妻の家事労働時間は夫の5倍!
働き者といわれる日本人の平均労働時間は年に1729時間(労働政策研究・研修機構調べ)。1か月に働く日数を20日とすると、1日あたり約7・2時間働いているという計算。ん? 意外と少ないような。生活経済ジャーナリストのあんびるえつこさんいわく、
「これはタイムカードに記された労働時間の平均値ですよね。サービス残業とか、仕事の延長上にある飲み会なども含むと……。もっと長い気がします」
労働問題に詳しいジャーナリストで和光大学教授の竹信三恵子さんは、
「先進国の多くが労働時間を規制して、生活と労働のバランスを確保していますが、日本は別。これまで残業時間の絶対的上限がありませんでした。人間らしい生活のため、1日の労働時間規制に本腰を入れるとき」
さらに国の成熟度を示す女性管理職の割合は、国際労働機関(ILO)の調査では、日本は11・1%と世界108か国の中で96位。
「政府は『働き方改革』で同一労働同一賃金、労働時間の罰則つき上限規制を取り入れようとしていますが、会社の主観や思い込みで左右されやすい“貢献・成果”が同じこと=賃金が同一と解釈されているため、女性への偏見はなくなりそうにありません」(竹信さん)
そのうえ週刊女性の読者世代ともなれば、仕事の他に家事に育児にと、時間や労力がかかってくる。
「ランキングが低い原因のひとつは、家庭生活との両立が難しい労働時間の長さにあります。労働政策研究・研修機構の調査では、女性が昇進を望まない理由の1位は“家庭との両立”です。そのうえ女性は、残業や転勤などを引き受けられることが“男性並み”の証拠とされ、高い評価を受けるという調査もあり、家庭を持つ女性には、かなり不利なのです」(竹信さん)
総務省の調査(平成23年社会生活基礎調査)では、1日のうち家事労働に割く平均時間は、男性が平均1時間にも満たないのに対し、女性は3時間35分。
「現在の日本では、過労死の基準となる時間が労働時間の上限。子育てなどに必要な1日あたりの労働時間規制もありません。とても男女が家事育児をしながら働ける仕組みにはなっていません。
やはり女性の賃金引き上げと、働き手の労働時間規制が重要。妻の低賃金が是正され、夫が“自分ひとりで世帯賃金を稼がねば”と長時間労働を自発的に引き受けることがなくなれば、男性は女性が稼いだ分だけ労働時間が短縮できるようになり、女性の経済力と男性の家庭での生活力が上がります」(竹信さん)
確かに、家事を分担しようにも、夫が家にいなければどうにもならない。
せめて通勤時間が少しでも短ければ、と思いきや、男性は平均1時間10分、女性は50分を費やしている(総務省「平成23年社会生活基礎調査」)。
「地方と都心部では、差が出そうですね。女性のほうが短いのは、家事負担が女性に重くあることの証左では。夕食、作らなくてはいけませんものね」(あんびるさん)
10大都市圏に分けてみると、男女計の平均通勤時間が長いのは関東圏(1時間18分)に続き関西圏、仙台圏の順。短いのは新潟圏(43分)、静岡・浜松圏、札幌圏と続く。車を使う機会が多い地方よりも、電車などの公共交通機関が発達している大都市のほうが時間がかかる傾向にあるようだ。
”友達の数”平均20人でも、悩みを相談できる友は…
プライベートの時間はどうだろう。日本人が休養・くつろぎに充てる時間は、平均1時間31分(総務省「平成23年社会生活基礎調査」)。何をしようかと考えている間に、終わっちゃいそうな気が……。
「この時間でリフレッシュしなくてはいけないのですから、私たちは大変。選択肢は限られてきますよね。ゲームやスマホいじりは、安価で短時間でできる身近なリフレッシュ方法なのだと思いますよ」
と、あんびるさん。そんな限られた自由時間で行う「夫婦の会話」。明治安田生命が行ったアンケートによれば、「愛情を感じている」夫婦の平日の平均会話時間は1時間51分、そうでない夫婦は39分。また、人付き合いにかける平均時間は20分ほど(総務省「平成23年社会生活基礎調査」)。周りとの交際や夫婦間のコミュニケーションもそこそこに、あくせく働く日本人。たとえ短い時間でも有効活用するには? あんびるさんは、
「わが家でブームの余暇の過ごし方は、散歩です。家族みんな、それぞれが都合のいい時間に、それぞれ行きたいところを歩き回って、たまにスマホで写真を撮って送り合っています。安価で短時間のリフレッシュ法としてはおすすめです」
友達に関する数字も興味深い。広告代理店アサツーディ・ケイの調査('14年)では、平均20人。この結果に作詞家の及川眠子さんは、
「知人、友人、仲間など、自分に関わる人たちの呼び方は多々ありますが、友達の定義づけは個人によって変わってくる。もっと関係性に縛りを作ったほうがわかりやすいと思います」
確かに、漠然と友人とは何かと聞かれても即答できない。また同じ友達でも、「悩みを相談できる友達」となると、平均3人という結果に。
作家でミュージシャンのドリアン助川さんは、
「月に1度でも酒を飲めれば友達なのか。ネット上でも、まじめに語り合える仲なら友達な気もするし。20人もいるとしたら、生涯楽しく生きていけそうなのに、日本の若年層の自殺率は世界ワースト1位。どうしてなんだろう。親友が1人か2人いれば、それで十分ではないかという気が僕はします。20人という数字は予想以上に多いな、という印象。みんなの願望も入っているのではないでしょうか」
<プロフィール>
あんびるえつこさん◎生活経済ジャーナリスト、「子供のお金教育を考える会」代表。新聞社を退社後、各メディアで家庭経済に関する記事執筆を続ける傍ら、講演活動も精力的に行っている
竹信三恵子さん◎ジャーナリスト、和光大学人間学部教授。貧困や労働者問題についての先駆的な報道活動に対し’09年に貧困ジャーナリズム大賞受賞。最新著書に『正社員消滅』(朝日新書)
ドリアン助川さん◎作家、ミュージシャン。’15年、ハンセン病の元患者である女性の人生と周囲との交流を描いた小説『あん』(ポプラ社)が河瀬直美監督によって映画化され大ヒットを記録
及川眠子さん◎作詞家。Wink『淋しい熱帯魚』、やしきたかじん『東京』、新世紀エヴァンゲリオン主題歌『残酷な天使のテーゼ』などヒット作多数。モットーは「自分で自分を決めない」