広島アジア大会の開会式で歓迎パフォーマンスをご覧になる両陛下と皇太子ご夫妻('94年10月)

 「有識者会議」の論点整理が公表され、議論の場は国会に移った。これから徐々に天皇皇后両陛下のご公務が皇太子や皇太子妃雅子さまに譲られていくことになる。

 雅子さまが「皇后」の地位に就かれた後、美智子さまが陛下と相談しながら築かれた“平成流”の公務はどう変化していくのだろうか─。

 長期療養が始まってから13年が過ぎた雅子さまは、ここ数年、回復傾向で苦手とされてきた「園遊会」などへの出席も増えているが、皇室ジャーナリストの山下晋司さんは、

皇太子同妃両殿下が天皇・皇后におなりになった際は、両陛下でご公務をされたほうが当然、国民も喜ぶでしょう。以前に陛下も女性皇族は“その場の空気に優しさと温かさを与え、人々の善意や勇気に働きかける”とおっしゃっています。

 ただ、香淳皇后は昭和50年代にお身体の状態が悪化し、それ以降、昭和天皇はおひとりで公務に臨まれていました。

 そう考えますと、新皇后が病気で公務に出られなくてもしかたないですし、お出ましもできる範囲でやるしかないと思います」

 では、実際にお出ましについてどのような「継承」「分担」や「削減」「創出」がありそうなのか─。山下さんが問題を指摘する。

「皇太子殿下が天皇に即位されて今の陛下のお仕事をそのまますべて行うとしたら、ライフワークとしての環境問題や水問題に関する公務ができなくなる可能性があります。宮内庁は大幅な見直しを検討するべきだと思います。今の両陛下の仕事量は、皇太子妃殿下にとっては当然、ご負担になるでしょう」 

 雅子さまも国連の活動や獣医学などに関心があり、お忍びで会合に出席することもあるので、それらの分野をライフワークとして創り出すお考えがあるのかもしれない。

 皇太子さまが即位後、秋篠宮さま(51)は伝統的には「皇太弟」となるが、「皇太子」の地位に就かれる案も検討されているという。 

 そうなれば、公務のあり方も変わってくる可能性もある。元宮内庁担当記者で産経新聞の山本雅人さんはこう指摘する。

「天皇と皇后には三大行幸啓もありますので、皇太子ご夫妻がされている『七大行啓』(以前は八大行啓)は秋篠宮さまに引き継がれる可能性が高いです。

 そういう意味でも、皇太子家と宮家の公務の折り合いをつけるのが今後の問題だと思います」(山本さん)

 何かと比べられる皇太子家と秋篠宮家だが、そもそも公務の性質に違いがあると山本さん。

「宮家に比べ、皇太子ご夫妻は日本赤十字社の名誉副総裁職を1つしかもたれていませんが、『勤労奉仕団へのご会釈』を毎週のようにして、七大行啓にも出席されます。

 加えて皇太子家は天皇に準ずる形で、各国に赴任するほぼすべての大使や、国内の外国大使のご接待や離任する大使に会う行事があります」

真冬の公務では吹雪の場合もあり、両陛下には負担が大きい(秋篠宮ご夫妻・'91年2月)

 一方で、秋篠宮家や他の宮家は─。

「基本的に多くの『名誉総裁職』をもち、その関連の仕事に加えて、各宮家が毎年出席される地方行事というものがあり、ご公務が多すぎます。秋篠宮家は、眞子さまや佳子さまに引き継いでもらうことを宮内庁も考えなければならないでしょう」(山本さん)

 そこで、「削減」せざるをえない公務があると山下さん。

「勲章・褒章といった『栄典』に関することは天皇がかかわるべきですし、外国の大使などとお会いするのも国際親善のうえで重要です。

 ただ、副大臣や大使などの『認証官任命式』は、署名をすること自体は国事行為ですが、任命式は国事行為ではないので、やめることができるかもしれません。頻繁に行われているので、これをなくすと、ご負担はかなり減ると思います」

 山本さんも、次のように減らすことができる公務があると考える。

陛下が前立腺がんの手術をされた後に、負担軽減という意味で6件のいわゆる拝謁を減らしています。これは他の皇族に引き継いだものですが、そういったものが調整の対象になる可能性があります

 現在の両陛下は、昭和天皇と香淳皇后のなさりようを、そのまま受け継がれたわけではなく、より国民に寄り添った“平成流”を編み出されてきた。時代や世代が変われば、また新しい皇室像や公務のあり方が生まれてくるはずで、

個々の行事をどうするかということは次世代の考えに譲りたいと考えます」('09年4月の記者会見)

 という陛下のお言葉のとおり、雅子さまも美智子さまの“平成流”を受け継ぎながら、ご自分なりのスタイルを模索されることになる─。