'16年の箱根駅伝で、堂々デビュー。エース区間“花の2区”で10位で襷を受け取ると、弾丸のような走りで7人抜き! 山梨学院大を一気に3位へ押し上げた1年生は、ケニアからの外国人留学生、ドミニク・ニャイロ選手だった。山梨学院大にとって22年ぶりとなる箱根制覇の鍵を握る、ニャイロ選手の素顔とは─。
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「ヨロシクお願いシマス」
ちょっと恥ずかしそうに現れたニャイロ選手。まずは、日本に留学しようと思った理由を。
「上田監督からのスカウトです。びっくりしました。父親も母親もびっくりしていましたが、“頑張ってみなさい”と送り出してくれました。来る前は、ちょっと不安でした」
ニャイロ選手の故郷はケニア共和国。“キシイ族”という部族の出身だ。弟4人、妹1人の6人兄弟の1番上だそう。来日して、まだたったの1年半。片言ながら、一生懸命に日本語で話してくれる。
「日本語を聞いたり、話したりするのは、だいたい大丈夫。でも、書くのは難しいです」
ちなみに、ニャイロという名前、響きがとってもかわいいと伝えると、
「よく言われます(笑)」
日本に来て、まず驚いたことは?
「食事です。日本は朝と昼と夜の3食。ケニアは2食。でも、慣れました。好きな食べ物はうなぎ。あと、お米。ケニアのお米より、日本のお米はおいしいです。嫌いな食べ物は……納豆(笑)。梅干しは最近食べられるようになりました。あと、大根も苦手です」
自分自身の性格について質問すると、少し考え込んだ後に、
「優しいです。コミュニケーションをいっぱいとれます」
と、ニッコリ。チーム内での評判は、“ちょっとシャイなところもあるけど、打ち解ければとても明るく、どんなチームメートとも仲よくやれるタイプ”だそう。実際、入部直後も、
「みんなとすぐ仲よくなれました。みんな、“ニャイロ~!”と私の頭を触ってきます(笑)」
愛されキャラのよう。
山梨学院大陸上競技部に入って、驚いたことを尋ねると、
「朝の時間が早くて。早起き、苦手です(笑)。寒さも苦手です(笑)」
起床は毎朝5時10分。10~15kmのランニング後に朝食をとり、学生の本分・授業へ。ニャイロ選手は、現代ビジネス学部で、日本語や英語、そしてマーケティングなどを学んでいる。勉強と陸上競技の両立は、
「ちょっと大変」
と苦笑い。授業後は、
「より実践向きな、ポイント練習です。ちょっとスピードを速くしたインターバルトレーニングなどを、だいたい16時30分から18時30分までやっています」
名将・上田監督について尋ねると、
「リスペクトしています。ただ、ときどき、ちょっとだけ……怖い(笑)」
10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝では、ともに区間賞を獲得。山梨学院大の好成績(出雲2位、全日本3位)に貢献した。その結果に満足してるのかと思いきや、
「悔しかった。チームが優勝できなかったから。区間賞は狙っていたので、うれしかったです」
個人成績以上にチームに重きを置く、日本独自の“駅伝精神”が、すでに染みついているよう。では、来る'17年の箱根駅伝ではどんな活躍をしたい?
「私の目標は、2区でモグス選手が持っている区間記録('09年)を抜くことです。できると思っています。そして、チームの優勝です! 調子はとてもいいです。絶好調です。箱根駅伝、頑張ります」
最後に、ニャイロ選手の将来の夢を教えてもらった。
「東京オリンピックのマラソンで、金メダルです」
ケニアから日本へ。そして、箱根から世界へ─。
<profile>
◎ドミニク・ニャイロ選手
山梨学院大学現代ビジネス学部2年。陸上競技部所属。'97年3月11日生まれ、167cm、49kg。故郷はケニア共和国(キシイ族)。メサビサビ高校出身。趣味はケニア音楽を聴くこと。'16年の箱根駅伝では2区を走り、区間2位