「“節約して銀行に預ける”だけでは、お金はうまく貯まらないでしょうね」
というのは、ファイナンシャルプランナーとして多くのメディアに出演する山口京子さん。金利がすごく高かったバブル期の記憶を引きずって、“なんとなく”銀行に預けている人が多いと指摘する。
「みなさん、今の金利をご存じですか? 普通預金だと年0・001%。100万円預けても利息は年10円、たとえ1億円預けても1000円なんです。飲み代にもなりません(笑)」
さらに、この利息からは約20%の税金が引かれる。
「読者の中には、すでに老後を迎えている人もいると思いますが、日本人女性の平均寿命は世界2位の87歳。2人に1人は90歳のお誕生日を迎えるわけです。つまり、90歳の誕生日を迎えるまでに、お金の寿命が尽きてはいけないんです」
今、SNSで、セレブでリア充な生活を披露している人をお金持ちと呼ぶわけではない、とバッサリ。
「それは、お金がなくなっていく様子をみんなに見せているだけかも。本当のお金持ちは、自分の棺桶のフタがピタッと閉じられるまで“豊か”で“いい気分”でいられること。最後の最後まで、自分の思いどおりの暮らしができることだと思うんです」
そんなお金持ちになるためには、どうしたらいい?
「今の行動や習慣を変えることです。いきなり億万長者にはなれませんが、本当にお金持ちになりたいなら、毎月コツコツと、“お金を育てること”を考えないと。毎月“貯めながら増やす”仕組みを作ることです。そのためには、まず心の準備。お金に興味を持ち、お金への意識を変えることがすごく大事。すると、行動が起こせるようになります」
そこで、山口さんが幸せなお金持ちに近づくためのヒントを8つ伝授!
1)全部使い切る喜びを知る
「例えば、ハンドクリーム。全部使い切る前に、新しいものを買っていませんか?」
ドキッとした人は、ほかのものも使い切らないうちに買ってしまっているはず。食材、化粧品、文房具、衣類……心当たりがあるのでは?「使い切らないうちに捨てることは、お金を捨てることと同じなんです。お金を捨てるなんて、もったいないですよね?」
買ったからには使い切るのが鉄則。
「例えば、ただのボールペンが10本あるより、いいボールペン1本を使い切ったほうが充実感がありますよね? 気に入ったものなら大事にして最後まで使い切れますし、その喜びを知った人は無駄買いをしなくなります」
また衣類は、季節ごとに予算&買うアイテムを決め、リストを作るのがオススメ。
「手持ちの服を把握したうえで、買い足すものを決めると、コーディネートに悩みません」
2)家族でお金のことを話し合う
「なかなか子どもにお金の話はしづらいかもしれませんが、してあげてほしいですね」
“限られたお金をどう使うのか”を家族みんなでよく話し合うことは、とても大切。
「例えば、子どもは塾に行きたい。でも母親はローン返済にお金を使いたい。それぞれの優先順位が違うわけだから、話し合わないといけないですよね」
わが家の収入や貯蓄はどのくらいあるのか? 家族が、いつ、どんなことをしたいと考えているのか? それにはいくらかかるのか? 紙に書き出してみるのもオススメ。そして、
「“春期講習に行けば12万円かかるけれど、本屋で解説書や問題集を買って家でやれば8000円ですむよ。自分で頑張れる?”などと話し合うなかで、子どもに“これをするためには、いくらかかるのか”を知ってもらうことも意味があると思います」
3)やめることと続けることを決める
“とにかく節約!”と、あらゆる出費を削ることが正解とは限らない。
「私はそれを“リバウンドコスト”と呼んでいます。例えば、美白。冬は美白しなくてもいいと思っている人も多いんですが、冬もちゃんとやらないとシミが出てきちゃう! せっかく続けてきたことをいったん中断すると、その後、やめる前の状態に戻すだけでひと苦労。継続していた場合以上に、時間も費用もかかるんです」
やめてはいけないものの代表格は、健康診断や家のメンテナンスなど。
「健康診断のお金をケチって、乳がんが発見できなかったら嫌ですよね?」
続けたいこと、大事なことは踏ん張って続けるのが◎。だけど、
「もう自分がやりたいことではなかったり、家族も必要としていないのであれば、きっぱりやめましょう」
何をやめて、どれを続けるのか……見直してみて!
4)先取り貯金をする
“節約して、浮いたお金を貯金”と思っても、給料日前にすっからかん……。
「そんな人にオススメなのが、先取り貯金。貯金ができる人はみんなやっている、最強の貯蓄術です!」
まずは“月にいくら貯金するか”を決める。そして給与が振り込まれたら、いの一番に貯金。そして残ったお金だけでやりくりしていく……という方法。
「最初から“(生活費は)この金額しかない”と思うと、意外とそれに合わせて生活できてしまうもの。収入の10〜25%の金額から取り組むといいでしょう。上限は40%くらい。割合を増やしすぎて苦しい気持ちにならないように注意してくださいね」
先取りの方法としては、給料日に自分で貯蓄用の口座にお金を移す手もあるけれど、つい忘れがち。自動積立の金融商品などを利用して強制的にキープするのがオススメ。
5)お金の寿命を延ばす
「1960年代、日本人の平均寿命は今よりもずっと短く、男性は67歳くらいでした。だから定年後のお金の心配はしなくてもよかったんです。でも、今や“人生90年時代”。昔と同じ金銭感覚ではダメなんです。老後20年、30年を豊かに過ごすには、ただ貯めるだけでなく“お金の寿命を延ばす”ことも考えないと」
いったい、どういう意味?
「例えば1000万円あったとします。生活費として使っていけば、5年くらいでなくなってしまいます。でも、投資先を分散して運用をすれば、1000万円は増える可能性が十分あります。3%で運用できたら20年でおよそ倍になります。これがお金の寿命を延ばすということです。“投資は怖い”という人もいると思いますが、私は宝くじで億万長者を目指すよりもずっとカタイと思いますよ」
6)金利と税金を意識する
「“お金に興味を持つ”“お金への意識を変える”ことが大事と話しましたが、専門書を読んだり、難しいことをする必要はありません」
まずは、金利や税金を意識することから始めましょう。
「例えば、自分の預金の利息から、20.315%の税金が引かれていることはご存じですか?
でも、個人型確定拠出年金(イデコ)なら、それがかからない。お友達とお茶を飲みながら、そんなことを話すだけでもいいんです」
大事なのは、ちゃんとアンテナが張られていること。
「またマイナス金利政策で、住宅ローン金利の常識も大きく変わっています。変動金利と、35年固定金利の差が少なくなるなど、今まででは考えられなかったことが現実に起きていますから」
すでに借りている人は、ローン金利の低いものに借り換えると返済負担が大きく軽減できる可能性あり!
7)誰にでもいい顔をしない
“お似合いですよ”と店員にすすめられた服を断り切れずに買って、あとで反省。
「ショップの店員、車のディーラーなど、みんなにいい顔をしようとすると、お金は貯まりません。本当のお金持ちは、お金をかけるところ&かけないところをシビアに判断しています。私の知り合いの名古屋の大富豪は、待ち合わせにバスで来ます。見栄でタクシーに乗ったりしないんです」
お金を払う基準は、価格が安いからではなく、“払う価値が十分あるか”。
「名古屋人はこれを“お値打ち”って呼ぶんですが、全然好みじゃないお皿が1枚100円だったとしても、いらないものはいらない。全然お値打ちじゃない。でも、本当に欲しかった10万円のコートが5万円だったらお値打ち。買っておかないと! かけるところにかけるために、普段は無駄なお金を使わないことも大事です」
8)他人と比べて、ひがまない
「他人をひがんだりしないことも、すごく大切。自分が何も努力していないのに“あの人はいい会社に入った”とか“あの人のほうがパートの時給が上だ”とか。とりわけ、女子は比べがちなんですが、他人の人生のシナリオの立ち位置は、自分の人生には無関係。比べる必要はないのに、つい比べてしまう。もったいないですよね」
何より、自分ひとりだけが幸せになろうとは思わないこと。
「お付き合いを大事にすることで得られる情報もあるかもしれない。自分がしていただいたことには、やはり感謝の気持ちでお返しをしないといけない。円と縁は人が運んできてくれるもの。誰とも仲よくせず、誰のことも認めず、他人を徹底的に排除した結果、預金の残高だけが増えても、ね。老後に友達がひとりもいないなんて、寂しい人生じゃないですか(笑)」
取材・文/鷺島鈴香、『週刊女性』取材班
<プロフィール>
山口京子(やまぐち・きょうこ)◎ファイナンシャルプランナー。家計簿から保険、お金を増やす運用まで、女性にやさしいアドバイスに定評が。最新刊に『お金に泣かされないための100の法則』(主婦と生活社)。メディア出演多数