出演者に“当て書き”、倉本ワールド炸裂の昼ドラ
テレビ朝日が昼の時間帯に新設した“帯ドラマ劇場”の第1弾『やすらぎの郷』(月〜金曜昼12時30分〜)。脚本は、『北の国から』シリーズはじめ、数々の名作を世に送り出してきた倉本聰が担当する。
物語の舞台は、テレビ全盛期に貢献したスター、業界人だけが入居を許される老人ホーム。そこで起きる問題や悲喜こもごもを、主人公のシナリオライターの目線で描いていく。
82歳の倉本は、かねてから、高齢者向けの番組が少ないと感じていた。
「ゴールデンに対抗して“シルバータイム”というものができないかと思い、今回の企画を立てました。若者向けになってしまったテレビに“シルバー革命”を起こせたら」と、語る。
一昨年夏から準備が進められ、シルバー世代向けのドラマ枠が誕生した。
主演の石坂浩二はじめ、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス、山本圭ら、豪華な顔ぶれがそろった。
「キャスティングは非常に楽でしたね。脚本がない段階でも“倉本先生の企画”とお伝えすると、メインキャストの方々に快諾していただけました」
と、中込卓也プロデューサー。今作は役を演じる俳優をあらかじめ決めた後で脚本を書く“当て書き”スタイル。昔から顔なじみの役者に倉本は、
「(出演者の)欠点も弱みもほとんどつかんでおりますので(笑)、そこをくすぐってあげると非常に面白いものになるんじゃないかな、と楽しみながら書かせていただきました」
元夫婦の石坂と浅丘の抱擁シーンなども登場!
倉本作品に出演できる喜びを胸に、楽しく撮影に臨んでいる一方で、膨大な長ゼリフと格闘している出演者は、「毎日、脚本を覚えることに追われて大変」(浅丘)、「膨大なセリフと長いシーンで緊張が続く日もあります。スタミナとの闘い(笑)」(八千草)、「みなさん苦しいとおっしゃっていますが、本当は私がいちばん苦しい!(笑)」(石坂)。
帯ドラマの撮影は過酷と言われるが?
「撮影は出演者の健康を第一に考え、ゆったりと撮っています。撮影開始は昨年の10月。朝10時にスタートし、18時には終えています。週に2日は休日を設け、撮影現場には看護師が待機。風邪ぎみの方がいれば、スケジュール変更します」(中込P、以下同)
終活? 青春? 当てはめる漢字は?
帯ドラマ初挑戦の倉本と帯ドラマ初出演の役者たちが織りなす倉本ワールドを半年間にわたって楽しめる。
物語では遺言、遺産相続、闘病など、中高年層が生きるうえで直面する問題などが描かれている。
「辛気くさい終活でなく、基本的にはお昼にご覧になるのにぴったりの明るいコメディーです。なぜなら出演者のみなさんは、ある種の青春ドラマを演じておられるから。死に向かっているのではなく、生きている時間を大切にしている人物を演じているのです。ゲラゲラ笑いながら、時には非常に深い話に涙しながらお楽しみいただけます」
かつての大女優の“お嬢”こと冴子を演じる浅丘の衣装も、ちょっとすごい。
「すべてオートクチュールで、しかもシーンごとに違うものを着ています。これは“衣装もあわせて作品をお楽しみいただきたい”という浅丘さんからのご提案なんです」
老人ホーム入居者が往年のスターという豪華さだけでなく、ゲストとしても驚くような俳優が続々と登場するので、見逃せない。
「コンシェルジュ役の常盤(貴子)さんやバーテンダーの松岡(茉優)さんほか、若手実力派の方々も通常では考えられないような役で登場しています」
ドラマのキャッチコピーは、“さいごは笑っていきましょう”──。
「“さいご”に最後、最期、“いき”に生き、逝き、行きと、どの漢字を当てはめるかは、みなさんにお任せします。いずれにしても“笑って”いただけたら」
中島みゆきが歌う主題歌『慕情』には、今作の結末のヒントが隠されているそうなので、注目を!