「ニノですか? よく似てると言われるんです(笑)」
春風亭昇々(しょうしょう)は、嵐の二宮和也似の男前。実際、独演会を開くと8割が女性客という人気っぷりだ。
「自分としては男子向けの落語のつもりなんですけど(笑)。昨年はブームで注目されたけど、真価が問われるのは今年からでしょう」
千葉県出身だが兵庫県の大学へ進み、落語研究会に所属した。ある日、テレビの落語番組の収録を観覧。登場したのは、のちに師匠となる春風亭昇太だった。
「師匠は古典の『壺算』(※)をやったんです。それまで古典なんてじいさんがやるものだと思ってたのに、大爆笑でした。マクラも含めてすべてがおもしろくって」
(※)『壺算』:大小の壺を買いに行き値段交渉のトリックで店主を騙し、まんまと大の壺を小の金額でせしめるという噺。桂枝雀の芸が有名。
そして大学卒業間近、新宿末廣亭に出演していた昇太師匠を「出待ち」し弟子入りを志願。1か月後、師匠から「今から横浜に来れる?」と突然の電話が入る。「チャンスは今しかない!」
と新幹線に飛び乗った。
「ほかの就職先は全部同じに見えたんです。人に指図されずに、自分で考えて自分で演じて世界観も作れる、そんな落語が最も理想の仕事だと感じたんですね」
しかし、前座の仕事は大変に厳しいものだった。
「寄席では『高座返し』や何十人もいる先輩方へのお茶出しが役目で、師匠1人につき3回も淹(い)れなきゃなんない。人によって“俺は冷たいお茶だ”などリクエストが違ったり、急な階段を駆け上がるから、途中でこぼして怒られたり。楽屋は落語家だけでなく、色物の方や講談師、漫才師と師匠だらけですから、息つく暇もなかったですね」
そんな修業生活の2年目から、前座にはご法度の落語会を仲間と開くように。
「師匠に頼み込んで、仲間4人で2か月に1度、新作のネタおろしをしました。そのときに作った噺を今でもやりますから、すごい財産になってますね」
'11年4月、晴れて二つ目に昇進、'16年には、1年間で最も活躍が目覚ましい二つ目に贈られる『渋谷らくご大賞』を受賞した。
次に目指すのは「真打」、と思いきや──。
「もちろん真打は目指すけど、目標はそこじゃない。これまでは、落語家はみんな同じ富士山を目指して一生懸命、登るのがエライとされてきた。でも僕は、誰も登ったことのない山の景色が見たくて。だから僕が草刈り鎌をふるいながら目指しているのは『昇々落語』の頂。自分だけのオリジナルを確立させたいんです」
【春風亭昇々ブログ】
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