周りの俳優が危機感を感じる存在
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で有村架純の叔父役を演じる、峯田和伸。ナレーションでも“変なおじさん”と言われるほど、その存在が気になる人が多いのでは?
そんな峯田の俳優活動の第1歩となったのが映画『アイデン&ティティ』。彼は“ロック”とは何か思い悩むバンドマンを演じたが、そのメガホンを取ったのが田口トモロヲだ。
田口の目に、俳優・峯田和伸はどんな風に写っているのだろうか。
「『アイデン&ティティ』の主演選びは難航して、1年くらい決められませんでした。そんななか峯田くんのGOING STEADYのPVを見て、実際に会ってみたら一目惚れ。プロデューサー不在でしたが、その場で決めちゃいました。演技力とかではなく、そういった計算も吹っ飛ぶような存在だと。帰り際、芝居とかできんのかなって不安になりましたが(笑)」
しかし、その不安は杞憂に終わる。
「演技初体験だったので、リハーサルを1週間ほどやってもらったら、リハからどの俳優さんよりも120%の力を出し切ってぶつかっていく。そこにまず感動しましたし、それによって周りの俳優さんが、“やばい! 食われちゃう”って危機意識を感じ、相乗効果でみんなの熱量が上がっていきました」
以降、出演俳優として、また主題歌で、田口はすべての監督作品で峯田を起用。
「彼はいまの“俳優”という規格のなかにいない唯一無二の存在だと思います。隠し事がなく、“無様”を演じても、リアルにカッコよく届けることができる。イケメンは存在するだけでカッコいいけど、醜い内面をむき出しにした人間性を表現できる人ですね」
いまでは峯田とプライベートの付き合いもするように。
「すごく礼儀正しくて、シャイで、チャーミング。それでいて自分が違うと思ったことには辛辣になる“毒”もある。いまはさまざまなジャンルで自分を表現できる時代。そのなかで自分のやるべきことを見つけて、やっていってくれたらと思います」
<プロフィール>
たぐち・ともろを 1957年11月30日生まれ。東京都出身。俳優、ナレーター、映画監督。出演する映画『PとJK』『ねこあつめの家』が公開中。ナレーターとして『プロジェクトX〜挑戦者たち』(NHK)など