「いい男がいない」。未婚のアラフォー女性がよく使う言葉です。しかしこのセリフを吐いたら赤信号。あなたは“カン違いフレンチ女”かもしれません――。
前回、アラフォー女性が結婚できない理由として、本当は「中華料理女」なのに、「フレンチ女」だと思っていることを述べました。「中華料理女」とは、休みなくガツガツ働いてしっかり稼ぐ女性のこと。収入が不安定な男性に好まれます。一方で「フレンチ女」とは、結婚することによって、男性がステータスを得られる女性です。華麗なる一族の令嬢と結婚する会社員や、院長の娘と結婚する勤務医、有名女優と結婚する青年実業家などがあげられます。では、なぜアラフォー女性の多くが、自分を「フレンチ女」だと思ってしまうのでしょうか。
飯島直子が44で結婚したのは、飯島直子だからだ
僭越ながら、まずは私のカン違いを例に挙げて、考えていきましょう。
1789年と言えばフランス革命。では、2012年と言えば? そう、飯島直子が44歳で再婚した年です。相手は会社経営者。このニュースを聞いて勇気づけられたアラフォー女性は多いはず。かくいう私もそうでした。
当時、絶賛婚活中だった私は、友人にこういいました。「飯島直子もいい人と結婚したし、私も頑張るよ」。そんな私を見て友人が一言。「飯島直子と自分を一緒にしないほうがいいんじゃない?」。今思えば、非常に適切なアドバイスだったのですが、当時の私はまったく意味がわからず、「え? どうして?」と真剣に聞き直していました。
恐ろしいことに、国民的な女優である飯島直子と自分を同じレベルに置いていたのです。思えば、窮乏するフランス国民に、「パンがないなら、お菓子をお食べ」と言い放ったマリーアントワネットくらいのズレ感。いかに人間は「自分を客観視することができないか」といういい例ですね。なんだか他人事のように言っていますが、このように“世間の評価と自己評価のズレで起こる悲劇”は、歴史上、後を絶ちません。そしてこのズレこそが、多くのアラフォー女性が結婚できない理由でもあるのです。
では、なぜこのような事実誤認が起こるのでしょうか。1つには、企業社会での市場価値と婚活市場での市場価値との間に、ギャップがあることがあげられます。
会社での価値と婚活市場での価値は違う
アラフォーで独身ということは、これまで一生懸命に仕事に打ち込んできた人がほとんどです。その結果、女性であっても管理職に就いていたり、大学で教授になっていたり、起業して数人の社員を抱えるようになっていたりと、ある程度の社会的地位を得ているわけです。
しかし、こうした社会的地位は、婚活ではまずプラスに機能しません。合コンで東大出身の女性がドン引きされるように、婚活市場において男性を脅かすような地位はむしろマイナスになります。アラフォー女性はそのことに気付かず、努力して手に入れた社会的地位を、婚活の場で“自分のウリ”としてアピールしてしまうため、肩透かしを食らうのです。
もちろん、社会的地位が飛びぬけて高い場合は別です。会社を上場させた女性起業家とか、ベストセラーを連発する人気作家とか。実際、私の知人は失業中に超売れっ子の漫画家と結婚し、そのおかげであっさり就職が決まりました。「離婚したら会社をクビになるから、奥さんを大事にしないと」としみじみ語っていた姿が印象的です。結婚しているだけで仕事が保障されるとは、非常にうらやましい話です。
このように、「結婚しているだけで男性の仕事のプラスになる」。これが、フレンチ女の条件なのです。
とはいえ、自分の市場価値はなかなか測れないものだと思います。そこでわかりやすい目安となるのが、「まじ? すげー」の法則です。婚活をしていた当時の私は、書籍編集者の傍ら、ビジネス本を出し、講演活動などもしていました。そのため、近所の人の間では「活躍していてすごいね」と言われていた。しかし、世間で知られる存在かというと全くそんなことはないわけです。簡単に言うと、「飯島直子と結婚したんだって」には、「まじ? すげー」と声が上がりますが、悲しいかな「高嶋ちほ子と結婚したんだって」に対しては、「よかったね」で終わり。つまり、結婚相手として周囲に「まじ? すげー」と言われるレベルでないと「フレンチ女」にはなれないということです。
では、「フレンチ女」にはなれないアラフォー女性はいったい何になれるのか。一番簡単なのは「中華料理女」になることです。ガツガツ働いて、どんどんお金を稼いでくる。男性のお金に対する不安を払しょくさせるので、非正規雇用者が増えている今の時代に需要は高い。実際、私の婚活時代を思い返してみても、私を「中華料理女」だと見込んで、生活力がない独身男性がアプローチしてくる例は結構ありました。
例えば、婚活パーティに来ていた「役者になりたい」という40代男性。今は量販店に勤務し、休みの日にエキストラをしているが、体が持たないので役者一本でいきたいといいます。そんな彼に対して私が放った愚かな一言は、「エキストラでは食べていけないんじゃないですか?」。「だから支えてほしいんですよ!」と半ギレされたことを昨日のように思い出します。
ほかにも、会社を辞めて大学に入ったから、哲学者になれるまでサポートして欲しい、という男性がいました。やはり「哲学者なんて食べていけないんだから、ちゃんと就職したら」という私の夢のない発言を機に、彼は去っていきました。
自分が大黒柱になるという選択もアリ?
この2人は極端な例にせよ、このご時世ですから、仕事が不安定だったり、年収が低いために結婚できない男性はたくさんいます。研究者、NPOで働く人などの中には、自分の考えをきちんと持っていて素敵だなと思う人も結構います。
そのなかで、子育てや家事、介護を多めに分担してくれる人を選べば、子育てと介護を同時にこなす「ダブルケア生活」になっても、自分の仕事を続けていける。私の周りにはダブルケア生活で仕事を辞めざる得ないアラフォー女性がたくさんいます。それを考えると、自分が大黒柱になる選択もありかな、と思います。
とはいえ、「フレンチ女」になり切れなかったアラフォー女性がみな「中華料理女」になればいいかというと、そんなことはありません。実際私がそうだったように、40代になってバリバリ働くのは、体力的にしんどいと思う人も多いわけです。女性は40代になると、更年期障害など女性特有の病気も襲ってきます。体調が安定しない中、大黒柱となって稼ぐのは、正直厳しい。そんなときにお勧めしたいのが、「お茶漬け女」になること。簡単に言うと、「和食女」の後釜です。
「和食女」とは、短大を出てすぐに結婚するような、いわゆる専業主婦タイプ。しっかり家庭を守り、子供を育て上げる良妻賢母です。そうした女性の夫は、大の仕事好きでバリバリの出世頭、家のことは奥さんに任せきり。浮気をすることはあっても、離婚をすることはまずない…。こういう男性は、お見合いや上司の紹介などで、20代前半には結婚してしまうので、婚活市場に姿を現すことはないだろう――と思いきや、実はそうでもないんです。
こうした男性が50代に差しかかると、婚活市場にちらほら現れてきます。その背景として多いのが、奥さんと死別したケース。奥さんが早くに亡くなって、男手1つで子どもを育てていたものの、子どもが大学生になって手がかからなくなったので、結婚を考えるようになったというパターンです。
死別でなくとも、仕事三昧で家庭を放っておいたら、奥さんが子どもと共に出て行ってしまい、離婚したというケースも多いです。子どもとはたまに会っていい関係を築いているものの、この度成人したので、そろそろ結婚を考えようと思っている、なんていう男性も結構います。
つまり、こうした男性が50代で婚活市場に出てくるきっかけは、「子どもの自立」にあります。一緒に住んでいるか否かは関係なく、子どもが大学生になってはじめて、自分の結婚を考え始めるのです。
いずれにしても、バツイチ50代男性には逸材あり。中には、大企業の役員で高年収。趣味はヨット、好きなお酒はワインとブランデー、なんて“裕次郎人材”も平気でいます。裕次郎とまではいかなくとも、その年代の人は仕事熱心でまじめな人が多い。一度失敗しているから、奥さんにも優しくしようと思う。結婚相談所でもこうした男性を紹介されましたし、婚活パーティでもよく見かけました。
「お茶漬け女」には豊かな人生が待っている
かくいう私も「お茶漬け女」です。結婚相手は11歳年上の57歳。この話をすると、「すぐ介護じゃん!」と言われますが、最近の男性は健康寿命も長いので、さして気にしていません。私の周りにも、幸せそうな「お茶漬け女」がたくさんいますよ。50代の大学教授と結婚した40代女性は、いきなり2人の子持ちとなり、みんな独立していて普段は会うことがないそうですが、先日、孫が生まれたとか。突然おばあさんになる可能性もあるわけですが、家族は多い方が豊かな人生を送れます。
「中華料理女」になるか「お茶漬け女」になるかは、好みの分かれるところだと思いますが、どちらも最大のポイントは「売り手市場」だということです。婚活をしてもなかなか相手が見つからないという女性は、「相手の年収」か「相手の年齢」、どちらかの条件をとっぱらってみたらいかがでしょうか。
高嶋 ちほ子(たかしま・ちほこ)◎ビジネス書作家、編集者。上智大学卒業。放送作家として活躍後、角川書店(現・KADOKAWA)『東京ウォーカー』、リクルート(現・リクルートキャリア)転職サイト「リクナビNEXT」などの編集部に在籍し、3000人以上の会社員、1000人以上の業界トップに取材。著書に『プロ論。』『出世ドリル』など多数。キャリアカウンセラーの資格も持つ。