「おカネが好き」と公言するのは恥ずかしいと思う人が多いようだが、まずそれを改めてほしい。好きだと認めなければ、おカネも離れていく。自分にとって大事なものだと思えば、ムダには扱えなくなる。コツコツと“トク”を探す発想を身に付ければ、小さなおカネでも幸せに生きていけるのだ。
さて、年末年始の買い物でも一工夫したい。ただでさえ現金が飛ぶように出て行く時期なので、現金代わりに使えるものは、ひたすら使い切ることを心掛けよう。
貯まったポイントは、どんどん「普段使い」する
今や日用品からおもちゃ、酒や食品まで扱っている家電量販店で、貯まっているポイントで一気に買い物をすませてもいいし、大掃除に必要な洗剤を買うなら、手持ちのTポイントや楽天スーパーポイントなどの共通ポイントが使える提携のドラッグストアを選ぶべきだ。
つい、ポイントはコツコツ貯めて特別なときにどんまとめて使おうと思いがちだが、その考えはトクとは言えない。特別なものではなく、どんどん普段使いすることが、あなたのお財布のおカネを守ってくれるのだから。
ギフトでもらった商品券が手元にあれば、それも活躍させたい。普段はめったにデパートには行かないという人も、この時期だけはその習慣を改めたほうがいい。全国百貨店共通商品券は、デパ地下で使えるうえにお釣りも出る。
お年賀用の贈答品やお酒を買うなら、ここで使ってしまおう。商品券やギフト券は、家の引き出しにしまうのではなく、財布に入れて日々持ち歩くのが、トクするチャンスを逃さないための方法だ。
なお余談だが、帰省の土産を選ぶときは、「知る人ぞ知る」ではなく「誰もが知っている」ものを選ぶのがコツだと筆者は考えている。
アンテナの高い人はつい、ここでしか買えない「日本初上陸」やら「有名パティシエがプロデュース」の品を選びがちだが、その労力は同じ感性の人にしかわかってもらえない。地方の親戚に渡す際、いちいち由来を説明しているうちに、どんどんありがたみが薄れてしまう。
土産はもっとシンプルに考えていい。我々だって地方出張で空港や駅の売店で土産を買うとき、北海道なら「白い恋人」、京都なら「聖護院八ツ橋」などの、おなじみのロングセラー商品を選んでしまうことが多くはないだろうか。「知る人ぞ知る」は、裏を返せば「ほとんど知らない」品ともいえる。
お土産はわかりやすさが大事であり、誰もがその名を知っているおなじみお菓子のほうが、「ああ、あれね」と喜ばれる。
しかも、ロングセラー土産は値段も手頃で懐も痛みにくい。一定数が必ず売れるという実績データがあるから、コストも売価もリーズナブルに設定できるのだろう。
初詣に行く前にはフリーきっぷを探せ
お正月と言えば初詣がつきもの。どうせなら初詣に使えるフリーきっぷを利用しよう。「伊勢神宮初詣割引きっぷ」は、名古屋・京都・大阪各方面からの阪神・近鉄線往復割引乗車券に乗り降り自由になるフリー区間のきっぷがセットになったうえ、伊勢神宮ご参拝記念品や観光施設の優待割引も利用できる(発売は12月31日まで)。
関西には、なんとおみくじ引換券がついた(祈念品の場合もあり)「阪神・近鉄 初詣1dayチケット」もある。初詣のついでにあちこち移動して観光を楽しむなら、乗り降り自由のきっぷを選んだほうが便利だ。
なお、この手のきっぷを買う時は、往復するだけで元が取れればベストで、さらに何回乗り降りすれば得になるかを計算したい。地下鉄やJRの1日乗車券を利用する場合は、特にそこに注意しよう。
ちなみに「東京メトロ24時間券」を買うと600円だが、たとえば新宿から明治神宮前に移動して参拝し、そのあと表参道まで乗ってお茶をして、さらに銀座に向かい、買い物をしてから新宿に戻るというコースで計算すると合計で710円になる(すべて東京メトロを使う前提で東京メトロのサイトにて料金検索した結果。きっぷ料金の数字)。
この場合は24時間券のほうがややトクという結果になったが、東京はほかの地方と比べて地下鉄料金が安いため、元を取るには意外と忙しくなりそうだ。
せっかく初詣に行くのだから、新しい年のスタートを縁起よく切りたいものだが、思わぬ落とし穴がある。それが、おさい銭だ。寺社仏閣は同じ敷地に複数の神様仏様をお祀りしている場合が多く、その都度何度も小銭を取り出すことになる。最初のうちはいいのだが、だんだん財布の中から小銭が消え、気づくと500円玉1枚しかない……という経験はないだろうか。
もちろん、500円でも千円札でも、いや壱万円札でも、神様は黙して受け取ってくださるだろう。しかし500円玉が一気に数枚消えてしまうと、新年早々、やや後ろ向きな気持ちになりかねない。
そうならないために、今日から家の玄関に小さなカゴかビンを置いておこう。ポケットの中やかばんの底に落ちていた小銭を、そこに入れる習慣をつけるといい。いわゆる「小銭貯蓄」だが、初詣のときにはその小銭を持っていけば、大きなおカネを崩すことなく気持ちよくお参りができるはずだ。ぜひ、家族にも協力してもらおう。
福袋は「消えモノ」がねらい目
毎年熱狂的な争奪戦ぶりが報道される福袋は、本当にトクな買い物なのか迷うところだ。筆者自身は「福袋は消えモノに限る」と思っている。
消えモノ、つまり食品系の福袋にもぜひ注目してほしい。普段買っているものやショップのものなら、福袋価格の高安がイメージしやすいからだ。
筆者は昨年、リサーチもかねて、紅茶(9種類3240円)、はちみつ(3本2000円)、ナチュラルチーズ(4種3000円)、だしセット(だしの素や鰹節、白だしなど1000円)の各福袋を購入したが、どれも普段買っている金額から総額が計算できるため、シビアな目でセレクトができた。
相場感覚がないジャンルのものを買うと、これが本当にトクなのかそれほどでもないのか判断に迷うものだ。そういう意味でも、食品系福袋は失敗の少ないジャンルだと思う。また、これらは服や雑貨と違って好みがあまり関係ないため、自分が使わないものを人にあげてもさほど迷惑がられないだろう。
地方に帰省する人は、あえて現地で普段使いの日用品を買うのもいいだろう。都市圏と比べ、物価が安いうえに初売りの目玉商品も出てくる。また、地方のホームセンターは車用品やアウトドアグッズが種類豊富で安い。少々荷物はかさばり重くもなるが、心は軽くなる。
帰省は買い出しと心得て、いつもとは違うショッピングを親御さんと楽しんではどうだろう。いやでもおカネを使う時期だからこそ、安く買えるチャンスに出合えたらそれを逃さず、いい年のスタートを切りたいものだ。
《著者プロフィール》松崎 のり子(まつざき・のりこ)◎消費経済ジャーナリスト。20年以上にわたり、『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓は常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金がたまらない』(講談社)。