高3の秋に受けた数学の模試が、まさかの偏差値29だったという杉山奈津子さん。普通なら、そこで東大合格をあきらめてしまいそうですが、彼女は違いました。
「周囲には“東大なんてやめろ”って止められたんですが一切聞きませんでした(笑)。私の人生は私のものだし、人の意見をいつも聞いていたら、やりたいことはできません。それに、自分が東大なんて無理……と思った時点で可能性がゼロになるんです」
そう語る杉山さんは、一般常識を破るオリジナルな独学によって、見事、東大薬学部に合格。「予備校も学校も不要」と語る杉山さんの勉強法とは一体、どのようなものなのでしょうか?
最新刊の『コミック版 偏差値29からの東大合格超勉強法』では杉山流の必勝勉強法をマンガで伝授しています。今までにも、東大合格のための本を数多く出版し、大きな反響を呼んできた杉山さんですが、今回、コミック版の本書を書いたのには大きな理由があります。
「この本の中にも書いているのですが、受験生は時間に追われています。ムダに過ごす時間などありません。ですから、活字の本をじっくり読む時間もないと考えました。マンガなら気軽に読めるし、すぐ読み終えることも可能です。
活字の本はいわゆる積ん読になってしまうことが多いですよね。買っただけで満足して、後で読もうと。マンガはすぐ読んで、すぐ頭に入る。そこが表現形式としていいと思いました。本書の中でも、歴史の勉強に歴史マンガが有効な理由を紹介しています」
マンガを読むのも描くのも大好きという杉山さん。最新刊では、「かてきょ」と名づけられた謎の家庭教師のキャラクターと桜来咲という高3女子との掛け合いを通して、漫才のように「東大合格のための勉強法」を伝えています。
受験勉強は“質×量”
「ツイッターなどで何度も聞いたのが、勉強の方法がわからないという悩みです。勉強の方法がわからないのは、重要なものとそうでないものの取捨選択ができていないから。東大合格という目標があるなら、当然、最も優先すべきなのは“合格する”という結果ですよね。その結果のためには“どう受かるか”という戦略を練らねばなりません。
だらだらと勉強時間を長くしたり、予備校に通っているだけで安心したりしていては合格には結びつきません。勉強を公式で表すなら“質(クオリティー)×量(時間)”です。時間はどの受験生にも平等に流れていますから、東大に行きたいならほかの人より“質”を上げなければなりません。
私がそれに気づいたのは、落ちこぼれで受験勉強を始めたのも遅く、最初に受けた模試の判定は最低のE判定(合格率20%以下)という底辺からのスタートだったからです。これでほかの人と同じように普通に勉強していたら受かりっこないですよね。そこで、短期間で効率的かつ急速に偏差値をアップさせる方法はないかと、勉強法の本を読みました。そんな中で、自分なりの効率的な勉強法を編み出していきました」
費用対効果や効率。これらを抜きにがむしゃらに勉強してもダメだと杉山さんは繰り返します。
「精神論は何の意味もありません。私は学校の授業中も内職をしていました。先生の気持ちが全く気にならないわけではありませんが、高校は義務教育ではないのですから。それに先生は、その時点での生徒の成績からものを言うしかありませんが、効率のよい勉強をしていたら、成績は飛躍的に上がります。そういう意味では、東大なんかムリという先生の意見は無視していい。
それと、学校の授業や予備校の講義は意外と効率が悪いんです。通学にかかる時間や板書、雑談などで、実質的な勉強時間は減っていきます。それなら自分ひとりでやったほうが効率的ですよね。私の友人は、予備校には通わず、予備校のテキストだけを使って独学で東大に入りました」
国語、英語、歴史など、教科別の勉強法でも、杉山流ノウハウが詰め込まれている。
「英語の長文読解ができるようになるために何をすべきか、国語の読解にはルールが存在するなど、マンガでわかりやすく絵解きしています。ノートの使い方については、マンガならではの表現でわかりやすくビジュアル化できたと思うので、ぜひやってみてもらいたいです」
最初から限界を設定しないで
さらに、偏差値29から飛躍的に偏差値を上げた杉山さんが重要視するのは「暗記」です。
「数学の問題でも、考えて解くことはしません。私は基本例題の解き方を丸暗記しました。数学が苦手な人は、数学って考える教科だと思っているんです。
でも受験数学は出るパターンが決まっているから、パターン暗記したほうが効率的なんです。パターン暗記で理系の大学の数学でもわりと解けてしまう。そして覚えることで理解は後からついてきます。
問題が解けるようになれば、自信もつきます。時間がない受験生がムダな試行錯誤をする必要なんてありません。もし学校で渡された問題集に回答冊子がなかったら、書店で同じものを注文して、回答冊子をこっそり手に入れてしまっていいんです。そしてパターンを暗記してください」
そのための暗記法として、『コミック版 偏差値29からの東大合格超勉強法』では、「チラポイ法」や「書き殴り法」などを提唱しています。「チラポイ法」を使って、ハーバード大学に特待生で受かった人もいるのだとか。
東大を目指す受験生とその親御さんに伝えておきたいことは、と聞くと、
「え〜、東大なんかムリだよと、最初から限界を設定しないでほしいです。もう少し普通に東大に入ることをイメージしてもらいたい。例えば、名門の灘校の学生たちなんかは東大に入るのが当たり前の環境じゃないですか。だから気負わずに東大に入るものと考えている。そうして実際に入ってしまう。
子どもが東大を志望したら、親のほうも、あ、そうなのって感じで普通に受け止める環境づくりが大事だと思います、特別に気負ったりしないで。
私が今までに書いた東大合格のための本は、わりと親御さんから読んでいただいていたんですけど、この本は受験生に読んでもらいたいと思っています。もし親御さんがお子さんに読ませたい場合は読みなさい! と強制せず、面白そうだから読んでみたら? ぐらいの感じですすめてもらえたらいいと思います」
<プロフィール>
すぎやま・なつこ 静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業。作家・イラストレーター・心理カウンセラー。高校では劣等生だったが、独自の勉強法を確立し、東京大学に合格。卒業後は、勉強法などをテーマに執筆や講演活動を行っている。