今年も1月2日、3日に開催される『箱根駅伝』。近年、その人気は高まるばかり。初めて見る初心者にもわかるよう、独自ルールなどキホンのキをご紹介します。

そもそも箱根駅伝って?

 正式名称は『東京箱根間往復大学駅伝競走』。1920(大正9)年に始まり、2017年で93回目。1月2日が往路、3日が復路。東京から箱根まで、2日間かけて計217・1km(10区間)を、21校・各10人の大学生ランナーが母校の襷(たすき)をつなぐ駅伝レースだ。

「第1回大会の参加校は早大、慶應大、明治大、東京高師(現筑波大)の4校だけでした」(碓井さん)

出場できる大学は?

 関東学生陸上競技連盟に入っている大学のうち、前年大会でシード権を獲得した10校と、予選会を通過した10校。さらに関東学生連合(後述)を加えた21チームが出場する。

「基本的には、関東の大学以外は出場できないんですよ」(かつて箱根路を走った経歴を持つ俳優・和田正人さん)

コースは?

 東京・大手町の読売新聞社前からスタートし、(神奈川県の)鶴見、戸塚、平塚、小田原の各中継所を経て、箱根の芦ノ湖駐車場までが往路(1~5区)。その反対が復路となっている(6~10区)。

箱根駅伝(往路1〜5区、復路6〜10区)

花の2区って?

 1区のスピードランナーたちは中継所に僅差で来るので、2区はレースの流れをつかむための重要区間。かつ、終盤の権太坂はアップダウンが激しく、難区間でもある。そのため各校のエースが集い、“花の2区”と呼ばれている。“ごぼう抜き”“ブレーキ”などドラマが生まれることも多い、注目区間だ。

'17年からは2区と9区が、最長区間に戻ります。優勝を狙うチームは2区で先行して、流れをつかむことが重要」(テレビ解説でおなじみの碓井哲雄さん)

山上り、山下りって?

 小田原中継所から往路のゴールである芦ノ湖(標高874m)まで一気に駆け上がる5区が“山上り”。'17年から最長区間ではなくなるが、ハードな区間であることは間違いない。

 反対に6区は“山下り”。標高差800m以上を猛スピードで駆け下りるので、脚には大きな負担がかかり恐怖心との戦いでもある。ときには、凍てついた路面で転倒する選手も……。

“山を制する者は箱根を制す”とも言われています。5、6区はほかに類を見ない特殊区間。“山のスペシャリスト”をいかに育てるかは各校の課題です」(碓井さん)

シード権って?

 翌年の箱根駅伝に出場できる“シード権”は、10位以内に入った大学に与えられる。シード権を得られなかった大学は、10月に開催される予選会へ。近年の参加は約50校! 上位10位以内に入れば出場権を得られる。ゆえに、シード権を失うと回り道になるうえ、熾烈な争いを覚悟しないといけないのだ。

10位と11位は雲泥の差。勝てば天国、負ければ地獄。シード権争いは、非常にハラハラしますね。第87回大会('11年)では、城西大がたった3秒差でシード権を失ったこともありましたね」(和田さん)

襷(たすき)って?

 たとえ脱水症状や低体温症になろうとも……。選手が意地でもつなぐのが、母校の襷。汗と思いが染み込んだ1本の襷を、次の走者に手渡す“襷リレー”によって、走者&区が変わる。どの出場校も“襷を全区間つなぐ”ことが最低目標で、そのうえで優勝やシード権を狙っている。

繰り上げスタートって?

 トップの選手が中継所を通過してから2区、3区は10分、それ以降は20分以上経過しても前走者が中継所に到着しないと“繰り上げスタート”になる。母校の襷ではなく、大会本部が用意した“白襷”で走る(※参照)のは屈辱だ。とはいえ、失格ではなくタイム差はきちんと計算される。

「繰り上げスタートのルールがなかった大昔は、何時間かかろうとも襷をつないでいました」(碓井さん)

(※)繰り上げスタートでも、5区と10区だけは自校の襷の使用が認められている

8区から9区の戸塚中継所の繰り上げスタート。襷をつながらなかった。

時間差スタートって?

 往路でトップのチームがゴールしてから、10分以内にゴールできれば、翌日の復路(6区)はそのタイム差でスタートを切れる。が、10分以上遅れたチームは、トップのチームがスタートした10分後に一斉スタートとなる。

復路は見た目の順位と本来の順位が違ってくるので、ややこしいですね」(和田さん)

途中棄権って?

 ケガや体調不良などで、走り続けられなくなった場合は、運営委員と協議したうえで監督がレースを止める(=途中棄権)。棄権した区以降のランナーも走りはするが、オープン参加扱いとなり、順位はつかず記録も認められない。当然、次回大会は予選会からの出場を目指すことになる。

エントリーって?

 例年12月10日、“チームエントリー”により、各大学の出場選手は16人に絞られる。さらに、12月29日の“区間エントリー”で選手10人と補欠6人が登録される。当日のエントリー変更は、区間登録された選手と補欠選手の入れ替えに限り、4人まで可能。

外国人留学生って?

 初めて外国人留学生が登場したのは、第65回大会('89年)。山梨学院大のジョセフ・オツオリさんだ。過去に留学生を起用したことがあるのは山梨学院大、日大、拓殖大、亜細亜大、平成国際大、東京国際大の6校のみ(予選会を除く)。なお、10区間10人のランナーのうち、留学生は1人に限ると決められている。

関東学生連合って?

 予選会を通過できなかった学校から、個人成績が上位の選手を集めたチーム。オープン参加なのでチーム、個人に順位はつかないが、個人の記録は認められる。選出は1校から1名のみという規定が。

「関東学連選抜(関東学生連合の前身)で走った選手で有名なのは、公務員ランナーの川内優輝さん('07 、'09年・学習院大)ですね」(和田さん)

往路優勝? 復路優勝? 総合優勝?

 往路優勝は、往路を1位でゴールしたチーム。復路優勝は、復路だけのタイムがいちばん速かったチーム。そして全チームが目指す総合優勝は、2日間の総合タイムで決まる。