市川崑監督の名作をバカリズム脚本でコミカルに描いた不倫ドラマ『黒い十人の女』(読売テレビ・日本テレビ系 木曜夜11時59分~)。船越英一郎扮するドラマプロデューサーの男をめぐって10人の女たちが繰り広げる愛憎劇がいよいよクライマックス。共闘した女たちの計画、モテ男の末路は?

市川崑監督の同名映画では船越の父・英二(故人)が主演
ドラマプロデューサーの風松吉には、妻以外に9人もの愛人がいた! ユニークな不倫劇が話題だ。
1961年に市川崑監督の同名映画を、バカリズム脚本で現代風にリメイク。10股男の風を演じるのは、船越英一郎。映画では船越の父・英二(故人)が演じていた。
「中途半端に原作をなぞるのではなく、全く新しいものとして生まれ変わらせようという意図が強くありました。原作サイド(崑プロ)からも“思い切りやってほしい”と言っていただきました。設定と大枠は保持しつつ、“おもしろい”ことを最優先に物語を作っていきました」
と、汐口武史プロデューサー。
今年は、有名人の“不倫”が取りざたされ、注目を集めた。
「個人的には不倫が社会問題という表現自体、コミカルだと思うんです。個人的な問題でしかない不倫が、社会問題であるかのように扱われているのが、2016年の滑稽なところだったのではないでしょうか」(汐口P、以下同)
不倫ドラマにありがちな“ドロドロ”を笑いに変えたおもしろさに重点を置いた脚本は、掛け合いや会話のモノローグが、笑いを誘うだけでなく、不倫をする女性の本音もズバリと描かれている。
「バカリズムさんは“周囲に取材しようにも、不倫している人は名乗り出てこないから”と、嘆いていましたが、キャストのみなさんが、“バカリズムさんは何でこんなに女心がわかるの?”と驚いていたのは印象的でした。
ちなみに、バカリズムさんからすると“男はみんな(女心を)わかってわからないふりをしているのに……”ということだそうです」
不倫はやめたいのに抜け出せないテレビ局の受付嬢、愛人たちと仲よくなろうと画策する舞台女優、なぜ中年男と不倫をしているのかわからなくなっている若手女優、そして冷静な妻……。風を取り巻く女たちは、十人十色の個性派ぞろい。
「10人の女性が勢ぞろいするシーンは壮観でしたし、撮影中はたびたび爆笑や拍手が沸き起こる、まれにみる楽しい現場でした。編集の上がりのときにも、全員で拍手していましたね。こういう光景は僕も初めての経験でした」
女の壮絶バトルと“笑撃”のラスト
9人の愛人たちは、いがみ合い、罵り合い、殴り合い、女同士のバトルを繰り広げる。なかでも、古株の愛人・佳代役の水野美紀は、顔面にカフェオレ、焼酎、あんかけ焼きそばをかけられる派手なシーンも。
「水野さんは、どうやってかぶればいちばんおもしろいか、真剣に考えていたし、かける側の緊張感も半端じゃなかったと思います。佐藤仁美さんの液体をぶっかけるコントロールは唯一無二かと(笑)。それから、成海璃子さんや佐野ひなこさんがブレーンバスターや三角絞めに取り組む姿は美しかったです。この先も、驚きのバトルが登場します」

ドラマはいよいよ佳境に。風の殺害計画を立てた10人の女。第9話(11月24日放送)では、その計画が実行される―。
「10股不倫男がどんな末路にたどり着くのか、そして10人の女たちにどんな未来が待っているのか。最後まで笑って見ていただけたら、うれしいですね。小難しいメッセージは一切ありません。感じたとおりに受け取っていただければと思っています。
“深いなあ”“哲学的だなあ”でも、小バカにしながらでも、どちらでも。共感できなかったとしても、愛おしくなる女性たちと風の結末は、原作の映画を見た方にも驚いていただけるラストになっています」