四大陸選手権が終わり、3月の世界選手権に向けてフィギュアスケートのシーズンはいよいよクライマックス!
「今や日本で最も人気のあるスポーツのひとつ。昨年3月に行われた『世界フィギュアスケート選手権2016』の平均視聴率は16・3%で、羽生結弦選手の出番には瞬間最高視聴率25・1%を記録しました」(スポーツ紙記者)
羽生のほかにも宇野昌磨や宮原知子など、男女ともに有力な日本人選手がいて、応援にも力が入る。でも、最近ではちょっとマナー違反のファンも目立つんだとか。
「お目当ての選手の出番が終わると、途中で帰る人がいます。昨年の全日本選手権で行われたエキシビションはひどかったです。宇野選手の出番が終わった途端、次に滑る宮原選手を見ずに2割くらいの人が帰ってしまいました。出場する選手全員の演技を楽しむのが本来のマナーなんですけどね……」(ファンの女性・Aさん)
以前はスポーツとして節度のある応援だったものが、選手をアイドル視するファンが増えたことで、変わってきたらしい。
「バナーという応援旗のようなものを勝手にデザインして、ネットで配布する人もいます。それだけならいいんですが、応援席でバナーを配って歩くのは困りますね。無理やり手渡されたこともありました。応援を強制されると嫌な気分になります」(前出・Aさん)
ノリを勘違いしている若いファンもいる。
「'14年の世界選手権の会場に、クマのプーさんの着ぐるみを着た女性2人組がいました。禁止されているわけではないのですが、さすがに浮いていましたね。選手の名前や顔が書かれたうちわを持って応援する人もこの大会から急増しました。私は、もともと羽生選手のファンだったのですが、こういうファンと一緒にされるのが嫌で、彼を応援できなくなってしまいました……」(ファンの女性・Bさん)
サッカーや野球など他のスポーツとは違って、フィギュアは演劇を見るような、静粛な雰囲気で行われる。その中で、着ぐるみやうちわを使って応援すると、選手側からも目につくので、選手の集中力を削ぐおそれがある。
厚かましい年配女性、評論家気取りなファン
非常識な行動は若い人だけではなく、年配女性たちの厚かましさも目にあまる。
「'15年に行われた中国大会では、選手たちが宿泊しているホテルのロビーに大勢の出待ちが。ペアの川口悠子選手が試合を終えて午後11時過ぎに戻ってくると、40代〜50代のファンが10人くらいで取り囲んでサインを要求していました。疲れていたようで、さすがに少し嫌そうでしたね」(前出・Bさん)
ファン歴が長いというだけで評論家気取りの人も。
「昨年12月の全日本選手権で、試合中に年配の方が一緒に来ていた人に技術解説をしていました。確かに詳しいんですが、演技中もずっとしゃべりっぱなしで……。ペアで高橋成美選手が新しく柴田嶺選手と組んだことについて“なんで柴田なんかと組むのよ”と言っていたのは、解説じゃなくて悪口ですよね」(ファンの女性・Cさん)
巧妙な手口を使う悪質なファンもいる。
「昨年のスケートカナダでは、観客席が関係者エリアと隣接していたのですが、境界線を乗り越えて関係者エリアに侵入。選手ひとりひとりとハグや握手をしている人がいました。堂々としていて、あたかも関係者のように振る舞うんです。羽生選手は気がついてスルーしていましたけどね」(前出・Cさん)
羽生選手の活躍でフィギュアスケート人気が高まったころから、ファンの質が変わってきたらしい。
「髙橋大輔さんの前からフィギュアを観戦していた古くからのファンは、羽生選手のころから見るようになった“新参者”のマナーの悪さにイライラしていますよ。最近では自分で持ち込んだ花束を投げ入れる人がいます。会場で買う専用の花はラッピングされていますが、そうでないものは花びらが散って片づけに時間がかかります。進行が遅れて選手の迷惑になるんです」(ファンの女性・Dさん)
長年フィギュアの取材をしてきたスポーツライターのEさんも、羽生の活躍からファンの応援が変わったと話す。
「彼がソチ五輪でメダルをとって人気が爆発してから、たくさんの花束が飛ぶようになったんです。リンクサイドでパソコンで作業していると、届かなかった花束が私のパソコンにぶつかって水滴が画面にかかることもありますよ」
海外で図々しいファンから暴言を吐かれた経験もある。
「昨年フランスで行われたグランプリファイナルでは、報道陣の席と観客席が同じ高さでした。いちばん前の席に座っていた40代〜50代の日本人3人組のファンが近寄ってきて“私たちは高いお金を払ってるんだから、どきなさいよ”と言ってきました。選手に近づきたいのはわかりますが、私たちも仕事で来ているんですからね……。クレームをつけてくるのは、いつも3人〜4人組のおばさんグループです」(前出・Eさん)
ファンの声援に元フィギュアスケーターは
元フィギュア選手で、現在はプロの振付師として活躍する村主章枝さんは、ファンの声援はうれしかったという。
「ジャンプやスピンのときに拍手をしていただくのはすごく励みになります。意外と声は聞こえているんですよ」
ただし、タイミングによっては逆効果に。彼女自身も、緊張が途切れた経験がある。
「これ、言っていいのかな……(笑)。ソルトレークシティ五輪のフリーでポジションに着く前に集中していたら“光を放て、すぐりー!!”という声が聞こえて、緊張の糸がプツッと切れました。それが、松岡修造さんだったんです(笑)」(前出・村主さん、以下同)
応援を力に変えるには、選手の心構えも大切だ。
「石を投げられようと、罵声を浴びせられようと、選手は動揺せずに最高の演技を行わなければなりません。精神力を鍛えておくのが選手の務めです」
ファンの側は、最低限のマナーを守るのが務め。
「選手にとって出だしは肝心。名前を呼ばれてから30秒以内にスタート位置につかなければ減点、60秒を超えると棄権扱いになります。
名前がコールされてから滑り出す前の応援は、特に気を遣っていただけたらと思いますね」
来年の平昌オリンピックでは、マナーを心得た応援で、金メダルを目指す選手を後押ししたい!