東京五輪まであと3年。世界保健機構(WHO)と国際オリピック委員会(IOC)は「タバコのないオリンピック」を推進している。が、日本の現状は、屋内全面禁煙の義務の法律もなく、そのマナーは世界最低レベル。
そこで、全国で初めて受動喫煙防止条例を制定し、受動喫煙防止に取り組む、元神奈川県知事の松沢成文参院議員に話を聞くと、東京・永田町の議員会館で1時間にわたって熱弁をふるった。
──東京五輪まで3年です。
「2019年にはラグビーW杯もあります。2つのスポーツのビッグイベントの前に法整備しないといけない。WHOのマーガレット・チャン事務局長からは法整備の念を押す親書までもらっています。これは恥ずかしいことです」
──どうすればいいのですか。
「まず公共的な屋内は原則禁煙を目指す。人がたくさん出入りする飲食店は公共的な屋内です。喫煙席ではなく、喫煙するためだけの部屋をつくり、吸いたい人はそこで吸って席に戻る。同時に飲食はできません。そして守らない人には罰則を科すことです」
──全国の自治体の動向は?
「神奈川県知事のときに県条例をつくりました。兵庫県も続きました。しかし、そこから進んでいません。県境を挟んで規制が異なると、タバコを吸いたい人は規制が緩いほうに逃げてしまうからです。ルールが違うと外国人観光客にもわかりにくい。国全体で一律にやれば公平です」
──神奈川県下の飲食店から恨まれませんでしたか。
「県内のレストランがバタバタとつぶれたかというと、そんなことは全然ありませんでした。先行禁煙で協力してくれたマクドナルドは最初の2か月はタバコを吸いに来ていたお客さんが減ったものの、半年で売り上げが戻ったそうです。国内の喫煙率は約20%ですから8対2でタバコを吸わない人のほうが多いんです」
──県条例の施行後、罰則適用が1件もなかったことが最近わかりました。
「残念です。県の担当職員に“違反者はきちんと摘発しなきゃダメだ”と言いました。抑止力になりますから」
──'12年の都知事選では猪瀬元知事に敗れました。'11年の都知事選では石原元知事から後継打診を受けて出馬表明しながら、石原氏が4選出馬に方針変更したため立候補を断念しました。公約に掲げていた受動喫煙防止条例の制定は石原氏に引き継がれました。
「石原さんは約束を守ってくれませんでしたね。まあ、ああいう人ですから。猪瀬さんはヘビースモーカーなので最初から条例制定に反対でした。舛添元知事は条例制定を約束した3か月後に“やっぱり難しいです”とあきらめてしまった。小池知事の言う“ブラックボックス”の人たちが徹底的につぶしにかかったんです。小池さんは公約に入れています。自民党都連と戦うのも好きですから、もし、国の法律ができなかったときは都条例で規制してくれるはずです」
──なぜ、自民党は受動喫煙防止に消極的なのでしょうか。
「タバコ行政を仕切っているのは財務省です。JTの筆頭株主は財務大臣。JTが儲かれば株の収益がバンバン入る。売り上げが減るとタバコ税収も減る。だから財務省はやりたくないんです。議員は予算を握っている財務省とは仲よくしたい。自民党の“タバコ族議員”も反対です。パチンコなどの娯楽業、飲食業に近い議員も反対です。JTは財力のある広告主なのでマスコミもこの問題には鈍い」
──もう、厚労省案を国会に通すのは無理でしょうか。
「私は今国会での成立をあきらめていません。神奈川県条例が70点とすれば厚労省案は85点。成立したら女性は喜んでくれるはず。女性は妊娠、出産するのでタバコ問題に敏感です。もっと女性に声を上げてほしいですね」