2月18日から20日までの旅程になりそうな皇太子ご夫妻の北海道訪問について、「まだ正式発表はありませんが、雅子さまは冬季アジア大会の開会式などに出席のため、札幌市を訪問することで検討が行われているようです」と話すのは宮内庁担当記者。
'03年2月に青森県で開かれた大会に出席されて以来となるが、雅子さまが意欲を持たれている理由について、この記者が続ける。
「当初、大会組織委員会は陛下の出席を求めていましたが、開催時期が北海道の厳冬期になるため、陛下の年齢を考慮して皇太子さまが名代(代行)で行かれることになりました。となると、雅子さまは美智子さまの代行となり重責です。陛下の譲位に関連した本格的な議論も始まり、皇后になる日も近い雅子さまにとっては、出席しておきたい公務だと思います」
1994年に広島県で開かれた夏季アジア大会のときには、開会式に出席後、その足で関西国際空港から、直接フランスとスペインを訪問された両陛下。
現在は80歳を越えた年齢で、もはやご体調問題は避けて通れないようだ。
「陛下は'12年に、心筋梗塞などのリスクがあったので、冠動脈のバイパス手術をされました。
循環器系の専門医の話では、そんな方が83歳で厳冬期の北海道で公務を行うのは医学的にリスクが数倍になるとのことです」
そう話すのは、元宮内庁担当記者で『天皇陛下の全仕事』(講談社新書)の著書もある産経新聞の山本雅人さん。
「2月下旬のベトナムなどの訪問も考慮すると、厳冬の北海道に行くのは体調的にも厳しいからかもしれません。
いちばん危ないタイミングは血圧が急に上がるときらしいのですが、車から会場に入る一瞬でも寒いところを歩くと血圧が一時的に上がりますのでリスクがあります。
さらに式典に出られると、精神的にも大きな負荷がかかり、血圧が上がる要因になります」(山本さん)
折しも、昨年まで両陛下が5年連続で参列されていた3月11日の東日本大震災の追悼式には、秋篠宮ご夫妻が出席されることが決定。
「阪神・淡路大震災の追悼式にも両陛下だけではなく、皇太子ご夫妻と秋篠宮ご夫妻が参列された前例もあるとの説明がありました。
しかし、陛下の譲位に向けた公務の負担軽減や若い世代への引き継ぎという意味合いも含まれているのではないでしょうか」(冒頭の記者)
平成は30年まで!?
1月23日には、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の論点整理が公表され、議論の場は国会に移り、陛下一代に限っての特例法で退位していただく流れになりつつある。
「平成は30年までで、皇太子さまが天皇に即位され雅子さまが皇后になられる日が、2年後の'19(平成31)年元日だというニュースも一部で報じられました」(宮内庁関係者)
そんな譲位までの期間、今回のアジア大会のように、年間1600件はあるという陛下の公務を皇太子さま(56)や雅子さまに、お譲りになることはあるのだろうか─。
実際、両陛下はご自身たちが平成になって始めた「こどもの日」と「敬老の日」に関連した施設訪問を、一昨年から皇太子ご夫妻と秋篠宮ご夫妻にお任せになっている。
「真夏や真冬の屋外の行事など、リスクの高いものは一部、お譲りになるかもしれません。
しかし、憲法で定められた『国事行為』や、『三大行幸啓』と言われる重要な公務、国民の安寧を祈る『宮中祭祀』などは譲位まで続けられると思います。“全身全霊”で、できなくなるから譲位するとおっしゃっているということは、できるときは最後までやるという意味だと解釈できるからです」
そう説明するのは、前出の山本さんだ。「外国訪問」や、両陛下が最も大切に思われている戦没者慰霊もお任せになることはないとみる。
「外国訪問をすると、相手国は天皇を国家元首としてみるので、公式晩餐会などでも元首として扱われます。さらに陛下ご自身も、天皇が行かないと礼を欠くようだという発言をされています。
8月15日の全国戦没者追悼式もかなり重要だとお考えなので、退位されるまで続けられると思います。この日だけは、いちばん格の高い『センチュリーロイヤル』という車に乗り来場されます。国会の開会式には乗られていますが、三大行幸啓や海外訪問の際は乗られていないので、どれだけ特別視しているかがわかります」(山本さん)
元宮内庁職員で、皇室ジャーナリストの山下晋司さんも同じような見方をする。
「宮内庁は昨年、全国の警察本部長らが上京した際に挨拶を受けられる10件程度の『拝謁』などを削減しました。
ただ、今の両陛下のお仕事は、かなり整理されている印象なので、退位されるまでの2年で変わる公務はないのではないかと思います」
有識者会議の論点整理でも、「天皇の代行者が公的活動を行っても、象徴としての行為にはならない」との指摘もあったように、両陛下の公務を他の皇族方が単純に代行できるものでもないようだ。