ガチャガチャ『シャクレルプラネット』の景品のひとつ

 成田空港内で外国人観光客が立ち寄る“新名所”を知っていますか?

 空港第2ターミナル本館地下1階、京成線やJRの改札を出て、出発ゲートに向かうエレベーター脇のスペースに、数百円を入れてハンドルを回すと、オモチャ入りのカプセルが出てくる“ガチャガチャ”マシーンが、ズラリと並ぶ。その数ナント171台! 大型ショッピングセンターや家電量販店で、大規模に設置されている光景を見ることはあるが、なぜ空港に?

 企画したタカラトミーアーツによると、空港で利用客が楽しめて、エンターテイメント要素が高い空間作りをするため“ガチャガチャ”に白羽の矢が立ったという。

 訪日外国人観光客は年々、増加。2016年は過去最高の2000万人を突破した。そうした状況のなか、マシーンは同年7月29日に設置された。当初は9月下旬まで期間限定の予定だったが、人気ぶりに、継続展開することが決まり“常設”されている。

 “ガチャガチャ”と称されるカプセルトイだが、メーカーによって呼び方が違い、タカラトミーアーツでの名称は『ガチャ』。

 同社は、数年前から首都圏のJR各駅で、期間限定でガチャを設置するイベントをたびたびプロデュース。そのなかの秋葉原駅でのイベントのひとつに、10か国語で説明した売り場を設けたところ、訪れた多くの外国人観光客に好評だったことから、空港での展開にも結びついた。

 秋葉原での経験を生かして、売り場には“なぜか日本で売れてます。”のコピーを、英語、中国語、ロシア語、アラビア語など9か国の外国語で表示した。

 ただし、韓国語は、流行の言い回しで“疑惑の1勝”とハングルで表記したところ、韓国ではSNSなどで話題になったという。

 さらに、外国人に訴求したアイデアが、“あまった小銭をオモチャに!”というキャッチコピーだった。

ガチャは、海外では子どもが遊ぶイメージがあり、大人の方や初めての方に、目にとまるような見せ方として、海外旅行で余った小銭の使い道をコピーにしました。“なぜか日本で売れています。”で、不思議感をあおり、興味をひいてもらえるようにしました」(タカラトミーアーツ・ガチャ・キャンディ事業部の森川修さん、以下同)

342種類、ナンバー1の商品は

両手いっぱいにガチャを爆買いした女性

 ガチャは1回、100円〜500円。小銭解消の狙いは予想を超え、両替する観光客が続出。当初は1台だった両替機を現在は3台に増やして対応している。

 空港のガチャは、342種類。人気ナンバー1は、あごがシャクレている動物フィギュア『パンダの穴 シャクレルプラネット』だ。

 “パンダの穴”は、大人向けガチャのブランドで、これまでに“自由すぎる女神”“考えない人”といったパロディーやシュールな商品で人気を集めている。

 『シャクレルプラネット』は、昨年1月に発売された第1弾が100万個以上を売り上げ、昨年末に第2弾が発売された。ガチャは50万個でヒットと言われるなか、2倍となる驚異の売れ行きだ。

成田での人気商品は、日本国内と一緒。面白いものは万国共通だと実感しました。最初は、日本を意識して、こけしのミニチュアなどを置いたりしましたが、思ったより売れませんでした(笑)

 ガチャは、韓国、台湾、香港などアジア圏や欧米にもあるが、上位にランクインしているポケモン、ディズニー、スター・ウォーズは、日本でしか手に入れられないポーズやアレンジが、外国人にウケている要因という。

 また、SNSやインスタグラムにアップするための“ネタ作り”としても活用されている。カプセルトイは、各メーカーがほぼ毎月、新商品を発表している。

 ガチャの場合、1か月25〜30アイテム、年間350商品を発売。基本は売り切りで、ヒット商品がまれに再生産される。そのためファンの間では“ガチャは、一期一会”と称されることも。

 成田空港でも、売り切れになっている商品もあり、気に入ったら、買うしかないという心理も働いていそうだ。

 外国人観光客への人気で、市場の広がりを見せ、成田空港での実績に、中部国際空港セントレアなどが関心を示しイベントが実施された例もあるという。

「ガチャガチャを子どものときに楽しんでいた方が大人になり、子どもと一緒に回すようになった。売り上げ比率では、子どもと大人が半々になっています。その一方で、駅のイベントでは、ガチャガチャを初めて回す人の割合が6〜7割もいて、まだまだ知られていない存在です。ガチャを回すときのワクワク感やドキドキ感を毎日の楽しみにしてもらえるように、もっと普及させていきたいと思います」