テレビや街でよく見かける、バブリーな言葉やアイテム。 まさか毎日がお祭り騒ぎだったバブルが帰ってきた!? あの時代って、泡のように消えちゃったけど、 実はみんな輝いていたよね!
バブル時代を謳歌(おうか)しまくったお立ち台の女王・荒木師匠に対して、バブルの恩恵をまったく受けていないという辛酸なめ子さん。同世代なのにこんなに違うの!? “格差バブル対談”、スタートです。
辛酸なめ子(以下、辛酸)「私と荒木師匠って、だいたい同じくらいの年齢ですかね?」
荒木師匠(以下、荒木)「年齢はヒ・ミ・ツ。でも私がいちばん遊んでいたのは’90年代前半ぐらい。そこがバブルの終わりだから、辛酸さんは微妙にズレてるんじゃない?」
辛酸「そうなんです。中学生ぐらいがバブル期で、“派手な大人たちがいるな~”と思っていました」
荒木「私もバブル後期で、学生時代は“ワンレン”のお姉さまたちを見て育った感じ」
辛酸「バブルの中でも、前期とか、後期とかって区分けがあるんですね」
荒木「前期と後期を一緒にしてほしくないわ! ’80年代バブルは前期、’90年代バブルは後期。ちゃんと覚えてね! バブルが流行っているせいで、私もバブル関連の仕事が多いんだけど、いまブレイク中の平野ノラさんは、’80年代のバブル、私は’90年代のバブルだから!」
辛酸「その違いって何ですか?」
荒木「わかりやすいところで言えば、髪型とファッション。’80年代は、ワンレン(段の入ってないロングヘア)に肩パッド入りのスーツ。ブランドは『ピンキー&ダイアン』とか『ジュンコシマダ』が流行ってたわね。あと、みんなが“今井美樹になりたい”って思っていた時代。ディスコは『マハラジャ』がブームだったわね」
辛酸「そのころ私は中学生で、確かに今井美樹に憧れてソバージュにしました」
荒木「’90年代はソバージュヘアにトサカ前髪で、水着みたいな蛍光色のボディコン流行り。ディスコはあの一世を風靡(ふうび)した『ジュリアナ東京』よ~! 髪型やファッションだけでなく、メイクも違うわ。’80年はリップの色は赤、’90年代は青みがかったシャネルピンクよ」
辛酸「平野ノラさん以外にもバブル芸人が出てきていますけど、バブルの時代考証って合ってるんですか?」
荒木「もうメチャクチャ! みんな若い子たちで見聞きした情報だけでやってるから、前期と後期がゴッチャ。でも“わかってないな~”って、笑っちゃうんだけど」
辛酸「若い子たちにとっては想像もつかない世界だと思いますから」
荒木「私は、逆に今の若い子たちにビックリ! すごい美人でも、デートは彼氏んちで鍋とかなんでしょ?」
空中で口説かれる女になりなさい!
辛酸「バブル時代は、何をしていたんですか?」
荒木「美人なら、金持ちのオジサンと六本木でヘリに乗って口説かれてるわね! 彼氏の家で鍋なんて、ブスがやること。美人のムダ遣いよ。もっと美人にふさわしい過ごし方しなきゃダメ」
辛酸「今は金持ちの男性が少ないので……」
荒木「そして、今の若い女の子が狙うオトコって、同世代で年収もそこそこでいいんだって。私は、金持ちでエスコートもパリッとできるオジサマがカッコいいと思ってたな~。結婚するなら、年収2000万円以上じゃなきゃ!」
辛酸「文科官僚の天下りでも年収1000万円なのに?」
荒木「じ……地味な発想ね(汗)。バブルのオンナは、オトコからお金をいくら引っ張れるかが勝負。バブル世代は、美人と金持ちがヒエラルキーのてっぺんだったのよ」
辛酸「今までオトコからもらったプレゼントの中でどれがいちばん高価でした?」
荒木「高いかどうかわかんないけど、インパクトがあったのは“つがいのクジャク”かなー。当時、金持ちオトコの間で女性にペットを買ってあげるのが流行ってたの。みんなプライド高いから、周囲に負けたくないって、どんどん高額で珍しい動物になっていくわけ。フェレットとかワラビーとかもらってた人いるわよ。でも、それはマンションじゃ飼えないって!」
辛酸「今もオトコに買ってもらってるんですか?」
荒木「私の事務所の冷蔵庫は、男友達に買ってもらったわ」
辛酸「彼氏でもない友達にですか? バブル世代の方には、遠慮とか謙遜とかはないのかもしれないですね……」
荒木「オトコは、とにかく美人が好き。美人に買ってあげることで、オトコが満足するんだから! 美人に、オトコは尽くしたくなるものなのよ。ここからは恋愛指南になるけど、心理的な位置づけとして、常に女性がオトコより圧倒的に上じゃなきゃダメ。お金を出してオトコが鼻高々になるような女でなきゃ!」
辛酸「オトコは、つぎ込む金額が増えれば増えるほど、その女に夢中になっていくっていうのは聞いたことあります」
荒木「お金をかけた女は手放すのが惜しいのよ。いい女だと思うから待遇をよくするの。私なんて大したことないわよ。バブルのころはマンションとか車とか買ってもらっていた人、たくさんいたから」
バブル世代の体力、ヤバすぎます!
辛酸「やっぱり、美人でなきゃダメですか?」
荒木「美人風味にしていればいいの。オトコなんて服装やメイクで、“あれ、美人かも”って勘違いしちゃうんだから」
辛酸「バブル世代っておねだり上手ですよね? 私も洗濯機が古くなってきたから、誰かに買ってもらおうかな?」
荒木「いいんじゃない? ところで、なめ子さんが今までもらった高価なものって何?」
辛酸「ブランドものをもらったことがあります。エルメスの付箋」
荒木「付箋!? いやいや、微妙ね。ファンから高価なプレゼントをもらったこと、あるでしょ?」
辛酸「男性ファンの方から手作りのパンとか……」
荒木「ヤダー! 私なんて8万円のスープを飲むためだけに香港までオトコに連れてってもらったことがあるわよ」
辛酸「男性のおごりで?」
荒木「もちろん。旅行代もだし、現地でシャネルのバッグも買ってもらったわ」
辛酸「なんか、すごいパワフル。バブル世代の女性と飲みに行くと、とにかく長いイメージがあります。途中で帰ろうとすると、“つまらないわね!”って怒られます」
荒木「3~4軒のハシゴは当たり前よ。私も自分で体力あるな~って思うわ。この前、10時間ぶっ通しでショッピングしてたもん」
辛酸「“お立ち台でブス女を突き落としていた”という都市伝説もあながち嘘じゃない?」
荒木「そんな感じだったわね」
辛酸「あと、アッシー君、メッシー君などの便利くんは何人いました?」
荒木「入れ替わりがあったけど、常時4人くらい。テレビの録画だけをする“ビデオ君”ていうのもいたわ」
辛酸「でも彼氏じゃないんですよね? 彼らの性欲ってどうなってるんですか?」
荒木「そんなこと知らない(笑)」
辛酸「録画したビデオを渡すとき、深い関係になったりしないんですか?」
荒木「生理的にOKなら、彼氏に昇格することもあるけど」
辛酸「生理的にNGでも、ビデオ君にはなれるんですね」
荒木「だって、美人と会えるだけで彼らは幸せなんだから」
辛酸「その考え方、あまりに一方的すぎて尊敬します」
〈プロフィール〉
荒木師匠◎バブル後期、’90年代にジュリアナクイーンとして話題になった。その後、テレビなどマスコミで活躍。現在は、婚活トレーナーとして活動。
辛酸なめ子◎1974年、東京都生まれ、埼玉育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。漫画家、コラムニストとして活動。