開口一番、小島がキッパリと言い放ったのが、「一発屋をブランド化したい!」という言葉。むむ、それはかなりの開き直り?
“一発屋”というと、一般的にはあまりいい意味に使われない。花火のようにパーンっと華やかに高く咲き乱れ、あとはちりちりとはかなく消えていくイメージ。
それを「あえて逆手に取って、自分から“一発屋”と名乗ることに」し、さらには“一発屋会”なるものも立ち上げた。会員になっているのは、みなさんご存じの芸人たち(想像におまかせします)。
「“一発屋”と呼ばれる人たちは年々増えていきます。ひとりひとりの力は弱くても、みんなが集まれば大きな力になります。同じ“一発屋”として力を合わせることが、生き残りには必要なんです」
その根底には“アンティークの精神”が宿っているという。ヨーロッパや北欧では、100年以上たった家や家具を活用することがしばしばで、ごく普通の考え方。古ければ古いほど価値が見いだされ、時を超えて愛情豊かに、大切にされていく。だから一発屋も、そんな存在にしたいというのが小島の願い。
「小島よしおって何年もの?」「2007年もの? 古い! いい味出してる〜!」って会話になると面白いし、それくらい定着させたい。つまりは、“一発屋”の価値を高めることが“ブランド”に通じる、というわけ。「これが定着したら、日本は幸せな国になるんだけどな〜」と、しみじみ。
とはいえ、具体的にアクションを起こさなければ、やはり世間から忘れ去られてしまう。そんな小島を救っているのが「子どもたち」だという。
「2011年から始めた子ども向けお笑いライブは今では年間100本以上。ざっと計算しただけでも、何千人もの子どもたちに会っています」
なぜ子どもたちを相手にしたの?
そもそも、なぜ子どもたちを相手にしはじめたのか? それは「一発屋」と呼ばれ始めたころにさかのぼる。まだ食べていけるくらいの仕事はあったものの、確実に右肩下がり。「5年後10年後はどうなるのか?」と、心の中は不安ばかり。芸能界から消えたくなくて、毎日「消えたくない!」と言い続け、とある一発屋芸人と『消えたくない2人』というライブをしたほど。
「“自分だけにできることを探さなきゃ!”って模索ばかりしていましたね」
そんなとき、ある先輩芸人がひと言、ポンッと発してくれた。「子ども向けにライブをやってみたら?」と。
当時の小島はまだ結婚もしてないし、もちろん子どももいない。それでもなぜか「挑戦してみよう」と素直に受け取り、ライブ開催に踏み切った。このとき小島、30歳。
こんな生き方のことを小島自身、“流木イズム”と呼ぶ。毎日すべきことはしつつも、ただただ流れのままに、流されるままに、過ごし続ける。そうしていると、ふと目につくものや、たまたま手を差し出されることがあり、自然に手をのばしてみる。するとそれがきっかけになり、新しい変化を手に入れる可能性が高まる、というもの。
もちろん、すぐに成功したわけではない。「もう帰りたい」と子どもに泣かれてしまったこともあれば、子ども自体が集まらなかったことも。
ようやく光が見えてきたのは、子ども向けライブを始めて4年ほどたってからのこと。今ではライブが終了しても「帰りたくないー!」という声があちこちから聞こえてくる。お母さんからは「うちの子が明るくなったんです!」など、お便りをもらうことも。
「うれしいですよね〜。やってよかった! って思える瞬間ですね」
そして、
「子どもだからといって手や気を抜くことはありません。むしろ、子どもだからこそ失敗は許されない。子どもとの出会いも一期一会。そのときの密度を大事にしています」
子どもと接するようになって、いろいろと見えてきたこともある。それは、自身の生い立ち、両親のこと、これからのこと。そして、子どもの心をつかむ小島流メソッド。
例えば、「子どもには成功例をたくさん見せる」「子どもの答えを否定しない」「子どもは基本、ツッコミが好き」「ハダカになって心を解放する」「親の夢を押しつけない」「ありがとう、ごめんなさいは早く言う」など。
身体を鍛え続けているのも、ある意味、その一環。「子どもにとって初めてのヒーローはお父さん。お父さん自身“カッコいいお父さんでいたい”って思うでしょ? 僕も子どものヒーローとして、カッコいい姿を見せていたい」
カッコいいとは、なにも容姿だけの話ではない。物事をよく知っている、いつも笑っている、話をよく聞いてくれるなど。それは、お父さんに限らず、お母さんも同じ。
でも、運動神経もよくないし、子どもと接するのは苦手だという人は、どうすればいい?
「風船遊びでいいんですよ」
風船でキャッチボールをしたりリフティングしたり。そんな簡単なことで十分。踊るのもいいけれど、それもジャンプしたり、しゃがんだり、手を上げ下げしたり、と単純なこと。子どもと一緒に遊ぶのに難しいことはNG。
「単純明快、シンプルがいちばん。その究極が“変顔”。子どもは変顔が大好きです」
たしかに、ちょっとした恥ずかしさはあるものの、家の中で、子どもの前だけなら、やってもいいかも。
「心を“ハダカ”にするのが大事ですよ、僕はいつもハダカですけど」
そんな小島の夢は「アンパンマン」になること。
「アンパンマンは永遠の子どもたちのヒーロー。少しでも近づいて、子どもたちともっとライブを楽しみたい!」
実際あるイベントでは、1日目がアンパンマン、2日目が小島、というキャスティングもあったそう。まぎれもなく子どもたちにとっては“超有名人”“超ヒーロー”。10年ものの一発屋は、子どもたちの憧れの存在なのだ。