'13年に『いじめ防止対策推進法』が施行され、学校にいじめ予防のチームを設置、重大ないじめ事件が起これば第三者委員会が調査にあたることが義務づけられた。これで状況が改善されるかと思いきや──。
※いじめ被害者の家族たちが、調査委員会に対して不満を募らせる事例については、前編《いじめ調査委員会のずさんな実態「市教委の対応にはバカにされていると感じました」》を参照
『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』(講談社)の著者で、明治大学文学部の内藤朝雄准教授は、調査委員会などを頼りきることに対して警鐘を鳴らしたうえで、
「犯罪にあたるいじめが起こった場合は、隠蔽することが利益になる学校や教育委員会、調査委員会に頼らずに弁護士と一緒にすぐさま警察に駆け込むことが大切です。弁護士を伴うことで警察も本腰で調査にあたらなければならなくなるからです。仮に子どもが暴力、精神的なダメージを受けて不登校になった場合は、病院でもらった診断書を出せば有力な証拠になります」
いじめ自殺を未然に防ぐために
いじめ発生後の調査はもちろんだが、大切なのは、いじめによる自殺を絶対に防ぐこと。『いじめ防止対策推進法』の立法者で民進党の小西洋之参議院議員は、
「“予防・早期発見・事案への対処”の3つが肝要です。これらを達成するために『いじめ防止対策推進法』を作り、その中で“すべての学校にいじめ対策チームの設置”と“いじめ防止プログラム”の義務化に至りました」
過去のいじめ事件を踏まえた結果というのが同法。
「過去の自死事件で、いじめの対応能力がない担任教諭がひとりで抱え込んでしまうケースがありました。しかしチームならば複数の教諭の力で対応できる。さらに、チームの活動を生徒側が認識すれば“学校が総力をあげて対策をしている”と感じることで、被害者もその周りもいじめを通報できる雰囲気になっていくはずです」(前出・小西氏)
しかし現状は、これらの存在を知らない子どもや親が多い。
「いまだにこれらの対策が浸透していないことが自死から救えていない最大の原因です。法改正の議論も始まり、今までの条文よりも詳細で強固な記述にするつもりです」(前出・小西氏)
一方で、前出の内藤氏は「親は、“子どもが本気でやろうと思えば、いじめられていることを完璧に隠すことができる”ということをしっかりと認識することが大切」だと語る。
「その認識を持ちつつ、何かのキッカケで気づいた場合、教員がよっぽど信頼できるときは学校に相談してもいいと思いますが、そうでないことも多いので、すぐに法的手段をとる、あるいは損失が少ない段階で転校する、といったことも選択肢のひとつです」
悪口などのコミュニケーション系のいじめは“記録”を取ることが大事なんだとか。
「メモや録音などできちんと記録を取り、弁護士に頼んで加害者に“やめなければ法的措置をとることも考慮している”という内容証明郵便を送るという手段もあります。相手の親は驚いて“もうあの子とは接触するな!”となりますし、加害者本人も“いじめで損はしたくない”“これ以上やると面倒なことになる”と思ってくれるかもしれません」(前出・内藤氏)
調査委員会の対応もしっかりしてほしいものだが、それ以上にいじめによって苦しむ子どもをひとりでも減らすような社会を大人がつくらなければならない──。
(ジャーナリスト渋井哲也+『週刊女性』取材班)