最近耳にするNetflix(ネットフリックス)やAmazonプライムビデオなど、“好きなときにいつでも見られる”ネットテレビ=動画配信サービスを使いこなせば、レンタル返却&録画の手間も必要なし! ネットテレビに造詣の深いITジャーナリストの西田宗千佳さんに、自宅だけじゃないどこでも楽しめるネットテレビについて、いろいろ教えていただきました!

基礎編:イチからわかるネットテレビ

ネットテレビ“四天王”について比較編で詳しく紹介します

【Q1】そもそもネットテレビ(動画配信サービス)って何なの?

 ネットテレビはテレビと同じ、もしくはそれ以上のクオリティーのドラマやスポーツなどが、ネットを介して見られる動画配信サービスのこと。衛星放送の衛星のかわりにインターネットを使っているため、家庭にネット環境が整備されていれば(スマホ含む)、誰でもすぐに契約でき、パソコン、スマホ、テレビで視聴が可能となる。月額定額のサービス、番組ごとに課金するサービス、無料のものなどさまざまなタイプがある。ただし、スマホを動画視聴のメインに使うのであれば、スマホの通信量制限とは無関係のWi-Fi環境があることが望ましい。

【Q2】YouTubeなどこれまでにあったネットの動画とは何が違うの?

 YouTubeは基本的に個人が撮影した記録物や映像を流すための動画サービス。無料であるがゆえ、当然クオリティーに振れ幅がある。また、テレビ局や音楽レーベルと契約していない場合に、無断でテレビ番組やミュージックビデオをYouTube上で流すと著作権侵害となり、今なお問題となっている。その点、動画配信サービスは契約上もクリアになっており、安心したサービスが受けられる。

【Q3】見逃したテレビ番組を見ることができる『TVer(ティーバー)』って何?

 民放テレビ局が連携した動画配信サービス。番組放送から約7日間見放題で、約100番組がすべて無料で視聴できる。「例えばドラマであれば、1話2話は見たけど3話を見逃したため、以降から脱落するケースが多い。その数が次第に増えるため、徐々に視聴率は低下していく。TVerはそれを防ぐセーフティーネットとしても機能している」(西田さん)

【Q4】LINE LIVEやAbema(アベマ)TVは、Netflix、Hulu(フールー)とは違う?

 LINEが放送するLINE LIVEは、テレビを見ない10代20代に特化して発信するYouTubeのような動画配信サービス。AbemaTVはIT企業のサイバーエージェントとテレビ朝日の合弁会社という形態が示すように、ネット上にできた新しいテレビ局。Netflix や Hulu などの見放題の動画配信サービスは、ネット上にできたビデオレンタル店と考えるとわかりやすい。ビデオレンタル店ゆえNetflixやHuluといったサービスは有料となり、LINE LIVEやAbemaTVは無料となる。

【Q5】衛星放送、ケーブルテレビとは何が違う?

 衛星放送やケーブルテレビと違って、動画配信サービスには番組表はない。契約する会社によって番組の量は異なるものの、自分の好みで何千~何万という新旧の映画・ドラマ、バラエティー、ライブ映像などを好きなときに選んで見ることができる。「ネット回線があれば誰でも利用可能なので、衛星放送やケーブルテレビのように改めて設備を増設したり、工事に来てもらったりする必要はないです」(西田さん)

【Q6】テレビ画面でHulu、Netflixなどを見ることはできるの?

 スマートテレビ(直接ネットにつながるテレビ)、Playstation 3&4などがあれば、PCやスマホではなくテレビからでも視聴が可能に。とはいっても、買い替えやゲーム機を買うのは出費がかさむはず。そこでオススメしたいのがテレビのHDMI端子に差し込むだけでテレビで視聴が可能となるスティック状の機器。Amazon Fire TVは、ほとんどの動画配信サービスに対応。「スマホに映っている映像をテレビに飛ばせるChromecastもHDMI端子に差し込むだけでテレビで楽しめるようになります」(西田さん)

【Q7】動画は何度でも視聴できる?録画やダウンロードもできるの?

 契約中は何度でも視聴が可能。そのため録画はできず、見たいときに再度見るというスタンス。また、各動画配信サービスには、それぞれスマホやタブレットで見る用の専用アプリがあるため、アプリを追加(インストール)すれば、同サービス内の番組や映画などのコンテンツを自由に再生することができる。

【Q8】専用アプリがあるけど、これがあると何が違う?

 スマホやタブレットで動画を楽しむには必須。一部のサービスでは、事前に見たかった作品をダウンロード(保存)しておけば、ネットが使用できない環境下にいても視聴が可能に。一般的にスマホの通信回線・量(LTE、3Gなど)は、1か月に数ギガバイト(契約によって量は変わる)通信するとスピードが落ちるので、映画をたくさん見るとすぐに上限に達する。データ量は画質によって異なるが、スマホ向けの場合、3時間の再生で1ギガバイト。家庭の回線で通信するWi-Fi環境があれば、何時間見ても変わらない。それゆえWi-Fi環境があることが望ましい。

【Q9】ネットテレビは黒船と呼ばれているけど、何がそんなにスゴイ?

 イギリスの動画配信サービス『DAZN』は、Jリーグと10年間、最低約2100億円の放映権契約を締結。それまでスカパーが契約していた1年30億~50億円の放映権料の4倍~7倍にあたる巨額の提示は、まさに黒船来襲と呼べる衝撃度! 放映権料が莫大に上がったことで、各Jリーグチームの経済力も潤い、チーム強化などが可能に。海外の動画配信サービスが与える影響力は強大!

【Q10】海外から動画配信サービスを利用することはできる?

 残念ながら基本的に海外から利用することはできない。ただし、前述したように事前にアプリでダウンロードしているものに関しては視聴が可能。また権利処理の関係上、国によって見れる作品は異なる。料金は月額定額制の動画サービスであればどれだけ見ても、ダウンロードしても大丈夫。月額料金以外のものとして、見たい番組を番組単位で購入するPPVがあるが、そのつど金額が表示されるので見分けは簡単につく。

【Q11】ネットテレビが流行ることで既存テレビ局はどうなる?

 民放テレビ局の年間制作費が1000億円を切っている現状に対して、Netflixはドラマなどのオリジナルコンテンツにかける年間制作費だけで約60億ドル(約7000億円)という力の差がある。「国内市場だけでなく世界各国を市場にする動画配信サービスは、あらゆる国から毎月定額料金が入ってくる。資本力とマーケティングの差は歴然ですから、各国のテレビ局はニュースや生放送など、ネットテレビが手がけない部分で差別化していく必要があります」(西田さん)

【Q12】ネットテレビは番組表のようなタイムシフトはないの?

 動画サービスは好きな時間に自分で好みのコンテンツを選ぶため、番組表は一切ない。トップ画面には、「オススメ」「ドラマ」「映画」「アニメ」「バラエティー」など多岐にわたったジャンルが表示され、その中から好きなものを選ぶという仕様。NetflixやHuluはネット上にできたレンタルビデオ店なので番組表はないが、AbemaTVはネット上にできたテレビ局なので珍しく番組表が存在する。

比較編:ネットテレビ“四天王”チェック!

『Netflix』『Hulu』『Amazonプライムビデオ』『dTV』、日本国内で利用者数の多い動画配信サービス“BIG4”のストロングポイントを西田さんが解説!

【Netflix】

「全世界で7000万人の利用者を抱えるNetflixの強みは、潤沢な資金を背景に制作する圧倒的クオリティーの海外ドラマです。1970年代末のニューヨークを舞台にヒップホップの誕生を描く『ゲットダウン』、予期せず大統領になった男をキーファー・サザーランドが演じる『サバイバー』、とにかく悪い政治家しか登場しない『ハウス・オブ・カード』などなど傑作&話題作がめじろ押しです」

◎料金体系:月額ベーシック650円/スタンダード950円/プレミアム1450円(価格は税抜き)/無料期間:1か月

※料金プランは3種類ありますが、完成度が高い海外ドラマを見るなら断然画質のよいプレミアムがオススメです!

【Hulu】

「日本における事業を日本テレビが買収したことで、日テレ系の番組はほとんどそろっています。アンパンマンなどアニメも網羅していますから、お子さんを持つ家庭にもよいはず。僕は Huluと契約して以降、日テレの番組は『ザ! 鉄腕! DASH!!』以外録画したことがない。いくつかの番組を除き、ほぼHulu内で見られるようになったので録画しなくなりました(笑)」

◎料金体系:月額933円(税抜き)/無料期間:2週間

※Huluはほかの動画配信サービスと違って、無料期間が2週間と若干短めです。登録した日を忘れないように。

【Amazonプライムビデオ】

日本の古いドラマや映画が豊富で、日本人好みのコンテンツを数多くそろえているオールラウンダー。Amazonは自社サイトでDVD販売を行っているので、ユーザーの趣味・嗜好をビッグデータとして蓄積している。それに基づいてラインナップを用意するのでハズレが少ない。動画配信サービスの入門としては、Amazonプライムビデオが最適と言えるでしょう」

◎料金体系:年会費3900円(税込み)/無料期間:30日間

※プライムビデオは、音楽聴き放題などAmazonプライム会員の数あるサービスのうちのひとつということも魅力です。

【dTV】

「dTV は国内最大の500万人近い会員数を誇り、NTTドコモとエイベックスが提供しています。エイベックスはアイドルや韓流に強く、国内ドラマも豊富。ただし、ジャニーズ系は期待できない(笑)。“選ぶのに迷う”という利用者を想定して、トップ画面はオススメの動画が表示され続ける仕組みになっているため、面白そうな動画を見つけやすいことも利点です」

◎料金体系:月額500円(税抜き)/無料期間:初回31日間

※ドコモの携帯電話との割引、また店頭で対人での説明を受けられるためドコモユーザーにとっては割安&安心感が高いはず。

<教えてくれたひと>
西田宗千佳(にしだ・むねちか)さん◎1971年、福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野を中心に活躍するフリージャーナリスト。“電気かデータが流れるもの全般”に明るい第一人者としてさまざまな媒体で活躍中。著書『ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える』(講談社現代新書)では、詳しく動画配信サービスについて触れている