連続ドラマ『緊急取調室』(テレビ朝日系木曜夜9時放送)で、主演の天海祐希は、熟年トリオとの共演を“おじパラ(おじさんパラダイス)”と称した。
その“おじパラ”とは、小日向文世(63)、大杉漣(65)、でんでん(67)の3人のこと。3年ぶりの連ドラに再集結したシーズン2での現場から、下積み時代の爆笑秘話まで、3人の侃々諤々な誌上ぶっちゃけトークをお届け!
―シーズン2を迎えた感想は?
小日向 最近は(現場でいちばん)年上になることが多いけど、キントリは、(年上の)大杉さんと、でんでんさんがいらっしゃるので、非常に甘えられて、それが心地いい。おふたりとも元気ですし、おしゃべりが楽しいんです。
でんでん 同窓会みたいな感じで楽しいです。話もなんとなく合うんですよね。
大杉 どうでもいい話が楽しくて、でも何を話したのかほとんど覚えていない。
でんでん 今日のことはよく覚えていますが、人にはしゃべれないです。
―言えないことですか?
大杉 (週刊誌の)袋とじのことで喜んでいたんですよ。袋とじを開けようと思ったら、すでに誰かが開けていて、非常に悔しい思いをしたってね(笑)。
―シーズン1以降、プライベートでも親交があるそうですね?
小日向 天海さんの呼びかけで食事会をしています。みんな忙しいので、全員がそろうことはなかなかない、かな。
大杉 (別の)撮影の仕事が終わって遅れてでも参加するという感じです。
―シーズン1と変わったことは?
小日向 めちゃくちゃおしゃべりになった(笑)。
大杉 いやいや、それは昔からでしょ。
小日向 (雑談で盛り上がっていても本番で)でんでんさんは、昔気質の刑事役にスッと入る。
でんでん 前作よりも(役を)掘り下げられているという回答がいいのかな(笑)。
小日向・大杉 アハハハ(大爆笑)。
小日向 大杉さんは人情派の刑事役だけど、ときどきフラストレーションがたまっているのか、“アウトレイジ”になるんですよ(笑)。
大杉 今回のシーズン2で明らかになったのが、(設定で)僕の奥さんが19歳も年下! うれしくてね。いつか会えるんですかね。今回、出てくるといいけど……。
―にぎやかな3人ですが、天海さんの反応は?
小日向 天海さんも楽しんでいると思うよ。(共演者が)男ばかりでしょ、だんだん天海さんに、女を感じないというか。
大杉 コヒさん、言葉を選ぶ選ぶ(笑)。
でんでん “感じる”なんて言ったら失礼だから、“感じない”って言っているんだよね。
大杉 こんなおじさんたちに付き合っていただいているんですよ。
小日向 僕たちが、おばさんっぽいのかな。
でんでん お化粧して、かつらかぶった顔を想像したら、完全におばさんです(笑)。
小日向・大杉 (大爆笑)
大杉 返答に困るわ(笑)。みんな控室があるのに戻りません。スタジオの前室に、天海さん差し入れの“パン工場”があって、それが実に美味しい。ちょっとしたキッチンスタジオ風で、そこで、みなさんとよもやま話をするのが楽しいんです。
でんでん 食べたこともないような生ハムを、2枚ものせて食べていますよ。
小日向 チーズをのせてピザトーストにもできる。
でんでん パンを焼いている間に、ポップコーンも召し上がってくださいと、ポップコーンの機械まであります。
小日向 それも含めて、天海さんが仕切ってくれる。ナイフがないとか、食材もチェックして、すごいよ! それが、キントリの役とも重なるんだよね。
―よもやま話で、下積み時代の苦労話をされたことは?
小日向 大杉さんが転形劇場にいたときに、僕は自由劇場にいて、(お金がなく)食えなかったけど、大杉さんは海外公演をされて、それなりに食えていたみたいです。
大杉 そうですね。ぎりぎり役者で食べていたと思います。
でんでん 何年前の話?
大杉 もう30年以上も前になりますかね。
小日向 僕は劇団を解散したときが42歳。ほとんど貯金もなかった。21年前って、そんなに前じゃない。大杉さん、21年前は?
大杉 劇団が解散した後は、映画やテレビが中心でしたね。
でんでん 僕は30代前半ごろまで、タクシーの洗車とか、ガラス磨きとか、バイトもしていましたよ。質素な生活で大丈夫なタイプでしたから。バイトバイトと、躍起になって、そんなにしていなかったです。
小日向 してないの? 僕はやりましたよ!
大杉 僕もアルバイトは、舞台の大道具くらいかな。当時、住んでいたアパートは1畳1000円だったからね(笑)。6畳ひと間、6000円ポッキリ!
小日向 すごいね、それ。
大杉 吉祥寺から歩いて6分。築年数は古かったけど、“キラク荘”って、いい名前でしょ。当時のバイト代が、1日5000〜6000円で、1日働けば。部屋代が払えた。必要なときだけバイトをする生活。今、考えたら本当におおらかな時代でした。でんでんさん! わかりますよね。
でんでん 僕は友達がタクシー運転手をしていて、朝3時ごろ起きて、営業所に行って、1台1000円で洗車をしていました。4、5台やれば、それで食べられました。麻雀にも行っていましたよ。
小日向 僕はひどかったですよ。公演初日の10日〜2週間前は、バイトに行けなくなっちゃう。バーやクラブのボーイ、銀座の喫茶店、原宿の深夜レストランと、掛け持ちでやっていました。それで家賃もギリギリ。4畳半で2万5000円。23歳のときで、ちょうど40年前。
でんでん 僕も4畳半の部屋で、小さな流し台があって、トイレは共同(小日向・大杉「そうそう」)。トイレが部屋の隣で、誰が入ったかわかる。音は聞こえて当たり前。日当たりも悪くて、もやしにならなくて、よかったです(笑)。引っ越すときに冷蔵庫を動かしたら、カビだらけ。でも大家さんがいい方で、(家賃も)滞納していたのに、“すいません”って謝ったら、“いいんですよ”って。
大杉 キラク荘の大家さんもそうでしたよ。“お芝居やっていると大変だから、いいですよ”って。日当たりもよかったし、窓を開けたらプラムの木があって、取り放題でした(笑)。
小日向 ホント〜。2万5000円の部屋は、壁に隙間があって隣が見えたの。声が丸聞こえだった。
大杉 (下積みの)苦労とかよく言われたり、聞かれたりするけど、本人は全然そんなこと思っていなくて、実に楽しかった。
小日向 でも、アルバイトは嫌だったなぁ。接客業だったし……。
大杉 なんで接客業だったの?
小日向 劇場の真ん前で、横断歩道を渡ったらアルバイト先だったから……。
でんでん コヒちゃんと、僕らがやっていたバイトは正反対で、人との接点がないんだよ。
大杉 作業員のバイトで、そこが何になるのかもわからないまま、つるはしとスコップを渡されて、神宮や青山界隈で数多くの穴を掘りました(笑)。
でんでん 昔は、土地を1平方メートル掘ったらいくらとかあったよね。
小日向 全然そういう経験ないな。コック帽をかぶってチーズケーキ作っていたもん。
大杉・でんでん 全然違うね(笑)。
―今では、3人とも名脇役として活躍されています。
でんでん “名”を取ってくれないと恥ずかしいですよ。“脇役”です。
大杉 いろいろ言われるでしょ。個性派俳優とか、いぶし銀とか、ね。そういうのは全部取ってください。ごく普通のおじさん俳優ですよ。
小日向 代わりはいくらでもいるんですよ。僕はいつもそう思っています。病気になったら、絶対、代わりの俳優はいるわけですから。
大杉・でんでん そうそう。
小日向 カッコつけて、その椅子に座らないよって言っていたら、すぐに誰かに座られちゃう。依頼された仕事は、ありがたくやらなくちゃ、と思っています。
大杉 僕も一緒です。サッカーでいえば、11人のフィールドプレーヤーに入らないといけない。選んでいるのではなく、まずは選ばれなくてはならない。そこは、ちゃんとわきまえているつもりです。そして、僕らの仕事は、まず健康が大切! はい! ここにいる3人は、すこぶる元気です。
でんでん 必ず健康の話はでるよね。“くるくるとんとん体操”とか。
大杉 “くるとん体操”ね。股関節をやわらかくする体操で、みんなと現場でやったけど、よかったですよ。
小日向 あとは血圧の話と、発毛関連ね(笑)。大杉さんは元気だからなぁ。
大杉 若いときは考えなかったけど、健康=元気になるといいなと思う。気だけ元気でも、身体が同じとは限らないからね。健康でいることの大切さ。健康でないと、病んでたり、エキセントリックな役もできないから。
でんでん それとメダカの話をよくします。
小日向 子どもが生まれたんです。水草についていた卵から、また生まれたの。14匹からさらに増えちゃった!
大杉 また、どうでもいい話が出た(笑)。メダカ眺めながらビール飲むんだよね。
小日向 ウイスキーね。
大杉 お酒は好きでも、メダカを眺めながらは、飲まないかな。
でんでん コヒちゃんおいてそろそろ帰ろうよ。
大杉 そうだね。