勉強や仕事はできても、婚活だけはうまくいかないのはなぜ?
勉強や仕事は得意だけれど、婚活だけはうまくいかない。多くの婚活女子から、こんな嘆きを聞いてきました。
なぜ婚活だけがうまくいかないのか。それは、みなさんが「男性と女性の違い」を理解していないからだと思うのです。受験や仕事は、男女で選考基準が一緒です。たとえば、受験では高得点を取れば合格に近づきますし、営業職であれば、より多くの売り上げを上げた人が、会社に評価されることになります。
しかし、婚活で自分を評価するのは異性であり、基準は不明確です。婚活における男女の物の見方が違うことを一番よく表しているのが、『CLASSY.』(光文社)に連載中の「結婚するまで 結婚してから」だと思います。これは一般人カップルが出会いから結婚、現在の生活を語る企画ですが、女性と男性の物の見方に違いがあることを示しています。
まず、女性は男性との出会いが「人数合わせで行った合コン」「バーで酔っ払いにからまれているときに助けてもらった」と偶然からもたらされる“運命”であることを強調します。しかし、一方の男性は「カワイイ」「スタイルが良い」というふうに、外見の印象について話しています。男女はこれだけ違うわけですから、男性の視点を理解しなければ、どんなに努力しても実らないのです。
婚活がうまくいかないもう一つの理由、それは女性側の「意思表示が下手」なこともあると思います。たとえば累計260万部を売り上げ、ドラマ化もされた東村アキコの大ヒット漫画『東京タラレバ娘』(講談社)に、その傾向は顕著に見られます。脚本家になる夢に向かってまい進してきた倫子は、気づけば33歳独身彼氏なし。高校時代からの友人、香と小雪と結婚したいと願いつつ、右往左往するストーリーです。
決まった彼氏こそいないものの、倫子は独身男性と定期的に知り合います。たとえば、映画バーを経営する浦田。ルックスもセックスも良く、優しくて料理上手。けれど、いつも映画の話ばかりして倫子を疲れさせます。香と小雪は「我慢しろ」と倫子に迫りますし、倫子自身も「男と付き合うってこういう感じ」「気い遣って」「クソつまんねえ話でもうんうん楽しそうに聞いてあげて」とわかっているものの、結局、別れを選びます。
倫子に足りなかったものとは
合わない人と、無理して一緒にいる必要はありません。けれど、倫子が相手のことを知ろうとしていないこと、意思表示をしようとしていないことが気になります。浦田が映画の話ばかりするのは、倫子は「映画が好き」と話したこと、倫子の職業が脚本家であることから「良かれ」と思っている可能性は十分あります。
なので、「映画を見るのではなく、違うことをしたい」と言うか「こういうストーリーの映画が見たい」と逆にリクエストしない限り、倫子の“我慢”は続きます(余談ですが、倫子は脚本家なわけですから、貪欲に映画の知識を吸収して、自分の仕事の“メリット”につなげるくらいのしたたかさが欲しいものです)。
浦田は「二人が付き合った記念」として、自分の好きな映画を倫子にプレゼントし、倫子は観たくもないのに「超楽しみ」と嘘をつきます。オトコの話を否定しないというのは、日本に伝わるモテテクですが、心にもないことを言うから“我慢”する関係を打破できないことに気付いていません。
映画に限らず、男性と趣味が完全に一致することはほとんどないと思いますし、一緒である必要もないと私は思います。が、会話はしてほしいのです。それは相手に媚びるためではなく、みなさん自身のためです。
シカゴ大学認知社会神経科学センターのステファニー・カシオッポ博士によると、異性に出会うと脳の角界と呼ばれる部分が活発に動いて、出会って0.5秒で相手を恋愛相手としてふさわしいか見極めているそうです。恋人候補として脳がOKを出すと、男性はさらに女性の外見の細部をチェックし、女性は男性の行動をチェックして記憶にとどめるそうです。
ということは、男性と会話して、女性側の記憶に残るようなエピソードを男性から引き出せれば、恋愛が生まれやすくなるということですから、みなさんがトクをするのです。
婚活女子のみなさんとメールのやりとりをしていると、婚活のコミュニケーションを「男性を喜ばせること」であると信じている人の多さに気付きます。そんな表面的なことよりも、みなさんにトライしてみてほしいのは、身近な人と会話をしてよく話を聞くこと、自分のメンタルの弱点を知ることです。
残念ながら、男性はスーパーマンではありませんので、結婚したからといって幸せを保証してくれる存在ではありません。幸せになるために結婚するのではなく、誰と結婚しても幸せになれる。みなさんには、そんな自立した女性になってほしいと思います。
8回にわたった連載は、今回が最終回となります。みなさんの婚活の成功をお祈りして、お別れの挨拶とさせていだたきます。ありがとうございました。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。2016年8月に男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)を上梓。