薬物問題からセクシャリティの問題への論点すり替え
私自身、常々マスコミ批判をしてきた側の人間ではあるけれど、今回の騒動で『FRIDAY』を責めるのは間違っていると思う。当初、成宮さんと事務所は『FRIDAY』に対し、強気の対抗姿勢をとっていました。だからこそ『FRIDAY』側は第二弾として肉声データを公表した。それなのに、今度は態度を一変させ、突然の引退発表。
そしてその引退を告げる文書のなかでは、違法薬物使用について直接的には触れず、セクシャリティな部分をクローズアップされたと強調していました。
だけど、私が記事を読む限り、成宮さんの言うセクシャリティな部分は憶測を呼ぶ程度の記述であり、少なくともクローズアップはされていなかったですよ。あくまでも焦点は、違法薬物使用疑惑に当てられていました。
本当に違法薬物を使用していないのであれば、きちんと毛髪検査をするなどして最後まで対抗すればいい。あの文書だけでは、自らセクシャリティを利用して、違法薬物使用の問題からセクシャリティの問題に、論点をすり替えているように受け取られても仕方がありません。
自分のタイミングとは関係なく「暴露」されて、世間に騒がれるのはたしかに気の毒だとは思います。しかも、世間が彼のセクシャリティな部分だけを見て、あるいはその生い立ちの面だけを見て「頑張っているのに可哀想」という感情を持ち『FRIDAY』を非難すること。これは一見、成宮さんを擁護しているようにも見えるけれど、何の解決にもなっていません。そして彼のタメになるとは思えませんし、さらに言えば彼と同じ境遇の人にとっても失礼なことなんじゃないかな。
事務所は辞意を簡単に受け入れるべきではなかった
おそらく成宮さんは、混乱のなかで引退の道を選んだのだと思います。しかし、事務所はそれを簡単に受け入れるべきではなかった。なぜなら、引退を受け入れてしまえば、成宮さん自身もっとも酷な状況に陥ってしまうからです。
私たち芸能人は事務所に所属することで、守られている部分があります。今回の件に関しても、成宮さんが事務所に所属しているあいだは、不確定な情報に対しての発言を控えるために箝口令に近い指示もされていたりして、実際私がコメンテーターとしてテレビに出演した際も、発言に気をつけていました。
だけど、事務所を離れてしまうと守ってもらうことができなくなる。何でも言われてしまう立場になってしまうわけ。そのうえ、彼くらいのビッグネームともなれば、たとえ一般人になったところで、疑惑が晴れないままでは、世間の需要がある以上、追いかけ回されてしまいます。成宮さんのことを考えるならば、事務所は簡単にその辞意を受け入れてしまうのではなく、休業など何か別の対応を考えるべきだったんじゃないかな。
《構成・文/岸沙織》