整体トレーナー・奥谷まゆみさん

 時間の流れに抵抗したり、逆行しようとするアンチエイジングではなく、アラフィフ世代には「スローエイジング」がおすすめと話すのは整体トレーナーの奥谷まゆみさん(52)。

「これまでアンチエイジングのためにさまざまな努力をしてきた人の身体を見てきましたが、みなさんどこかに負担がかかっています。つまり無理をして身体にひずみが出ている人が多いのです」

 命の流れを否定したり、止めようとするのではなく、身体を無理なく活性化させ加齢スピードを緩めることが大切だという。

そこでおすすめしたいのが日常生活の中できれいを目指す方法です。これにピッタリなのがきれいな姿勢。姿勢が悪い人は、どうしても老けて見えますし、さまざまな不調を抱えてしまいます。アラフィフ世代のきれいは健康とセットであることが何より大切ですが、姿勢をよくすることで、この2つがどちらも手に入ります」

 姿勢が悪いと老けて見えるというのはよく聞く話。1度、家事をする自分を動画で撮影してみて、と奥谷さん。あまりの姿に「えーっ!」と声が出るほど驚く人もいるはず。

「姿勢をよくするために、まずは正しい座り方を心がけましょう。どんなに忙しい人でも、運動が苦手な人でも座るという動作をしない人はいないはずです」

正しく座るだけで不調も改善!

 正しく座るには以下の点がポイント。

・座骨を座面に立てて座る
・首は前に倒さない
・ひざとつま先は正面
・足は床につける

「座骨は左右のお尻の奥にある骨。もっと簡単にいうと、女性の大切な部分を座面にベッタリつけるように座ればいいのです。わからない人は、鏡の前に裸でイスに座って大切な部分が見えなければOK。また、左のお尻を手で左側に開くようにして座ると簡単です(イラスト参照)。

 座骨を立てることで、自然と背すじが伸び、内臓が正しい位置に戻ります。すると前に出ていた首も身体の上に戻り正しい座り方になるのです。多くの人が悪い姿勢よりも楽に感じるはずです」

お尻を左右に開いて座ると骨盤が安定する。外出先では、スカートやパンツのシワを直すふりをしてさりげなく広げて イラスト/もりたりえ

 また、正しい座り方は筋肉も鍛えられるという。

「座っているときに使われるのは“支える筋肉”です。姿勢が悪くなるのは、支える筋肉が衰えることが大きな原因。何もしなければ、加齢により筋肉の衰えはさらに進んでいきます」

 スローエイジングのためにも正しい座り方は効果的。また、これをマスターすると子宮や卵巣のトラブルをはじめ、冷え症、むくみ、肩こり、気分の落ち込みなど、さまざまな不調も改善されるとか。まさにいいことずくめ!

右は電車の中でよく見る光景。頭が前に出て、背中が丸まり、足を投げ出した悪い座り方。左は座骨が立ち、頭が身体の上にくる正しい座り方。自然に背すじが伸びる。ひざとつま先は正面に向けて、足は投げ出さずに床に。高いイスなら、つま先だけ床につけてもOK

スローエイジングは今の自分を知ること

「年を重ねてきて私が思うのは、自分の身体をあきらめちゃダメということ。そして、自分の今を見るということです。以前はできていたことができなくなったと悲観したり、将来はどうなるのだろうと心配したり、過去や未来ばかりを見て不安になる人がいます。そうではなく、今の自分を見て、知ることのほうがずっと大切。現実を見ることからスローエイジングは始まります。

 鏡や動画を見て、自分の身体を知り、そして、今できることは何なのかを考えましょう」

 年齢とともに定期的に身体を鍛えることはおっくうになりがち。今年こそ“ジムに通う”“ウォーキングを始める”と決意するものの、なかなか実行できない。

 「だからこそ日常生活の中で無理なく継続できる方法を見つけて。身体は何歳からでも変わります。まずは座り方を変えて、きれいな若々しい姿と健康を手に入れましょう」

<プロフィール>
奥谷まゆみさん
整体トレーナー。心理療法を勉強したのち、1994年から整体師として活動を始め、'98年に「からだクリエイトきらくかん」を開設。近著に『Dr.クロワッサン 座り方を変えるだけで、不調は治る!』(マガジンハウス)など。