アメリカ演劇界のアカデミー賞であるトニー賞で10部門を受賞するなど、世界五大陸で上演されている大ヒットミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が日本人キャストで、今夏上演決定! 吉田は、主人公・ビリーの父親役を演じる。
「歌やタップの練習が苦手で、劇団四季をたった半年で逃げ出したんですよ。だからミュージカルに出演するのは、みっちり訓練を積んできたみなさんに申し訳ない気がして、アウェー感を感じてしまいます(笑)」
「稽古が嫌いな人間なんです(笑)」
「この舞台版を見たときに、久しぶりに芝居っていいなって思ったんです。イギリスというお国柄というか、さすがシェークスピアを生んだ国。出てくる人がみんな主張を持っていて、それをすごい勢いで言いあうんですよ。しかも、その勢いが歌になり、踊りになるというまさに理想的なミュージカル。俳優にとってはハードルの高い作品ですが、そこが魅力でもありますよね」
‘15年に上演された『デスノートTHE MUSICAL』に続き、ミュージカル挑戦は2度目。
「歌うのは好きだけど、舞台で歌うのは難しいですね。ミュージカルは歌の力で一気にお客さんの気持ちを持っていけるけど、逆に音が少しズレるだけでもお客さんは乗ってこないから。だったら稽古しろよって話だけど、稽古が嫌いな人間なんで(笑)」
1年間の長いレッスン式オーディションを勝ち抜いたビリー役の男の子たちの印象は?
「今回ビリー役を演じる男の子たちはすごいなって思いますよ。10代前半で自分のやりたいことを見つけて。僕が10代のころなんて、本当に何も考えてなかったですから(笑)」
今や名バイプレーヤーとして、映画やドラマに引っ張りダコだが、転機となった作品は?
「舞台にはずっと出してもらっていたけど、決定的に認められたと思ったのは、蜷川幸雄さん演出の主演舞台『タイタス・アンドロニカス』。イギリスのシアターで公演をして、スタンディングオベーションをいただいたときに、“大丈夫かもしれない、俺”って思えたんです。そう思えるまでに20年以上かかりましたね」
「役者でダメなら野垂れ死んでもいいや、って」
そこまで役者を続けられた理由を聞くと、演劇出身ならではの答えが。
「小劇場でやっていた人間って、基本的に食えなくてもいいという考えがあるんです。むしろ、演技だけで食べていけるほうが特別みたいな。年に3~4本舞台に出られるだけで幸せって思っていたので、日々しのいでいければいいやって感じでした」
とはいえ、昔から自分の演技に自信はあったと続ける。
「漠然とだけど、自分は優れた役者だという自信があった。理由はわからないけど、演技だけは不思議とそう思えたんです。若いころは何がいいかもわからないまま演じていて、役者でダメなら野垂れ死にしてもいいやって。勢いですね(笑)」
プライベートでも、勢いで決めちゃうタイプですか?
「去年、今の奥さんと結婚したのもそうですね。交際期間が2か月で結婚したから、勢いしかないですよ(笑)。僕は物事をハッキリ言う女性が好きなんですけど、奥さんはまさにそのタイプです」
インタビュー中も言葉が次から次へと飛び出すが、壁にぶつかったときの対処法もしゃべることと笑う。
「めちゃくちゃしゃべりますね。今なら奥さん相手にしゃべっているから、にぎやかな家庭ですよ(笑)。些細(ささい)なことでも伝えないと理解しあえないと思っているので、気になったことは何でも伝えます。例えば、みそ汁のだしはしっかり取れとか(笑)。特に夫婦生活がまだ1年目でお互いのこと知らないことも多いですしね」
そんな奥さんと今年やりたいことを聞くと―。
「奥さんは海外旅行が好きなんですけど、僕が飛行機嫌いなんですよね(笑)。今年は、このミュージカルのほか、蜷川幸雄さんの跡を引き継いだ『彩の国シェイクスピア・シリーズ』の芸術監督の舞台もあるので時間がないですけど、時間があえば連れていってあげたいと思います」
<公演情報>
ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
〈プレビュー公演〉7月19日~7月23日
〈東京公演〉7月25日~10月1日
3月11日チケット一般発売。