「“お前の母ちゃん尻出してたぞ”って子どもがいじめられたらどうしようって……」
「いやいや、子どもは“母ちゃんカッコいい”って誇りに思うんじゃないかな!」
これは3月12日に放送された『ボクらの時代』(フジテレビ系)で、森三中・大島美幸とクワバタオハラ・くわばたりえの会話。北陽・虻川美穂子と3人で、子育ての楽しみや悩みを語り合った。
「子育て中の女芸人という共通点があって、3人はプライベートでも仲がいいんです。頻繁にお互いの家に集まって女子会を開いているんですよ」(テレビ局関係者)
お笑いで成功した3人は、ママタレとしても大人気。
「大島さんは放送作家の鈴木おさむさんと'09年に結婚し、“交際0日婚”が話題に。'15年に長男を出産した際には、自撮りヘルメットで撮影した映像を『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で放送したことが物議を醸しました。でも、彼女の勇気を称賛する声も多かったんです」(スポーツ紙記者)
タブーに共感
くわばたは、'09年に会社員の男性と結婚し、'10年に長男を出産して今では3児の母に。虻川は、'10年にイタリアンシェフの桝谷周一郎氏と結婚して'15年に第1子となる長男を出産した。3人の子育てに関心が集まるのには理由があると話すのは、お笑い評論家のラリー遠田氏。
「くわばたさんの子育てブログが大人気になったのは、ほかのママタレのような“嫌われたくない”という気持ちが見えないからでしょう。タブーとされていたことを隠さずに言ってくれますから、共感する人が多い。母親になった女優やアイドルのようにセレブ感を見せる必要もないので、気取った見せ方もしていません。世間の多くの母親には身近に感じられるでしょうね」
彼女のブログが注目を集めたのは、'12年に子どもを叩いてしまったことを告白したことが大きかった。
「雑誌で取り上げられ、バッシングされましたが、子育て中のママさんたちは自分の経験と重ねて心に響くところがあったようです。彼女は寝かしつけるのに疲れて子どもを叩いてしまったそうですが、後で激しく後悔しています。幼児虐待の事件が多発する中、自分にも無縁ではないと感じる人が多かったのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
相方の小原が子育てに専念していることもあって、くわばたはお笑いよりも子育て関連の仕事のほうが今は増えている。講演会を依頼されることも多く、小池百合子都知事の主催する東京の未来を考えるコンベンションにも呼ばれたという。
3人以外にも、ママ芸人として活躍しているのが松嶋尚美だ。
「松嶋さんは結婚しても変わらないということでは大島さんと同じタイプ。もともとはっきりモノを言うほうで、“自分の子どもには牛乳を飲ませない”と発言したときにはバッシングにあいました。でも、自分の考えを曲げない姿勢には彼女の“芸人魂”のようなものが感じられましたね」(お笑いライターの富田陽美氏)
ちょっと特殊なケースなのが青木さやかで、
「青木さんはもともとアナウンサーや女優志望だったんですね。自分でも芸人向きじゃないと思っていたようで、出産を機に仕事の方向性を変えていきましたね」(富田氏)
富田氏は、大島が身体を張るママ芸人のパイオニアとして先頭に立っているという。もともとそういうタイプの芸人で、お尻を出すこともいとわない。番組でも、「結婚したから、出産したから、といって芸風は変えたくなかった。尻を出す母ちゃんでいたい」と話していた。
「女芸人ならではの芸風が認められるようになり、選択肢が広がりましたね。昔は女芸人に対してブスと言ってもいいのが常識でしたが、最近は変わってきました」(ラリー遠田氏)
キャリアの中断に悩む
今でも女性ならではの特殊事情は残っている。大島は妊活休暇を取るときに悩んだという。
「自分だけの問題じゃなくて森三中、スタッフみんなに影響することだから。3年後に実現したけど、このまま仕事なくなっちゃうのかな、とも思った。でも、夢を叶えることを優先しましたね」(同番組)
出産と子育てでキャリアが中断してしまうのは、一般のワーキングウーマンと同じ。お笑いと母親業を両立させようとすると、2つの立場のギャップに悩むことになる。芸風を変えないという大島に対し、虻川は自分では変えるつもりがなくても気持ちが変わってしまったと話す。
「笑いを取ることが人生の喜びと思っていたけど、子どもが生まれたら、それよりも社会平和とか……。どうかしちゃったんだ(笑)。子どものことで頭がいっぱいいっぱいになっちゃって」(同番組)
これまではお笑い100%でやってきたのに、子育て中はそんなわけにもいかない。みんなが面白いことを考えているときに、自分は自転車の後ろにはどんなカゴをつけたらいいんだろうかと悩んだり、お笑いと育児、平和を順繰りに考えたりしていたという。
要するに、ネタを考える時間がなかなか確保できないのだ。大島も、以前とはスタンスが変わってきたと語っていた。
「面白いことを考えるって、むちゃくちゃ難しいんですよね。舞台やテレビを見ているときも、今まではお笑いのヒントをもらいたいと思っていたわけです。今は違うじゃないですか。少しでも息子の役に立つこと、子育てに必要なことを求めちゃってる」(同番組)
芸人としては難しいところだが、母親だからこそできるお笑いもあるはず。
ただ、テレビの仕事はハードで、片手間にこなせるものではない。
「バラエティー番組では、収録が午後10時から始まるというのはザラです。ということは、終わるのは深夜から明け方。小さい子を抱えているママが対応するのは無理ですよね」(富田氏)
恋愛や結婚が芸の障害になるという考えも根強い。
「上沼恵美子さんが『M-1グランプリ』の審査員だったときのこと。ハリセンボンの2人に、“女は恋をすると面白くなくなるから、気をつけなさい”と言ったことがあります。あの世代の芸人にはそういう意識があります」(ラリー遠田氏)
恋愛をタブー視する傾向は弱まってきたが、女性のコンビにはメンタル面の問題も。
ママ芸人派閥
「北陽はメンバー2人がどちらも結婚したからホッとしました。どちらかだけが結婚したことで関係が崩れ、解散してしまったコンビもいますからね」(富田氏)
ママ芸人同士でも、うまくいくとは限らない。
「ただでさえ難しいママ友関係ですが、ママ芸人となると売れている売れていない、稼いでる稼いでないといった格差が絡んできて、面倒なことになります。未婚の女芸人さんたちは、ゆくゆくはママ芸人になることを考えて、“ママ芸人派閥”に入ろうかという話も聞きます。未婚の人ばかりの派閥に入ったら、ひとりだけママ芸人になると妬まれますからね」(芸能プロ関係者)
苦労はあるが、ママ芸人には間違いなく需要がある。トークがうまいので、コメンテーター向きなのだ。
「くわばたさんの評判がいいのは、ママたちが共感できる視聴者目線の意見を言ってくれるからです。Eテレの『すくすく子育て』のMCをしていたのも大きいですね。正直、くわばたさんは結婚前はそこまでキャスティング会議などで名前が挙がる芸人ではなかった。
芸人時代のキャリアに関係なく、ママ芸人として支持されれば花咲ける時代になったんです。赤ちゃんグッズのイベント出演、CM出演など仕事に幅も出ますしね。活用の仕方によっては、“ママ”という肩書は芸能人として大きな強みにもなるんです」(テレビ局関係者)
引く手あまたなのはいいが、くわばたは本来の仕事である漫才もやりたいという。
「ブログなどでママ芸人の活躍が目立っていますが、お笑いの分野では続々と面白い後輩が出てきています。ママ芸人として評価が高くても、バラエティーに復帰できるかは未知数です……」(富田氏)
子育てしながらときに身体を張る大島が、ママ芸人の希望の星になってほしい!
※くわばたりえさん、大島美幸さんのインタビューを明日公開します。あわせてお読みください。