性に関するおびただしい情報が氾濫し、非道な性犯罪の報道も珍しくないこの時代。わが子はまっすぐ育ってほしい、誰かに肉体的に傷つけられたり、誰かを傷つけたりすることなく、健やかな恋愛と性を経験してほしい──。

 これらはすべての親に共通する、切実な願いでしょう。しかし現状、日本において適切な性教育は、まだ発展途上。でも、子どもたちの成長は待ってくれません。

 そこで今回は、思春期の男の子についての著書もある、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささん、女の子の身体についてのエキスパート・やまがたてるえさんに、読者からの具体的な性教育の悩みについて、お答えをいただきました。

※先に公開した小学生編に続き、暴走すれば心身が傷つきかねない中学生編です。

※写真はイメージです

中学生の息子のスマホをチェックしたら、エッチなサイトの閲覧履歴が!

「ネットではいくらでも過激に演出された性的な映像を見ることができ、闇は深い。しかし完全排除は現実的ではないので、“これは商品化された性であり、現実の性とは違う”と子どもが思える、感性を育てましょう」(おおたさん)

 今日からできる第一歩は、夫婦が健全な性生活を送り、性をポジティブにとらえること。

「両親の性生活を見せろというわけではありません。ただ、両親が愛し合う姿を見て、子どもは男女の関係性の深め方を学び、正しい判断力を身につけます」(同)

 両親が純愛を全うできていないのに、子どもに純愛を説いてもムダ。夫婦の仲のよさを見せてこそ、子どもは愛と地続きにあるセックスと、欲望のはけ口のセックスとの違いを学ぶはず。

アダルトサイトだけでなく、ネットで変な大人が近づかないかなど、とにかくスマホにまつわる悩みがつきません!

 スマホを子どもにいつ持たせるか、管理をどうするかは、読者アンケートの中でも、トップクラスに多かった質問。

「スマホはできるだけ、高校生までは持たせないほうがいいかな。さらに“何かあったら痛い思いをするのは自分”と言い聞かせましょう」(やまがたさん)

 また、不特定多数のネットで、何が危険行為かを話し合う機会を持つべし。

「ケータイのアダルトサイトは、新手の罠が次から次へと現れる危険地帯。見知らぬ人に個人情報を漏らしたり、実際に会ったりして犯罪に巻き込まれることのないよう、注意を促しましょう」(おおたさん)

中学校2年生の娘に、高校生の彼氏ができて、身体の関係に進まないか心配です。

 中高生ともなれば、男女交際をスタートさせる子もちらほらと増えてくる。

「同い年ならまだしも、“年上の彼氏”には注意が必要だと思います。家に呼んで顔を見せること、遊びにきたら挨拶すること、ちゃんと連絡先を教えることを、徹底してください」(やまがたさん)

 まだ自我が脆弱な10代ほど、彼氏の押しの強さに負けて、言うことを聞いてしまう危険性がある。

「性教育をするのもいいですが、娘にはとにかく、“あなたのことを親は愛している”“とても大事に思っている”という言葉を、シャワーのように浴びせてください。自己肯定感を持たせ、無茶する彼氏に“NO”と言える価値観を持たせましょう」(同)

子どもに性の話をする際の注意ポイント

 中学生は性への倫理観を育て始める、大事な時期。まずは親がよりよい夫婦関係を心がけて。また、中学生の身体に関しては、男の子がガラッと変わる。精通が始まるのもこの時期だ。

「中学生の女の子は、パパへの嫌悪感が出やすい時期。しばらくドンと構えましょう」(やまがたさん)

 さらに高校生になると、性体験の話題にリアリティーが出てきます。

「安易なセックスが心配ならば、初体験は焦ってすませるものではないし、一時の興味でしても虚しいと、諭してほしい」(おおたさん)

 また、性感染症や避妊への知識は、ある程度身につけさせたい。

「高校生には、あなたを信じているからこそ教えるのだと、しっかり向き合って話してください」(やまがたさん)


〈話をきいた人〉
◎おおたとしまささん
育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラー。教育熱心なあまり子どもをつぶす親の特徴など、独自の視点で取材を行い、書籍やコラムを執筆。講演やメディア出演も多数。
〈オススメ著書〉お母さんにはわかりにくい思春期男子の心、身体、悩ましい行動などへの具体的な対策が満載の『「思春期男子」の見守り方』(PHP文庫)

◎やまがたてるえさん
看護学校卒業と同時に助産師学校へ入学。その後、総合病院、産婦人科クリニック、総合医療クリニックに勤務。現在は地域の育児支援活動に参加し、育児相談などを行う。
〈オススメ著書〉大きく変わる思春期女子の心と身体などをマンガでやさしく解説。『15歳までの女の子に伝えたい自分の体と心の守り方』(かんき出版)。13歳以下向けもあり。