裁判当初、羽賀サイドは“お金がないから”ということを理由に「数百万円しか払えない」という主張を行い、和解の申し出をしてきたこともあったそうだ。
時が経った'16年10月27日。大阪地裁はY氏の主張を認めて全額分の支払いを羽賀に命じたものの、その翌月中にも大阪高裁へ控訴が行われたのだという。不思議に思ったY氏が羽賀の財産を調べてみると、資産性の高い不動産を所有していることがわかったーー。
そこで、羽賀が持つ物件を確認するために沖縄へ飛んだ。彼が所有する3棟のビルは、海沿いの有名リゾート地にある。1つのビルを挟んで3棟は並ぶように建っている。
「この場所は夕日の眺めがきれいだと有名な場所で、地元の人だけでなく観光客や米兵なども散歩やデートなどで訪れます。夜になれば、昔、羽賀さんが店を出していたアメリカンビレッジなどの夜景がとても幻想的なんですよ」(地元の住民)
そのためか、羽賀が所有する3つのビル(上の写真1〜3)には7軒の飲食店が入居。それ以外に音楽教室や幼児教室に貸しスタジオ、そして住居もある。ここには在日米兵と思われる人たちが入居しており、空室はなさそうだ。
「穴場のおしゃれスポットとして、この一角は人気があるんです。うちは5年くらい前から出店していますがテナントや部屋が空くとすぐに次の借り手が見つかるようですね。家賃は具体的な額は言えませんが、20万円から30万円の間くらいですよ。羽賀さんは何度か来てくださいました」(羽賀のビルに出店している飲食店オーナー)
収監前にはほかの店舗にもたびたび訪れていたようで利益を生むビルを羽賀はとても大事にしていたようだ。だが、A子さんの姿を見たという人はほとんどいない。
「奥さんは1度しか会ったことがないですね。ウチの店舗で排水管がおかしくなってしまったので、相談したことがあったんです。そのとき、刑務所にいる羽賀さんに代わり、奥さんが対応してくださった。とても感じのいい人でしたよ」(別の飲食店オーナー)
また、この物件が人気なのは、沖縄特有の理由があるという。
「まあ、このあたりは米軍基地が近いし、週末ともなればかなりにぎわうからね。それに、米兵は入れ替わりが激しいけど、相場より高い家賃で借りてくれる。軍が保障してくれるから、家賃を取りっぱぐれる心配がないからね。築年数は古いけど借り手は多く見込めるだろうし、あのビルなら今でも1棟1億円くらいで売れるんじゃないかな」(地元でビルを経営するオーナー)
それでは、羽賀が持つ6つの物件は、どれほどの資産価値があるのだろうか。
沖縄県内の不動産会社に聞いてみると、
「ビルのテナント料や貸家の賃料などで、最低でも月々300万円は入ってくるでしょう。立地条件などを考えた不動産評価としては、全部で3億円から4億円ぐらいだと思います」
と答えてくれた。
家賃収入だけでも、年間に4000万円近くあるとは……。登記簿を確認してみると、3棟のビルを含む6つの物件は、'87年から'05年にかけて取得しているようだ。物件には沖縄銀行のほか、もう1社の根抵当権が設定されている。そのため、それらの会社への月々の返済が残っている可能性はある。
本当にお金がないのだろうか
だが、A子さんが雑誌で発言していた税務署などからの差し押さえは、すべて解除されていたのだ。「お金がなくてY氏に数百万円しか払えない」というのは、はたして本当なのだろうか。
妻であるA子さんに話を伺おうと裁判資料にある自宅住所を訪れたが、出てきたのは別の女性。近所で聞き込み取材もしてみたが、A子さんや子どもたちが住んでいる形跡はなさそうだった。
そこで、この女性に話を伺うと、
「私は留守をあずかっているだけ。手紙をくれたら(A子さんに)渡しますよ」
とのことなので手紙を託したが、A子さんからの返答は得られなかった。
羽賀の代理人にも聞いてみたが、
「取材はいっさい、受けられません」
とのことだった。
「民事裁判で“仮釈放をしたいので同意書を書いてください”と向こうの弁護士に頼まれました。しかし、1円も弁済しないでそんな虫のいいことができるわけがないと断ったんです。
弁済すれば仮釈放の同意書にサインすることも可能なんですが、羽賀はいっこうに返そうとしない。しかも、最近わかったことなんですが、彼は大阪高裁に控訴するための手数料182万円を“お金がないから”という理由で『訴訟救助』を申し立てて昨年12月に認められているんですよ。
ボクもすっかり羽賀に騙されていたわけですが国だって彼に騙されているのかもしれません。本当に彼は梅宮さんがおっしゃったとおり“稀代のワル”ですよ!」
と、Y氏は怒りの色を隠さない。彼は羽賀の資産を差し押さえることにしている。どうやら羽賀も年貢の納めどきが来たようだ─。
*訴訟救助制度とは民事訴訟法第82条に定められており、訴訟に必要な費用を支払う資力がない人や支払いで生活に著しい支障を生ずる人が救助を受けることができる制度。ただし、勝訴の可能性がないと利用できない