寝ても疲れが取れない。便秘ぎみで、いつもイライラ。外出するのもおっくうになり、引きこもりがち……。冬に起こるさまざまな不調。その原因は自律神経の乱れにあるかも!?
「季節の変化による自律神経の乱れが、さまざまな不調を引き起こしています。自律神経というとメンタル面への悪影響だと思われがちですが、身体にも症状が現れるのです」
と話すのは、自然治癒力を引き出す治療がモットーの小林暁子先生(「小林メディカルクリニック東京」院長)。
昔の人は、季節の変化に合わせて自律神経の調整が自然とうまくできていた。
「現代人はエアコンや照明機器の発達により、気温や太陽の動きに応じて自律神経を調整する機能が減退しています。さらにスマホやネットを寝る直前まで見続けていませんか? 24時間、“情報”という刺激を受け続けていると、脳が休まることはありません。オン・オフの切り替えがない生活が自律神経のバランスを崩してしまっているのです」(小林先生、以下同)
これにより、夏バテのようなだるさや、やる気のなさを冬にも感じてしまう“冬バテ”の人が増えているという。
「夏バテは“暑さ”が明らかに身体を消耗させますが、冬バテは自律神経の対応力が問われる。まさに現代らしい症状といえますね」
自律神経は、環境に応じて揺れ動くのが当たり前。
「重要なのは“適正なところに戻す力”を養うこと。日々の習慣を少し変えれば、自律神経の揺れを調整できます」
でも、自律神経のバランスをよくする”というと、なんだか大変そうな気が。
「そんなことはありません。改善法をひと言でいえば、“しっかり睡眠をとって適正な時間に起床して活動する”だけ。自然の流れに逆らわない生活をしていれば、自律神経はととのっていくものなんです」
だが、今の生活リズムをガラリと変えるのはむずかしいもの。そこで、今回は今日からすぐ取り入れられる簡単なメソッドをご紹介。
「“質のいい睡眠作り”“身体が回復しやすい生活を送る”。この2つのポイントを意識するだけでいいんです」
遮光カーテンをつけず朝日で目覚める
寝室のカーテンは適度に日差しを感じるものにして、朝日を浴びる習慣を。朝起きたとき朝日を浴びると、体内時計がリセットされ、交感神経が優位になり、脳も「起きた!」ことを認識。脳内物質“セロトニン”もたっぷりと分泌され、さわやかな気分とやる気をもたらす。
朝食をとって副交感神経を上げる
朝、目覚めると交感神経が優位になっているので、副交感神経を朝のうちにどこまで上げておけるかが勝負。朝食はそのカギとなる。まず、食前に1杯の水を飲んで胃や腸の動きを促す。そして、よくかんでゆっくり食べることで、副交感神経を上げる。
1つの大きなストレスをたくさんの小さなストレスに変える
ストレスは自律神経を乱す大きな原因だがゼロにはならないもの。そこで大きなストレスを分割して、“たいしたことない”と自分に思い込ませる。
「大きなストレスが姑なら、彼女をパフェにたとえてみて。トッピングのフルーツは彼女の苦手な部分。“嫌みは聞き流せば食べられるな”と受け入れられることを探していくのです」
おしゃべりは最高のリラクゼーション
女性はコミュニケーション脳が発達しているため、おしゃべりすることで自然とストレス解消ができる。また人は楽しいことをしていると副交感神経が優位になり、気持ちも身体も修復する機能が働く。「今度、友人とこんなお店でランチしよう」と考えるだけでも効果あり。
意外にしてない!? だるさを感じたら深呼吸
口だけでハッハッと息する浅い呼吸では身体の緊張はほぐれない。イライラしていたり、身体が重いと感じたら、深呼吸で副交感神経を活性化して身体をゆるめるクセをつけよう。やり方は、まず息を吐ききること。きちんと吐けば、自然とたっぷりの空気を吸い込める。
外出時はサングラスを持ち歩く
紫外線を浴びすぎると、体内で活性酸素が生じ、疲れがたまって自律神経を乱す原因に。長時間、外に座っていると身体が疲れたように感じるのがこの現象。外出時はスキンケアも兼ねて日焼け止めを塗るのはもちろん、さらにサングラスをかけて目から入る紫外線もカットしよう。
葉のゆらめきなど、自然の音に耳を傾ける
小鳥のさえずり、木々の揺れる音、風が吹く音……。自然の音には“ゆらぎ”という現象があり、耳をすませるだけで疲労回復効果があるという。「近くに自然がなければ、街の音に耳を傾けるだけでもOK。副交感神経が活性化され、リラクゼーション効果が期待できます」
食物繊維を意識的にたっぷりとる
“便秘=自律神経の乱れ”といえるほど、自律神経と腸は密接な関係にある。「便秘解消には食物繊維が必要不可欠。納豆のトッピングに食物繊維が豊富な海藻類をのせる、白米に雑穀米を加えて炊くなど、いつもの食事にちょいプラスする意識をもちましょう」
鶏肉料理を食べて脳の神経伝達物質を刺激
副交感神経の働きだけでは身体を十分に回復できない。そこで週1回以上、疲労回復効果のあるイミダペプチドを多く含む鶏肉(特に胸肉が豊富)を食べよう。身体のメンテナンスを促進してくれる。緊張状態が続くことの多いスポーツ選手にも愛食者が多い。
間接照明で身体を夜モードに演出
朝は自然の日差しで交感神経を高めるが、夜は身体に「そろそろ休みますよ」と信号を送って副交感神経を活性化させよう。寝る前に過ごす部屋の照明は強い光のものは避けて、白熱灯タイプの間接照明に切り替えて。昼間はアクセル、夜はブレーキという流れを身体に覚えさせよう。
湯の温度は39~40度入浴は“ぬるめでゆっくり”
お風呂に入ってリラックスモードになろうとしても、肌にじりじりくる高温では逆に身体が活動モードに。適温はじんわり温かさを感じる40度前後。水などを飲みながら湯船に浸かり、10~15分ほど入浴しよう。浴室の照明を落とすと、効果がより高まる。
下半身の血流をよくしてぐっすり睡眠
入浴後、あお向けに寝てひざを立て、左右にゆっくりゆらして股関節をほぐそう。下半身の血流がよくなり、冷えの改善につながる。さらに腰まわりのリンパがゆるめられ、寝つきもよくなる。リラックス効果もあり、副交感神経も活性化される。入浴中に下半身をソフトにもみほぐすのもおすすめ。
寝る前1時間はスマホもテレビも見ない
スマホやテレビなどブルーライト越しの情報は脳が覚醒して、交感神経が活性化。このまま眠りにつくと、身体は寝ていても脳は活動しているというアベコベの状態に。睡眠時間は十分でも身体のだるさは取れない。寝る1時間前を目安にスマホ&テレビはオフに。
布団から片方の手のひらを出して就寝
寒い季節は顔以外を布団にすっぽりおさめて寝たいものだが、それは間違い! 手のひらが温まるとだんだん体温が高くなり、交感神経が優位に。結果、眠りが浅くなってしまう。布団からどちらかの手のひらを出して、足元はしっかり温めよう。
少し固めのマットレスで寝返りしやすく
就寝中に気をつけなければいけないのは、寝返りのしやすさ。身体が硬く縮こまると、寝ているのに緊張状態となって交感神経が高まってしまう。少しだけ固めの枕とマットレスを使い、ゆったりとしたスペースを確保して。寝返りを打ちやすい環境が深い睡眠につながる。
<監修>
小林暁子先生◎「小林メディカルクリニック東京」院長。患者の心に寄り添い、自然治癒力を引き出す治療がモットー。『2週間で腸が若返る! 美腸ダイエット』(世界文化社刊)など著書多数