寝床に入ったらほどなくストンと眠りに落ちて、ひと晩中ぐっすり。朝はすっきり目が覚め、日中は元気ハツラツ! そんな快眠生活を送るためには、まず「眠る力」を身につけることが重要と指摘するのは、リハビリテーションの専門職である作業療法士として患者に睡眠指導も行う菅原洋平さん。
「“眠る力”は、いろいろな要素から成り立ちます。まず大切なのは、生体リズムを整えること。生体リズムには“メラトニンリズム”“睡眠・覚醒リズム”“深部体温リズム”の3つがあり、それぞれ連動しています」
「メラトニンリズム」を整える
メラトニンとは、脳の中にある睡眠を促すホルモンのこと。朝、脳が太陽の光を感知するとメラトニンの分泌量はグッと減ってすっきり目覚める。また反対に夜、暗くなると増えてきて眠くなり、眠って3時間後にピークを迎えてまた減っていく。
「朝、目覚めたらすぐにカーテンを開け光を浴びましょう。脳が朝を感知する光の量は、1500~2500ルクス。窓から1メートル以内に入る光の量は3000~5000ルクスになります。逆に、夜はできるだけ暗くして過ごす。これだけでもメラトニンリズムは整えられます」(菅原さん、以下同)
家族の弁当作りなどで朝、まだ暗いうちに起きなければならない場合は、「起きたらすぐにライトをつけて、その真下に立ってしばらく光を浴びるだけでも効果は得られますよ」
「睡眠・覚醒リズム」を把握する
睡眠・覚醒リズムとは、脳にたまる睡眠物質がつくるリズム。脳は睡眠物質が充満すると眠気を出し、脳自体を眠らせて睡眠物質を分解する。
「眠気が出る時間帯は1日に2回あります。起床から8時間後と22時間後です」
ランチのあとは眠くなりがちだが、それはお腹がいっぱいになったせいばかりではなく、脳のメカニズムの影響でもあるのだ。
「起床が6時の人なら、まず必ず眠くなるのが8時間後の午後2時。でも、ここでウトウトすると夜の眠りに差し支え、睡眠・覚醒リズムは乱れがちになります」
そこで菅原さんは、眠気が出る前の仮眠をすすめる。
「起床から6~7時間後、6時起床の人ならお昼休みの時間帯にちょっと目を閉じる。必ずしも実際に眠る必要はありません。目から入ってくる情報は非常に多いので、目を閉じているだけでも脳は休息できます」
ちなみに、休日に昼過ぎまで寝ているなど“寝だめ”をするのも、睡眠・覚醒リズムを乱す要因に。『スリープクリニック銀座』の院長で睡眠障害に詳しい渋井佳代先生は、
「睡眠時間帯の普段との差は前後1時間以内にとどめ、できれば早寝をして調整するほうがいい」
「深部体温リズム」を味方につける
3つのリズムのうち睡眠の質にいちばん影響が大きいのが、深部体温リズムだ。深部体温とは、内臓の温度のこと。1日のうちで変動し、高い温度から急激に下がるときに睡眠は深くなる。
「最も上がるのは、起床から11時間後。深部体温が高くなり元気が出る夕方に身体を動かしましょう。そうして深部体温を上げておき、急激に下がるタイミングで寝床に入れば、その晩の睡眠は充実します」
眠り始めの90分に最も多く、3時間まで分泌される成長ホルモンも、睡眠が深いほど増える。
「成長ホルモンは、睡眠中の身体を回復させる役割があります。分泌量が多いほど、ぐっすり眠って翌朝パッと起きられるんですよ」