わせる。おしゃれの勘を鈍らせないトレーニングにもなるはず。また、日常を丁寧に過ごすことは、いつも自分を大切にすることにつながりますよ」
Q.子どもたちも手を離れ、主人と2人の時間が増えました。恋人同士に戻る、とまでは望みませんが、単なる同居人ではむなしさを感じてしまいます。(54歳・既婚・パート)
A.「非日常の2人の時間を作っては? 気合を入れておしゃれをして夫婦でデートをしてみて。時間と場所を決めて、待ち合わせるのも新鮮。出かける先がシックなレストランやコンサート会場など大人の空間ならさらに素敵! 普段の生活にちょっとしたエッセンスをプラスしてみて」
■きれいになれるテクニックと赤い口紅で、誰もが“美人”に!
10年ぶりの書き下ろしエッセイ『赤い口紅があればいい いつでもいちばん美人に見えるテクニック』(幻冬舎)が発売中。野宮さんが音楽活動を通して手に入れた、効率的に美人に見える方法が満載。また、オーガニックもモードも両方ほしい大人の女性のために野宮さんがプロデュースした「塗るたびに美しくなる」サプリルージュも人気。色はPARIS REDとTOKYO REDの2色(MiMC)
<プロフィール>
野宮真貴さん◎シンガー、フィトテラピスト(植物療法士)。「ピチカート・ファイヴ」3代目ボーカリスト。現在は音楽活動に加え、ファッションやビューティーのプロデュース、エッセイなど多方面で活躍。アルバム『男と女〜野宮真貴、渋谷系を歌う。』が好評発売中。