「今も一緒に住んでいるけど、いい年のオッサン、オバサンだから、今さら籍を入れる必要なんかないよ」
今年で89歳になった浅香光代。事実婚状態の夫である世志凡太との現在の関係について聞くと、こう語ってくれた。浅香と世志が一緒に暮らすようになってから30年近くになろうとしているが、そもそもどういうきっかけでふたりは一緒になったのか?
「梨元勝さんや当時の芸能レポーターが、私たちが男女の関係にあると大騒ぎして、そんなに言われるなら一緒になっちゃえばってことになったのよ。とりあえず1クール結婚してみて、3か月で嫌になったら別れればいいってね。みんないいかげんだよね。本当はこの人のことは嫌いだったの。私は面食いだからね(笑)」(浅香)
それからふたりの長い事実婚が始まったわけだが、'15年6月、『私の何がイケないの?』(TBS系)に出演した浅香は、身辺整理をすませ“終活”が完了したことを明らかにした。その“終活”の具体的な中身はというと、
「財産の4分の1ずつを子ども2人に。残りを夫に渡すことを遺言書に書いたんだよ」(浅香)
また、彼女の持ち物だった事務所と住居が入ったビルは『浅香光代事務所』の法人名義にしたという。同事務所にはふたりとも名を連ねていて、
「どちらかが先に死んでも残された者が後を引き継げばいいということでね。一緒になった当時、僕はリスクの大きい仕事をしていたんです。何かあったときに“浅香の夫がパンクして大変だ”と騒がれ、彼女の進退に影響するようなことになったら大変なので、籍を入れませんでした」(世志)
しかし、'16年1月に放送された同番組で世志は浅香に公開プロポーズを敢行。浅香は指輪を受け取り婚姻届にサインしたが、その後、書類が提出されることはなかった。
「なにも変わらず仲よく暮らしています。私たちは夫婦というより戦友みたいなもの。人生のこれからの花道を楽しく過ごせればいいんじゃないの。入籍するとかしないとか関係ないね。もう何十年も一緒なんだから」(浅香)
ふたりの間には、一般的な夫婦以上の強い絆があった。
記憶に新しい『隠し子騒動』についても聞いてみた。浅香は'14年1月に発売された雑誌で、首相経験もある大物政治家との間に子どもが2人いることを告白し、世間を騒がせた。まだ20代のころの話だが、大物政治家の名前については今でも口が固い。
「名前は言えないねぇー。子どもができたとき、その人に“堕ろしてくれ”と言われたんだけど、死んでも(名前を)言わないから産ませてくれと頼んだのよ。
子どもには父親が誰かは教えてあるよ。だってかわいそうじゃないか。アイム・ソーリーという気持ちだよ(笑)」
ときどきジョークを挟むのには感心してしまうが、まるで女剣劇の役者そのものの気っ風のよさに、すがすがしさを感じるばかりだ。
ミッチー・サッチー騒動を語る
でも浅香といえば、思い出すのは何といっても“ミッチー・サッチー騒動”だろう。'99年3月に勃発した2人のバトル。導火線となったのは、TBSラジオ『大沢悠里のゆうゆうワイド』だった。その日で番組を降板することになっていたレギュラーの彼女は、
「大沢さんに“最後だから言いたいことを言っちゃいなよ。嫌なやつがいたらそいつの名前でもいいよ”と促されたので、野村沙知代の名前を挙げたんですよ」
まさか、そんな大騒動になるとは思いもせず、自宅に戻ってみると、
「家の玄関に入りきれないほどの靴があって、道路まであふれているんですよ。全部報道の人のです。驚いたね。それからはどこに行っても記者がついてきてね。湯河原に行ったときかな。今日は誰もついてきてないなとホッとして旅館に入ったら、すでに中で記者が待ってたんだよ。ビックリしたねぇ」(浅香)
騒動は日増しに拡大していき、ほかにも多くの芸能人を巻き込んで2年以上も続いた。
「あんな人は後にも先にもいないね。だから印象深いよ。“憎いやつだけど、彼女のおかげで浅香光代の名前が全国区になったんだから、今なら選挙に出たら当選するよ”なんて周りにも言われてね。いやいや冗談言っちゃいけねえよ。いい話みたいになってるけど、あいつには2度と会いたくないんだからね」(浅香)
しかし、毎日ワイドショーで流れるミッチー・サッチーのバトルを楽しんでいた人は少なくない。それは芸能人も例に漏れず。
「森繁久彌さんから“最近テレビにあまり出ていないな。あれはやめちゃいけない。面白くてしょうがないよ。毎朝、あの騒動で目が覚めるんだから”という電話があり、なんと返事したらいいか困りましたよ……」(世志)
サッチーの話になり、ミッチー節がますます波に乗ってきたのだが、それにしても声の張りと滑舌のよさはとても89歳の女性とは思えない。元気の秘訣を尋ねると、思いもよらぬ答えが返ってきた。
「貧しく育ったからだね。私は9歳で内弟子になって、そのころご飯も満足に食べられなかった。ネズミの次だなんて言われて。そういう苦労に対しての反逆が、今の私を支えているのかもしれないねぇ」
健康にいいことは特に何もしていなくて、美食もせず、ちくわぶやはんぺんが好物だという。だから太らないとも。来年は90歳。今いちばんやりたいことはというと、
「やっぱりお芝居だね。『一本刀土俵入り』でもやろうかと思っているよ。この年になっても、芝居のセリフは全部覚えているからね」
“生涯女優宣言”を聞く限り、まだまだこれからも私たちを驚かせてくれそうだ!