『スクラップ・アンド・ビルド』(NHK総合・12月17日土曜夜9時~10時13分)は羽田圭介の芥川賞受賞作品を映像化。主人公の青年が祖父の尊厳死の手助けをしようとしたその先に待っていたこととは。原作者も太鼓判を押すドラマの見どころを紹介!

柄本佑演じる健斗は、祖父の介護をするが…… (C)NHK

個性派・柄本の演技は“100%正解”

 昨年、芥川賞を受賞した羽田圭介の同名小説をドラマ化。谷口卓敬プロデューサーは、羽田の作品が発表されてすぐにドラマ化を思いついたという。

「読んだときの衝撃は鮮やかで、心をつかまれた感じです。さまざまな読み取り方ができる小説でありながら、ひとりの人間が未来を模索し、それを探り当てようとする姿が、とても力強く描かれていると思えたのです」

 原作の世界観を生かしつつ、オリジナルの登場人物や設定などもある。

「原作に変更を加えた部分があったので、羽田さんがどう思われているか緊張していたのですが、お目にかかったとき開口一番、“よくできていますね”と言ってくださいました。非常にうれしかったですね」(谷口P、以下同)

 主人公の田中健斗は、個性派俳優として評価の高い柄本佑が演じる。

「台本の読み合わせのとき、早くも柄本さんに依頼してよかったと思いました。健斗のはじけた部分と影の部分のメリハリ、セリフのトーンや微妙なニュアンスまで100%の正解を持ってきてくださったんです。探っている感じはなく、1ミリのズレもなくピタッと健斗にハマっている。撮影が始まってからも柄本さんはすごくいきいきと演じてくださり、心の弾みのようなものが画面に出ているかと思います」

見どころは孫と祖父の攻防戦!

 健斗は、会社に嫌気がさして退職。行政書士を目指しながら就活するが、失敗続きで、無為な日々を送る。同居する87歳の祖父・昭一(山谷初男)は、要介護のため思うように身体が動かず、「もう死んだほうがよか」が口癖。健斗は、そんな祖父のために安らかな尊厳死を迎えられるよう、手厚く介護することに。きめ細かく世話をするうちに、祖父には秘められた謎が。そして事態は思いがけない展開に─。

失敗続きの就活に嫌気がさしている健斗 (C)NHK

「おじいちゃん(昭一)は言っていることはネガティブだけど、クスッと笑える部分も欲しいと思ったんです。独特の柔らかさをお持ちの山谷さんは、おじいちゃんの謎めいた部分まで豊かに表現してくださいました。

 見どころは、健斗との関係性の変化です。健斗の、おじいちゃんの願いを叶えてあげようというところから始まりますが、いずれ、おじいちゃんのほうが上手に立つようになり、健斗はだんだん翻弄されていきます。孫と祖父の攻防戦ですね。はたして、ふたりがたどりつく着地点はどこなのか、ご期待ください」

 リアリティーを重視し、生活感が出るよう、汚れなどのディテールまで表現した健斗の家は、隠れた見どころなので要チェック。

柄本&浅香、朝ドラ以来の大阪を満喫

 演技派の柄本と山谷の共演ということもあり、撮影は順調に進んだ。現場で俳優の芝居にNGが出ることはほとんどなかったという。

「演技に説得力があるんです。健斗もおじいちゃんも難しい役ですが、おふたりとも切羽詰まっている感じがなく遊びを残して演じているようでした。物語の中では緊張感があるけれど、撮影現場は和やかな雰囲気でしたね」

 撮影は大阪で行われた。柄本は『あさが来た』以来の大阪滞在。空き時間にはお気に入りの店に繰り出したという。健斗の友人で介護福祉士役の浅香航大も『マッサン』以来の大阪をなつかしんだそう。

「本作はモノローグで健斗の心の中を明かしていますが、1度ご覧になってから、2度目はおじいちゃんの側に立って見ていただくと、また違ったものが見えてくると思います。どちらの視点からでも、最後まで見ていただくと、不安や悩み事に光が差すような気持ちになれると思います」

“美しき獣”秋元才加の勇姿

 プロボクサーの三崎楓は、ドラマのオリジナルキャラ。健斗の行動に多大な影響を与える楓を演じるのは、秋元才加だ。

プロボクサーの三崎楓を演じる秋元才加 (C)NHK

「オリジナルキャラクターということもあって、ぜひ見ごたえのある人物にしたいと思っていました。秋元さんはもともと身体能力の高い方だと思っていましたが、想像以上。指導をお願いした元世界チャンピオンも、秋元さんのボクサーとしての身のこなしは本物だと褒めていました。シャープでキレのあるパンチは必見です。美しき獣の存在感に、ご注目ください」(谷口P)