「本人が逃げ切れると踏んでいるかわかりませんが、手をつけられないほど子どもっぽくなっています。官邸サイドも手を焼いているようです」
と、ジャーナリストの大谷昭宏氏は明かす。
本人とは安倍晋三首相(62)のこと。大阪市の学校法人『森友学園』に約8億円引きで国有地が払い下げられていた問題は、籠池泰典前理事長(64)の証人喚問によって安倍首相夫妻に疑惑の目が向けられたままだ。
籠池氏を告発しろ
100万円を寄付していないのは本当か。昭恵夫人(54)が講演料10万円を受け取っていないのは確かか。夫人付の政府職員が籠池氏に送信したファクス回答が明るみに出たことで、国有地払い下げに関与していないとは言えなくなったのではないか─。
首相は、もし夫妻の関与があれば辞任し、国会議員も辞職すると約束している。
野党は「昭恵夫人を国会の証人喚問に呼ぶべきだ」と主張し、安倍首相は「その必要はない」と繰り返して議論は平行線をたどってきた。国会は政府・与党が数の力で牛耳っており、頼みの野党は疑惑追及の攻め手にとぼしい。
安倍首相の逃げ切りか─。
そんなムードが漂い始めてきた中、この膠着状態を断ち切ったのは安倍首相だった。
「首相が“籠池氏を偽証罪で告発しろ”と騒ぎ始め、官邸サイドも自民党もストップをかけられない。10年前に政権を放り出したときと同じで、みんなで寄ってたかって……と被害妄想に陥っているようです」(前出の大谷氏)
首相のスポークスマンである菅義偉官房長官は3月28日、参院決算委員会で籠池氏を告発する可能性について「(証言が)事実と違っていたらそうなる」と答弁。自民党総裁特別補佐の西村康稔衆院議員も同日、偽証の疑いがあるとして「国政調査権の発動も視野に入れる」と同調した。政府、党を挙げて籠池氏を追い込みにかかっている。
「籠池氏を証人喚問したのは衆参両院の予算委員会です。従って偽証罪で告発するのは国会。それなのに官邸と党が息巻いているんです」
と大谷氏は指摘する。
議院証言法8条2項は、証人を偽証罪で告発するには委員会か両院合同審査会の出席委員の3分の2以上の賛成を必要としている。しかし、罰則が懲役3か月以上10年以下と重いこともあり、全会一致を慣例としてきた。
「慣例は絶対ではないとして3分の2の賛成で告発を押し切ろうとしている。衆院予算委は与党で3分の2以上の議席を持っている。少なくとも、安倍晋三記念小学校の名前で寄付を集めていた期間の長さと、安倍首相から寄付されたとする100万円の振り込み用紙の記入者については偽証に問えると自信を持っている。あまりにネタが小さくて驚いた」(全国紙記者)
大阪地検特捜部は籠池氏が国の補助金を不正受給していたとする補助金適正化法違反容疑の告発状を受理。大阪府は3月31日、系列の塚本幼稚園に立ち入り調査するなど“籠池包囲網”は狭まりつつある。
前出の大谷氏は「首相の籠池氏憎しの暴走は、皮肉にも自分の首を絞めることにつながりかねない」と話す。
「偽証罪の告発を受ければ、検察は昭恵夫人から直接話を聞かざるをえなくなります。“フェイスブックに書いたとおりです”は通用しません。起訴されると、裁判で最大の証人になるのも昭恵夫人。国会の証人喚問を頑なに拒みながら、裁判所の証言台に立つことになるんです」(大谷氏)
昭恵夫人の嫁姑問題
森永製菓の創業家の社長令嬢である昭恵夫人は、育ちのよさが自由気ままな性格に表れている。フェイスブックの巧妙な文章は添削を受けたのかもしれないが、裁判の証言は籠池氏側の反対尋問もあり想定問答どおりにはいかない。自由気ままなうっかり発言は首を絞めることになる。
「安倍首相は安保法制、特定秘密保護法と国論を割る大きな政策を強引に通してきました。そして裸の王様になりました。自民党の1強体制で党内に敵はいませんからね。周囲は、もみ手、もみ手のイエスマンばかり。首相の怒りを忖度してくれることはあっても、異を唱える人はいないんでしょう」(大谷氏)
母・洋子さんと昭恵夫人の“嫁姑”の確執も囁かれている。一部で洋子さんが昭恵夫人を面罵したと報じられた。
3月27日の参院予算委で、民進党・桜井充議員からこの件を突っ込まれた安倍首相は「桜井先生とも思えない週刊誌の記事の紹介ですが、昨晩も、私と妻と母と兄夫婦と兄の長男と楽しく会話をさせていただきました。そういうご懸念は一切ないということを申し上げておきたいと思います」と笑い飛ばしてみせた。
しかし……。
「もともと安倍夫妻は、仮面夫婦のようなところがあるといわれています。自宅の上階では洋子さんが暮らし、何かにつけてワンちゃんを抱いて下りてくる。選挙特番の安倍家のVTRで、朝起きた首相を出迎えたのも青汁をつくって飲ませたのも洋子さんでした。昨夏に山梨・鳴沢村の別荘に行ったときも、今年の正月に東京・六本木のホテルに泊まったときもお母さんと一緒。親孝行は悪いことではありませんが、嫁の昭恵さんからすればおもしろくないでしょう」(大谷氏)
公の場から姿を消した昭恵夫人
政治評論家の有馬晴海氏は「嫁姑の仲はわかりません」としながら次のように話す。
「洋子さんは故・岸信介元首相の長女で、故・安倍晋太郎元外相の妻です。息子の安倍首相と3代にわたって支えてきた“ザ・政治家の妻”です。嫁にプレッシャーがないはずがありません」
ここにきて昭恵夫人に大きな変化があった。3月27日に『全国高校生未来会議』への出席をドタキャンすると、4月1日に予定されていた静岡の講演会も取りやめた。騒動の渦中でも全国を飛び回っていたのにどうしたのか。
「マイペースを貫いていては反省の色は見えない。ワイドショーに最新動向のニュースを提供するだけです。フェイスブックの更新も籠池証言に対するコメントを出してから途絶えています。首相同伴の日程は別として、単独外出は禁じられたようです。この先、ストレスはたまる一方でしょう」(前出の全国紙記者)
一方、安倍首相は3月31日、プレミアムフライデーに合わせて午後3時に仕事を終え、山梨・鳴沢村の別荘に向かった。雨にも負けず「あいにくの天気になりましたが、ゆっくり自然を楽しみたい」と記者団に話した。翌日はお友達とゴルフ。留守番の昭恵夫人は羽を伸ばせない。
大谷氏は言う。
「第1次政権はお友達内閣で潰れました。今度は家族で追い詰められ、国会答弁はケンカみたいになっています。幼稚で公私のけじめがつかない。それは共通していて身を滅ぼすのではないか」
裸の王様の末路は─。