昨年末、茨城県で最大震度6弱の大きな地震が発生。1月18日にも、茨城北部で再び、震度4の地震があった。茨城県での地震を『週刊女性』誌上で予測していた地震・火山のプロフェッショナルは「次は千葉県沖か首都圏」と言い切った。そのとき東京は──。

「東日本大震災は終わっていません」

「予測したとおりになりましたね」と立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授は言った。

 茨城県北部を震源とする地震が昨年12月28日午後9時38分ごろ発生し、同県高萩市で最大震度6弱を観測した。気象庁によると、震源の深さは約10キロで地震の規模を表すマグニチュード(M)は6・3。東北新幹線が仙台―大宮駅間で一時運転を見合わせたほか、常磐自動車道も一部区間で通行止めになった。

 高萩市立君田中学校では体育館2階の窓ガラスが12枚落下した。

「翌朝、私と教頭と市職員で割れたガラスの後片づけをして、業者に新しいガラスと交換してもらいました。冬休み中の夜間だったのでケガ人がなくてよかった。余震に備えて、体育の授業や部活動ではなるべく窓際から離れて運動するよう指示しています」(君田中学の征矢眞一校長)

 気象庁はこの地震について、2011年3月11日の東日本大震災の「余震と考えられます」としている。昨年11月の福島県沖地震についても同じ見解を示していた。

 さらに、1月18日午後5時19分にも、茨城県北部で震度4の地震を観測。震源地は茨城県の沖合で震源の深さは約50キロ、M4・2と推定されている。

 しかし、東日本大震災からもうすぐ丸6年。その余震について声高に言い始めたのは福島県沖地震が起きてからといっていい。一方、それ以前の比較的平穏なころから「東日本大震災は終わっていません」と警戒を怠らないように『週刊女性』誌上で警告してきたのが冒頭の高橋教授だった。

 福島県沖地震が発生した直後の『週刊女性』2016年12月13日号では、

《次に地震活動が活発化しそうなのは福島県沖の南です。茨城、千葉両県の沖合でM6〜7クラスの大地震が数か月以内に発生する確率が高い》

 と予測し、約1か月後の茨城でM6・3を的中させた。

「東京湾のど真ん中なら津波が起きる」

 高橋教授は「震源地が少し内陸にずれましたけどね」として“次の大地震”について語る。

次は1〜2か月以内に千葉県沖かその内陸部で、M6〜7クラスの地震が発生するとみています。千葉県沖というのは犬吠埼など県北の沖合です。内陸というのは千葉県内だけでなく、東京や東京湾を含めた首都圏直下です。実は、昨年後半から千葉、茨城、東京、埼玉、群馬、栃木では小さな地震が頻発しています。防災の備えを再確認してください」

 高橋教授によると、このエリアは世界でも唯一、プレート(地球の表面を覆う岩盤)が3段重ねになっている。下の図のような位置関係にあり、上から「北米プレート」「フィリピン海プレート」「太平洋プレート」と積み重なる。どのプレートがどこで跳ねるか、あるいは引きちぎれるかによって地震の規模は変わってくるという。

東日本では大地震が南下している。※高橋教授への取材に基づく。首都圏の真下では3枚のプレートが重なり合う(作図/スヤマミヅホ)

いちばん怖いのはフィリピン海プレートが跳ねるパターンです。例えば、東京・神奈川の都県境を流れる多摩川河口の数キロ沖で跳ねた場合、それは東京湾のど真ん中なので津波が起きる。

 陸地までの距離が短いため到達時間も早い。東京湾は入り組んだ形状をしているので、“津波は入ってこない”とか“入ってきたとしても時間的余裕がある”との見方を示す人がいますが、湾内で発生した津波は防ぎようがありません」(高橋教授、以下同)

 首都圏のベイエリアは観光地化しており、レジャー施設や海浜公園、おしゃれなカフェテラスなどが立ち並ぶ。津波が襲った場合、たとえ数十センチの波高でも危険だという。

「もし地下街にいたとしたら、すぐ地上にあがってください。地下街に出入りする階段はだいたい30度の角度で設計されており、10センチの津波がザーッと流れ込んだら、波に足をとられて高齢者や子どもはもちろんのこと、たいていの女性は手すりにつかまっても地上にあがることなどできません。30センチの津波ならば体力自慢の男子大学生でも無理です

「浅間山やトカラ列島でも気になる動きが」

 さて、この先1年ぐらいをみると、ほかに地震・噴火が気になるエリアはどこだろうか。

「まずは東日本の火山の爆発的噴火が心配です。M9クラスの地震のあとに大噴火が起こっていないのは世界中を見渡しても3・11だけです。特にここ最近、長野・群馬にまたがる浅間山の様子が変です。今年に入ってから火山ガスの放出が急増していて、1月11日の観測では2000トンを超えました。火山活動が活発化しています」

 地震が心配なのは東日本だけではない。西日本でも気になる動きがあるという。

九州南端と奄美群島のあいだにある鹿児島・トカラ列島では、昨年12月から今月にかけ、ものすごい数の地震が発生しています。私は南海トラフ地震は2020年までにくると予測していますが、その前兆のひとつとみています。国は観測機器を配備するなど四国から東のエリアを“要注意マーク”していますが、それにとどまらず、九州、沖縄、台湾、フィリピンまで大きく揺らす大地震になる心配があります

 地震列島、火山大国に暮らす私たち。高橋教授は「備えを忘れないでほしい。地震は止められませんが、心がけ次第で災害は減らすことができますから」と話した。

<Profile>
たかはし・まなぶ 立命館大学教授。1954年、愛知県生まれ。環境考古学(環境史、土地開発史、災害史)が専門。著書『平野の環境考古学』(古今書院)など