独自の視点でアイドルを見つめる漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さん。中学生だった'80年代後半から、アイドルに興味を持つように。
「南野陽子、中森明菜、のりピー(酒井法子)などが好きでしたね。南野陽子は『スケバン刑事II』を見て以来、曲も気に入ってCDをレンタルしては、録音していました。当時はカラオケボックスができ始めたころで、『楽園のDoor』や『話しかけたかった』をよく歌っていましたね」
女子校育ちで周りに男性がおらず、どちらかというと女性アイドルに感情移入していた辛酸さんが惹かれるのは、「強い意志を感じるようなアイドル」だそう。
「南野さんが『オーラの泉』に出演しているのを見たとき“彼女の背後霊には武将がついていて、いつも怒りを感じている”と言われていた。“お嬢様だけど強気”という存在に憧れていたんでしょうね」
'90年代は宮沢りえにハマり、切り抜きも持ち歩いた。
「透明感が好き。日本人の美しさがありながらハーフのよさもあるんです。当時、写真を眺めては“こういう顔に生まれたかった”と願ったものです(笑)」
その後もSPEEDをはじめ数々のアイドルにハマったが今となっては、アイドルとして正統派だったのは松浦亜弥までだと分析。
「昔のアイドルは夢が保たれ神格化されていました。パフェが好きとか、お菓子作りが趣味とか。それが許され幻想を抱けたのは松浦亜弥までで、今は夢を持たせてくれる人がいないですね。私はゴシップに関しては寛容なほうですが、ネットでアイドルの名前を検索すると、予測変換で“枕営業” “整形”といった言葉が出てくる。読んでしまうと憧れが薄らいでしまう」
辛酸さんにとって、アイドルとは?
「心に残る曲を出していること、可愛いこと。やはりある程度以上の容姿が必要。それから生活感や、現実味を感じさせないこと。昔よく言われた“アイドルはおならもしない”という感じですね。なのに最近はイベントで“ちょっとおしっこしてくるから待っててね”と言うグラビアアイドルがいたり、“アンダーヘアを整えた”なんて暴露しちゃう子がいたり。アイドルとして考えられないです」
そういった意味から、真のアイドルは「佳子さまではないか」と語る。
「佳子さまはどんどん愛らしくなってらして、ファッションも攻めてらっしゃる。ダンスをやられるなど身体表現もなさいますから、見せ方をわかってらっしゃるのかも。そして私生活が見えないことから生まれる神秘性。今やアイドルという存在は、皇室やロイヤルファミリーなどに求める以外にないのかもしれませんね」
<プロフィール>
辛酸なめ子◎漫画家・コラムニスト。アイドルに関するコラム・エッセイを多数執筆。著書に『アイドル万華鏡』(河出書房新社)など。