羽田「日本の原風景みたいな場所でロケができてうれしかったし、すごくノスタルジーもありますよね」
木村「撮影されたカットがキレイですしね」
“朝ドラ”『ひよっこ』で、ヒロイン・みね子(有村架純)と幼なじみの時子(佐久間由衣)を、奥茨城村で温かく見守りながら育ててきた母親、谷田部美代子と助川君子を演じている木村佳乃(41)と羽田美智子(48)。役と同様、素の時でも仲のいいふたりの“母親対談”の始まりです!
ふたりは村で一、二を争う“美女”という設定だけど?
木村「そう、お互いに自分が一番キレイだと思っているんです(笑)」
羽田「村一番の美人は私、二番があなたってね。まあ、それをネタにしているんですけど」
木村「そして言い争っているふたりを見て、茂さん(古谷一行)が辟易(へきえき)すると(笑)」
羽田「でも、そんなことを言い合えるくらい、一番の仲よしなんですよね」
母親たち同様、みね子と時子もかけがえのない親友同士。
羽田「娘たちがすごく親友だと物語るシーンがいっぱいあるんですけど、私たちも昔、同じようにやってきたんだろうな、って」
木村「私もそうだと思って脚本(ホン)を読んでいます。いるのが当たり前というか、そういった部分が土台になって谷田部家と助川家の関係にもなっているんじゃないかなと」
こんな息の合ったふたりが、『ひよっこ』の魅力を語り尽くします!
ふたりがそろうとにぎやかに!
高度成長に沸き、新しいものが急速に広まっていく東京とは、流れる時間のスピードも違う、のどかな奥茨城村。谷田部家と助川家の暮らしぶりは?
羽田「助川家は、酪農もやっていて、経済的に少し余裕のある農家です。牛がいるので、私の演じる君子の口癖が“もぉ〜”なんです(笑)」
木村「何、それ(笑)。そんな理由でしたっけ?」
羽田「本当なの。監督なんて、君子の“もぉ〜”ってセリフのあとに、牛の鳴き声を入れようか、なんて言ってるし」
木村「あははは(笑)。谷田部家は米作りが中心です。でも、不作だった年に農協に借金をして、少し家計が苦しいんです……。その返済のため夫の実さん(沢村一樹)が、東京へ出稼ぎに出ています」
羽田「でも、いつも明るく振る舞ってますよね」
木村「羽田さんも同じだと思うけど、役柄に自分の“素”の部分が入っていません? ふたりが来ると、セットがにぎやかになる、ってスタッフさんたちに言われているんですよ(笑)」
羽田「あ、それ私も言われた(笑)。スタジオに入ったときに“太陽が来た”って。それで帰るときに“夕日が沈む”なんてね。本心は、うるさいということなのかもしれないけれど(笑)」
6話(4月8日放送)では、稲刈りのシーンもあったけど、これまでに経験は?
木村「私はまったくの初めてでした。今と違ってすべてを人の手で作業している時代なので、本当に大変でしたね」
羽田「私は母が農家の出身なので、自分ではやったことがなかったけど、大変さは聞いていたんです」
木村「あ、そうなんですね。人の力ではどうにもならない天候頼みだし、食べ物を作るって難しいですよね」
羽田「そう。その大変さを知っていたので、母は農家には絶対に嫁に行きたくないと思っていた、と本人から聞きました(笑)」
木村「ロケでは羽田さん、鎌が切れ味が悪くて苦労してましたよね。腰が痛いって言いながら稲をグリグリって(笑)。監督からは、歌まで歌ってとリクエストされて」
羽田「そうそう。息が切れて、とてもじゃないけど歌える状態ではないのに(笑)。でも、稲刈りのシーンの最後は、私たちが歌う『庭の千草』(唱歌)が、BGMみたいになっていましたよね」
農作業以外にも苦労が。
木村「監督がとにかく長回しで、台本に書かれた以外の部分も考えなくてはいけないんですよね」
羽田「セリフを言い終わったあとの芝居を、自分たちで作らないといけなくて。それが意外と本編で使われたりしているから“しまった!”と思うときも(笑)」
木村「あるある。私、東京土産のカツサンドを開けるとき、リハーサルでふざけて“ジャーン!”とか言って。本番で最初はやめていたら、“本番でもやってください”って」
羽田「でもあれ、よかったと思う。私は稲刈りのシーンで、佳乃ちゃんが稲を束ねて“あと4つぐらいでいいかね”と聞かれたとき、完全に素に戻って“ね、そうだね”って(笑)。それが放送される本編で使われていたんですよ。君子じゃなく羽田美智子になっている瞬間だったかもしれないから、ドキッとしちゃった(笑)」
木村「ああ、あのシーンね。本当に自然なところを使われていますよね(笑)」
茨城弁の“極意”は濁音にあり?
さらに苦労したのが方言。
木村「イントネーションが難しいですし、どこで言葉が濁るのかが、いまだにわかってないです。でも、羽田さんはネイティブ(常総市出身)だから……(笑)」
羽田「それを言わないでください(笑)。私にも方言指導の先生がついていて、いろいろ注意されているんだから」
木村「時代も設定された場所も違うから、微妙に違うんですよね」
羽田「私の地元では奥茨城村の“奥”を“おく”と発音するけど、ドラマの中では“おぐ”って濁るし」
木村「本当に濁音をどこにつけるかが難しいですよね。卒業式も“そづぎょうしぎ”って濁りますよね」
羽田「アドリブになると発音がブレちゃうよね。私は地元(茨城県南西部)の発音になっちゃうし、佳乃ちゃんは世田谷風で、山の手のお嬢さまになっていたしね(笑)」
物語の舞台になっているのが、東京オリンピック開催に沸く’64年。日本が元気だったころだけど、どんなイメージがある?
羽田「ものごとが急速に変化して、システムが全部変わった時代ですよね。時代の流れとして、今に通じるところもある気もします。
でも、夢と希望があったのかな……。絶対に未来はよくなる、ってみんなが信じていましたよね。それが今とちょっと違うかな」
木村「そうですね。うちの両親のちょうど青春時代なんですよ。母親は東京オリンピックで通訳のバイトをしていて、そのときの写真を見せてもらうと、まさに今、撮影現場で見ているファッションだったり(笑)。初めてテレビが家に来たときの話とか聞いていると、本当に楽しそうなんですよね」
これからドラマでは、娘たちがさまざまな思いを胸に、集団就職で東京へと旅立つ。
羽田「4週目のあたり、なんだかつらいよね……。子どもたちとの別れのシーンの撮影では、みね子ちゃんや時子の幼なじみの三男くん(泉澤祐希)のお母さん、きよさん役の柴田理恵さんと3人で泣いてしまって」
木村「みね子たちは高校卒業してからだけど、あの時代は中学校を出てすぐに上京する子もいましたよね」
羽田「ちゃんと食べられているかとか、悪い男に出会っていたらどうしようとか(笑)。いろいろ心配をすると思います。母親の気持ちを痛感しました」
今回、ヒロインの有村架純以外の若手俳優はオーディションで選ばれている。先輩のふたりの目には、若手たちはどう映っている?
羽田「ヒロインの架純ちゃんも、私の娘役の佐久間由衣ちゃんも本当にまじめ。撮影の合間でも、ふたりですごく難しい話をしているでしょ? 視聴率のこととか(笑)」
木村「私たちがご飯を食べて“これおいしいね”なんて話しているときにね(笑)」
羽田「私たちとのギャップは何!? って(笑)」
木村「考え方がすごく堅実ですよね」
羽田「本当に立派だし、何も言うことはないですね。でも、何か本当に困ったときは、私たちにはこれまでの経験があるから、それで支えられればなって」
木村「そうですよね。見守るということです。でも、私いろいろな段取りとかを忘れて助けてもらっているときもあるから(笑)、見守ってもらっているという可能性もあるんですけど」
羽田「あははは(笑)。でも親が少し抜けているほうが、子どもはしっかりするというから。柴田さんを含めて“ずっこけお母さん3人組”で、ちょうどいいと思います(笑)」
みね子(有村架純)はこんな子!
木村「可愛くてしかたがない(笑)。しっかりしてて、もう一流の女優さんですけど、かといって堅い感じはなく、非常に柔軟性もあります。演技歴の浅い由衣ちゃんに、自分の経験の中からアドバイスをしたり、姉御肌なんですよ。出ずっぱりで大変だと思いますが、ひと言もグチを言わないで頑張っている姿を見ると、心から応援したくなります」
時子(佐久間由衣)はこんな子!
羽田「初めて会ったとき、デビュー当時の自分に似ているなって感じたんです。緊張して硬くなり、本当はもっとできるのに……という歯がゆさが手に取るようにわかって、この子は昔の自分だ、って。だからご飯を食べに行ったとき、私の経験をふまえてお話ししたら“おかあちゃん”って呼んでくれて。そこから母娘が一致団結しました(笑)」
<プロフィール>
きむら・よしの◎’76年4月10日生まれ。朝ドラ出演は『天花』『風のハルカ』『あさが来た』に続いて4作目。ゲスト声優を務めた『映画 プリキュアドリームスターズ』が公開中。
はだ・みちこ◎’68年9月24日生まれ。朝ドラ出演は『君の名は』『ウェルかめ』に続いて3作目。『警視庁捜査一課9係』(テレビ朝日系 水曜 21時〜)にも出演中。