さまざまな伝説が語り継がれる1970年代〜'90年代のアイドル。若手アイドルが往年の名曲をカバーする例は数知れず、また、中森明菜の7年ぶりのディナーショー“復活”が注目を集めるなど、今でも話題に事欠かない。
この時代に活躍したアイドルについて、『週刊女性』ではアンケートを実施。わずか6日間で466票が集まり、根強い人気をうかがわせる結果となった(下表参照)。
特に、男性1位の田原俊彦にはラブコールが殺到!
「『チャールストンにはまだ早い』の歌とダンスは田原俊彦なくしてはありえない」(70代・主婦)
「私の王子様。初めてのコンサートもファンクラブもトシちゃん」(40代・会社員)
「キレキレのダンスと生歌でごまかしのないステージ。本物のスター」(40代・職業不詳)
「逆境に負けず今も歌って踊り続ける人としての強さを尊敬」(40代・会社員)
2位の光GENJIに対してはこんな意見が。
「上半身裸で歌う姿に衝撃を受けた」(30代・主婦)
「ローラースケートが斬新。コンサートはおとぎ話の世界にいる感覚だった」(40代・会社員)
「ケガをしていても笑顔で踊るプロ根性に励まされた」(40代・主婦)
3位の西城秀樹は「絶唱型はヒデキしかいなかった」(50代・会社員)、「ペンライト、アクション、武道館公演など今の音楽界の先駆者。私のすべて」(50代・職業不詳)というように、規格外のアイドルの登場にハートをわしづかみにされた女性が多数。
また、「寝ても覚めても秀樹秀樹秀樹。青春=秀樹」(50代・会社員)という声も。
4位は解散を発表したSMAP。「元気をくれ感動をくれる。ひとりひとりより、SMAPという集合体が好き」(50代・主婦)という意見が寄せられた。
5位は郷ひろみ。
「歌、踊り、芝居、立ち居振る舞い、発言、何をとっても超一流。彼こそキングオブアイドル」(50代・会社員)
中森明菜がダントツ1位のワケ
一方、女性1位は中森明菜が86票で圧勝。
「『難破船』を歌いながら泣いている姿が印象的だった」(40代・主婦)
「歌の主人公が乗り移ったかのような神がかったパフォーマンスは唯一無二」(年齢不明・自由業)
「今の20歳前後の子とは比べものにならない色気と圧倒的歌唱力」(20代・職業不詳)
「カッコよくて美しくて儚い。ウソ偽りのない歌、生き方が大好き」(20代・会社員)
などと、歌姫として高い評価が。
2位の松田聖子には、こんな意見が。
「まさに、アイドル」(50代・会社員)
「夢の国にいるようなキラキラワクワクした気持ちにしてくれた」(40代・主婦)
「日本語ひとつひとつを丁寧に歌いあげる抜群の歌唱力。品があるのにガハハ笑いや大ボケなところが楽しい」(40代・フリーター)
3位は山口百恵。
「男尊女卑が色濃くあった時代、“バカにしないでよ!”に勇気をもらった」(50代・NPO職員)
「あの若さで芯の通った生きざまに憧れました」(40代・会社員)
また、「引退コンサートの映像は見るたびに鳥肌が立つ」(20代・会社員)との声も多かった。
4位の小泉今日子には、「可愛いけど真顔が美しい。危なっかしい歌にもやられた。何より声が好き、癒される!」(40代・会社員)という意見が。
5位は中山美穂は、「歌も演技もうまい。年齢より大人に見え憧れた」(40代・会社員)などの声が集まった。
半田健人が昭和のアイドル史をひもとく
手の届かない特別な存在、それが“昭和のアイドル”の条件だった。
昭和歌謡とアイドルの関係に造詣が深い俳優の半田健人さんは、アンケート結果を見て「男性は西城秀樹さん以外、ジャニーズばかり。女性はソロ歌手の活躍が少ない今の時代からみると、ホッとします」と語る。
半田さんによれば、こうしたアイドルの源流は1960年代後半に登場したグループ・サウンズ(GS)にさかのぼるという。
「ビートルズの影響からGSが生まれました。GSファンは、ほぼ女性だけ。それまでこんな歌手はいなかったのです」
だが、GS人気が下火になると、才能あるGS関係者は作曲家やプロデューサー、スタジオミュージシャンといった“裏方”へ回るように。のちのアイドル・ブームは彼らの存在が大きい、と指摘する。
「GSブームまっただ中の'68年にデビューしたのが元祖アイドル、フォーリーブス。そういった意味では女性から圧倒的な支持を受ける男性アイドルは、日本独自の、ジャニーズの文化と言っていいと思います。
この流れで'72年には郷ひろみさんがデビュー。“新御三家”の1人として、野口五郎さん、西城秀樹さんとともに大人気に。その後も数々のオーディション番組から、この3人をベースにしたアイドルが誕生していきました」
かたや女性アイドルは南沙織、小柳ルミ子、天地真理の“新三人娘”がはしり。
「南沙織さんは、男性人気によってスターとなった最初のアイドル。天地真理さんは典型的なアイドルで、いい意味での“ウソ臭さ”があった。小柳ルミ子さんには、いい楽曲と歌唱力がありました」
この時代のアイドルを語るとき、'71 〜'83年のオーディション番組『スター誕生!』ははずせない。
「森昌子さん、桜田淳子さん、山口百恵さんの“花の中三トリオ”の成功は大きかった。ピンク・レディーは曲や衣装、踊りといった、腕のある仕掛け人から用意されたものを、2人がすべてこなしていたところが本当にすごいと思いますね」
また、同時期に増えていったのが音楽番組だ。フジテレビ系『夜のヒットスタジオ』('68年〜'90年)をはじめ、NHK『レッツゴーヤング』('74年〜'86年)、TBS系『ザ・ベストテン』('78年〜'89年)などを通して新曲をチェックできた。
そしてパラシュートを背負うなどの奇抜な衣装で『TOKIO』を熱唱した沢田研二や、派手なチェック柄に身を包んだチェッカーズらを見るにつけ、斬新な衣装やパフォーマンスへの期待に胸を高鳴らせたファンも多かっただろう。また、後楽園球場でのキャンディーズ解散コンサートはいまや伝説だ。
汚れなきアイドルの時代は終わった
「昭和の歌手は視聴者を楽しませる、いろんな活動に長けていました」
“歌は世につれ、世は歌につれ”と言われるとおり、音楽は時代を色濃く反映するもの。アイドルも同様だ。
「昭和歌謡は“総合芸術”。歌がうまいとか、曲がいいというだけでなく、曲作りもサウンドも、プロデュースもすべて含めたもの。(アイドルには)歌唱力よりも、なぜか聴いてしまうという商品価値のあるボーカル、何かしらの“旨味”があればよかった」
前出のアンケートでは、“アイドルに必要なもの”について「ルックス、歌唱力、カリスマ性」(50代・会社員)、「トイレに行かないかもと思わせてくれる夢」(50代・主婦)との指摘が多数。また「今のアイドルは口パク&イヤーモニターで魅せてやろうという気迫がない」(40代・主婦)、「CDを予約して買うのではなくダウンロードは味気ない」(40代・主婦)といった意見も珍しくない。
半田さんは、「今のアイドルを“アイドル”と呼ぶのであれば、昔のアイドルは“歌手”と言ってほしい。今のアイドルとは別もの。僕としては、一緒にしてほしくないんです」と力説。さらにこう続ける。
「フリフリの衣装を着て豪華なセットで歌う、昔ながらのアイドルには、“1度やってみたい!”と憧れるワクワク感があった。ところが今のアイドルは“毎日、大変だよね”と同情されてしまう存在になってしまったと感じます。アイドルは“偶像”という意味ですが、今はリアリティーしかない。汚れなきアイドルの時代は終わってしまった。
そう考えると、最後のアイドルは松浦亜弥さんかもしれない。つんく♂さんの曲もいいし、曲調や振り付けがキャッチー。一生懸命にやり切っていて、見ていて気持ちがいい。昭和のアイドルの要素があります」
時代の申し子であるアイドル。'90年代以降もモーニング娘。を皮切りにAKB48、ももいろクローバーZ、Perfumeなど、さまざまなタイプが人気に。“アイドル戦国時代”と呼ばれるようになって久しい。
次は、どんなアイドルが登場するのだろうか。
<プロフィール>
半田健人◎'84年生まれ。兵庫県芦屋市出身。'02年俳優としてデビュー。10月26日、メジャーデビューシングルとなる『十年ロマンス』をビクターよりリリース。自身による作詞・作曲・編曲の意欲作。