狭い日本であっても食文化は多種多様。「定番の味」は、東と西で千差万別だったりするんです。味も使い方も地域で様変わりする、食材・調味料の“美味しい話”をご紹介。
濃口しょうゆと薄口しょうゆの意外な違いとは?
和食ブームに乗って世界的に需要が高まっているしょうゆ。外国人からすればそのこだわりがよくわからないそうだけど、濃口と薄口では、味も香りも、好まれる地域もまるで別。
濃口と薄口の国内生産量の割合は、およそ8対2。関東では主に濃口が、関西では薄口がよく使われているという。
どのような違いがあるのか? 日本の食文化に詳しい日本フードアナリスト協会理事長の横井さんに聞いてみた。
「東はかつおのだしに、西は昆布のだしに合うようなしょうゆが広まりました。関東は濃い色の食べ物が美味しそうだと思われる傾向があるため濃口が好まれ、関西は素材の色や味を大切にする食文化があるため薄口が好まれます。
見た目とは違って、塩分濃度は濃口が約16%、薄口は約18%と薄口のほうが高くなっています。関西のうどんのつゆなどは色に透明感がありますが、きちんと味がついています」
上の写真のように、パッケージに薄口は明記されるが、濃口は記されないのが一般的。原料の配分や醸造法、メーカーによっても違いがある。いろいろ試して、お気に入りの味を見つけてみて。
■まだまだある! ご当地しょうゆ
秋田ではハタハタを原料とした、独特の風味が特徴の「しょっつる」、九州ではほかの地域よりも甘いしょうゆが使われている。理由は諸説あるが、辛口の焼酎には甘い味つけの料理が合うためだとか。
また最近は、広島や宮城の牡蠣、大分のかぼすなど郷土の特産品を加えた“ご当地しょうゆ”の人気も高まっている。
東は白ねぎ、西は青ねぎのワケは?
野菜のなかでも東西の違いが明白なのが、関東の白ねぎ(根深ねぎ)と関西の青ねぎ(葉ねぎ)。伝統野菜に詳しい野菜ジャーナリストの篠原久仁子さんによると、その理由は2説あるらしい。
「1つは土壌説。関東は土壌が軟らかく深いので白い部分を土のなかで育てる白ねぎ、関西は土壌が硬めで浅いので、深く耕さなくてもすむ青ねぎが適していたという説です。
2つ目は味つけ説。関東の濃いおだしには煮込むことで味わいが増す白ねぎ、関西の上品なおだしには薬味として使える香りのいい青ねぎが好まれたそう」
あの場所を境に、カブは二分されていた!
日本書紀にも登場するカブはその数、80種以上。
「今は全国的に金町小カブという品種が普及していますが、伝統野菜としては天下分け目の関ヶ原で分かれていて、境界を“かぶらライン”と呼んでいます」
とは、前出の篠原さん。
東日本には寒さに強い洋種系、西日本には暖かい気候でも育ちやすい和種系が広まり、図のようなラインができあがったのだそう。
関西のスーパーは春菊が売ってない!?
鍋に、おひたしにと大活躍の春菊。実は、関西では異なる名前で売られていて、関東出身者が「これ何?」と戸惑うことが多いという噂……。それってホント!?
「本当です。関西のスーパーなどでは、主に『菊菜』という名で販売されています。同じ春菊ですが、品種が違うので、関東で食べられているギザギザした葉のものとは違い、菊菜は葉の切れ込みが大きくてやわらかいのが特徴です」
と、前出の篠原さん。
菊菜は香りが控えめで、生のままサラダで食べられる。豊富なビタミンやミネラルをまるごと補給しよう。