食費節約の助っ人「白物食材」
料理上手こそおカネが貯まるのだと、雑誌編集者として多くの貯め達人や食費達人を見てきた私は実感している。食費節約の助っ人として、私がおすすめするのは「白物」だ。もちろん家電ではない。言葉通り、色が白い食材のことだ。
その代表が、モヤシ、エノキダケ、豆腐、はんぺん、ちくわ。もともと価格が安く、通常品なら100円以下。しかも季節や気候で価格があまり左右されない優等生だ。さらに、下ごしらえの手間がかからず、料理の時短にもつながる。わが家の冷蔵庫には、これらがないことがないくらいだ。
特にモヤシは、ソーセージやピーマンとともにケチャップで炒めてモヤシナポリタン、マーボ茄子ならぬマーボモヤシ、白菜がわりに鍋の常連にと大活躍。マリー・アントワネットのせりふではないが「パンがなければモヤシを食べればいいじゃない」というほど、なくてはならない存在だ。
ちくわも愛すべき食材で、細かく刻んでひき肉料理のかさ増しに使うのがおすすめ。餃子のあんに、ちくわを刻んで加えてみたら、どことなくエビ餃子のような風味になる。衣をつけて揚げれば男性も大好きなちくわ天となり、さらに切ってネギとともにだし醤油で煮て、卵でとじれば立派な一品になる。もちろん、卵も白物だ。
地味な料理を変身させる「お化粧」食材も侮れない。先にも書いた卵がそれだ。ニラモヤシ炒めを普通に作っても大衆食堂の激安メニューだが、丸く薄焼き卵を焼いて、それで炒め物を包むと、見た目はベトナム料理でおなじみのバインセオ風といえなくもない。子ども用にはケチャップでクマの絵でも描いてあげると喜んでくれるだろう。卵で包む・とじる技を覚えておくと、なにかと重宝する。
さらに、お手頃な値段で買えるお化粧食材が、天かすだ。たぬきうどんの名わき役、あのコロコロした形が郷愁をそそるが、その実力は見た目だけではない。豆腐とタマネギなどの余り野菜を出汁で煮て、しょうゆとみりんで味をつけただけの簡単な煮物でも、天かすを投入すると突然ぐんと味にこくが出る。具が足りないと思ったら味噌汁に入れてもいい。天かすは、あっさりした汁ものをこってり味に変身させてくれるハイパワーの持ち主なのだ。
大根おろしは、まさに色白のお化粧食材だ。ただの青菜のお浸しも、ツナ缶を開けただけでも、おろしあえにすると様になる。出来合いのトンカツや唐揚げだって、そのまま出すと味気ないが、だし汁で煮て大根おろしを加えてみぞれ煮にすると、さっぱりとした品のいいおかずに変身する。体も温まるので、冬メニューにはぴったりだろう。
スーパーよりも実は安上がりなコンビニ惣菜
食費節約の王道ワザに、「まとめ買い」がある。大サイズで割安に食材を買って使い切る、というのだが、これは案外ハードルが高い。下処理に手がかかるからだ。野菜なら洗って下ゆでしたり、肉なら小分けに切って下味をつけたりと、忙しい人にはかなりの手間だ。
そもそも大サイズの食材は値段も大きくなる。それより、たとえ割高でも使い切りサイズを買う方が、財布から出す金額は少なくて済む。
ここで役に立つのが、コンビニだ。スーパーに比べて価格が高いイメージは今や昔の話。大体のコンビニは大手流通の傘下にあるため、スーパーと同じPB商品を扱っている。しかも、少人数家族向けの商品を増やしているので、量も適正でしかも安い。とくに冷凍食品は小サイズで、1袋100円台で買えるものが多く、重宝する。
あるコンビニでは焼き餃子5個入り100円で売っているが、夕食にもう一品足したい時には助かるコスパだろう。高値が続くため人気が高まっている冷凍野菜も、やはり100円ほどで買えるのはありがたい。
さらに、最近注目しているのが店内で調理しているお惣菜だ。もし近所のコンビニで見かけたら、決してバカにしてはいけない。コロッケやから揚げなど揚げ物が多く、1パック100円台とかなりお手頃価格になっている。もし今晩スーパーでお惣菜を買おうと考えているなら、その前に一度コンビニに立ち寄って、値段をチェックしてからにするのが正解だろう。
コンビニを利用する層は、今後は若者より高齢者が増えていく。日々の食事をコンビニで調達するお年寄りも多くなるだろう。今後も彼らが手が出しやすい価格にシフトしていくと考えれば、コンビニは食費節約の助っ人としてますます期待できるはずだ。
冷蔵庫の死蔵品でカタカナメニューができた
もうひとつおすすめしたいのが、市販のドレッシング、調味料類の活用だ。使い切れずに冷蔵庫の場所ふさぎになっていることも多いかもしれないが、使用期限が来て捨てるだけでは悲しいし、おカネのムダだ。ここでも発想を変えてみると意外な味が楽しめる。
寿司酢が余っていたら、キャベツを刻んで耐熱容器に入れ、寿司酢を適量加え、そこに粒マスタードをさらに加えて、レンジでチンする。これでなんちゃってザワークラウトが出来上がる。つけ合わせにすれば、ただのキャベツの千切りよりも、料理の格が上がるだろう。
鍋の次の日は、使い残しの白菜と薄切り肉を容器に入れ、胡麻ドレッシング(しゃぶしゃぶ用のごまだれでも可)を加えてチンすると、これだけで箸休めの一品が出来上がる。以前、某ドレッシングメーカーに話を聞いたことがあるが、ドレッシングには「さしすせそ」の味噌以外のすべての調味料と油が含まれているので、これ一本で調味ができるそうだ。
冷蔵庫に眠らせておくのは実にもったいない。冷蔵庫の余り野菜とちくわを刻んで、上記のように好みのドレッシングを加えてレンジでチンすると、お弁当おかずサイズの一品が簡単にでき、冷蔵庫もすっきりするというものだ。
食費こそ、工夫次第で安く、そして楽しく減らすことができる。料理アイデアに自信がない人は、安い居酒屋のメニューを観察するといい。一品300円台のおつまみを見れば、どんなものが安く作れる料理かがわかるはずだ。おカネは有限だがアイデアは無限。節約をバカにするのではなく、ぜひ楽しんでほしいと思う。
松崎のり子(まつざき・のりこ)◎消費経済ジャーナリスト。20年以上にわたり、『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓は常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金がたまらない』(講談社)。