古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第10回は鮫肌文殊が担当します。

古舘伊知郎 様

古舘伊知郎

 今回、私が勝手に表彰するのは古舘伊知郎さんである。私の所属事務所、古舘プロジェクトの看板タレント。この春、報道の世界からバラエティーへ12年ぶりに帰還。それからの大活躍は皆さんも知るところ。書くまでもないであろう。

 そんな古舘さんが26年ぶりにニッポン放送のレギュラーに復帰、『オールナイトニッポンGOLD』をこの秋から始めた。本人からのご指名により、僭越ながら私が構成を担当することに。

 テレビでも速射砲のように繰り出すトークが、ラジオだとさらに輪をかけて凄い。本当にダダダダダダダと、機関銃状態。通称“金魚鉢”と呼ばれるラジオブースに一緒に入って、稀代の喋り手の生トークのシャワーを浴びまくることができるのは、まさに構成作家冥利に尽きるのでありました。

「鮫肌、リアクションが早いよ!」

 ビートたけしさんにおける高田文夫先生を目指して一生懸命、古舘さんのマッハなトークに「バウバウ」的な相槌を入れるのだが、早過ぎたり遅過ぎたり。生本番中に古舘さんに注意される始末。海よりも深く反省。放送作家をやって26年、まだまだ勉強です。

 2時間の放送時間の間、オープニングからエンディングまでノンストップ、喋りっぱなしのこの番組(実はCM中にもガンガンにジョークを飛ばしてスタッフを爆笑させている!)、ディレクターとの打ち合わせで「一曲ぐらいはかけましょうか」という話になった。

「じゃあタイマーズの曲がいいな」

 いきなり出てきたそのレジェンドなグループの名前。理由を聞いて驚いた。そう、古舘さんは『夜のヒットスタジオ』などの音楽番組の司会をやっていた関係で、日本ロック史に刻まれた数々の歴史的大事件の瞬間の生き証人だったのだ!

 忌野清志郎率いる覆面バンド「ザ・タイマーズ」が、生放送で曲にのっけて最大級の放送禁止用語を使い、某在京FM局を名指しで非難した未曾有のトラブル。古舘さんによればリハーサルの時、某FM局の名称を全て「古舘伊知郎」に替え歌してカモフラージュしていたという。終わった後、楽屋に清志郎さん自ら訪ねてきて「ゴメンね、古舘さん」と謝ったんだと。当事者しか知り得ない歴史的事実!

 こんなスペシャルなエピソード、絶対に古舘さんにしか語れない。11月の放送で、もちろんオンエアしました。

 聞けば、「尾崎豊の復帰」「ブルーハーツの初登場」など未だに語り継がれる“事件”を全部司会者の立場で目撃してきた古舘さん。よって「日本ロック史の生き証人で賞」を勝手に差し上げたい。

 そこらへんのヤバい裏話の続きは、今度は12月16日(金)22時から放送の『古舘伊知郎のオールナイトニッポンGOLD』にて。

 Jロック好きも要チェックなのだ!

【プロフィール】
鮫肌文殊(さめはだ・もんじゅ)
放送作家。’65年神戸生まれ。古舘プロジェクト所属。「世界の果てまでイッテQ!」など担当。渋谷オルガンバー「輝け!日本のレコード大将」(毎月第2金曜日)、恵比寿頭バー「歌謡曲主義」(毎月第3火曜日)などでの和モノDJ、関西伝説のカルトパンクバンド捕虜収容所のボーカリストなど音楽活動も数多い。捕虜収容所は12月24日(土)に大阪・難波ベアーズにてライブを開催。新刊『らぶれたあ~オレと中島らもの6945日』(講談社刊)が発売中で、12月25日(日)には大阪・ロフトプラスワン WESTで「鮫肌文殊『らぶれたあ』出版記念イベント」を開催(開演13時、チケットはeプラスで発売中)