中村は松任谷由実など、多くのアーティストの舞台演出も手がける

 昼ドラ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が絶好調。シニア世代の圧倒的支持を得て高視聴率を続けている。

「脚本は82歳の倉本聰で、86歳の八千草薫を筆頭に石坂浩二、加賀まりこ、浅丘ルリ子など出演者のほとんどがご高齢なんです」(テレビ誌ライター)

 舞台となっているのは、長年テレビや映画に貢献してきた者だけが入れる老人ホーム。施設内では毎朝流れる音楽に合わせて入所者が『やすらぎ体操』という体操をする設定になっているが、5月5日の放送ではこんなサプライズが。

エンディングで『やすらぎ体操第一』のフルバージョンが流れたんです。NHKの『ラジオ体操第一』を意識した作りで、出演者たちが順番に登場して踊りました。放送後にはYouTubeに動画がアップされ、ネットでは“シニア版恋ダンス”“老いダンス”などと話題になっていますよ」(前出・テレビ誌ライター)

 振り付け・作詞・作曲を担当したのは演出家、振付師、俳優などさまざまな肩書を持つ中村龍史。『やすらぎ体操第一』を作ることになったきっかけについて聞いてみた。

「去年の春ごろに『やすらぎの郷』の話を聞いて、倉本さんに会うたびに“何でもいいから出してくれ。後ろを通る役でもいいから”って直談判したんですよ。

 僕は八千草薫さんと浅丘ルリ子さんが大好きなので(笑)。そうしたら倉本さんから直々にオファーの電話をいただきました。だから、最初は俳優として出演するだけの予定だったんです」

『やすらぎの郷』制作発表には脚本の倉本聰も出席

 企画が進む中で、テレビ朝日のプロデューサーが“ドラマ用のラジオ体操を作りたい”と倉本に相談した。

「“中村さんに作ってもらえばいいじゃない”と言ってくれて、まず作詞の依頼が来たんですね。音楽チームに詞を渡したら“詞を書くんだったら、曲も中村さんに書いてもらったらいいんじゃない?”と(笑)。曲もやることになり、振り付けも決まっていなかったので、僕がすべてお受けすることになりました」

 曲には“前を向いて頑張ろうよ”というシニア世代へのメッセージを込めたという。

「“人生百年年金に頼るな 死ぬまで歩こう 自分の足で”という歌詞が気に入ってますね。やっぱり“死ぬまで自分の足で歩いていたい”というのはみんなの願望だと思うんです。ちなみに『やすらぎ体操』は第二もあるんですよ。最後の歌詞は“死ぬまで稼ごう 自分の腕で”です(笑)」

 振り付けもシニア世代向けに“和のテイスト”を意識。

「手を合わせてお辞儀をするところから始まり、相撲の四股から取った振りもあります。盆踊りやハワイアンの動きなど、いろいろな踊りのエッセンスを取り入れましたね。手の指の運動が入っているのは、脳を刺激して老化を防ぐため。……そして、最後にはボルトです(笑)

 最後に八千草が「ジャマイカのポーズ!」のかけ声とともにキメるのは、ジャマイカの陸上選手ウサイン・ボルトの“勝利のポーズ”。この振り付けで踊りに絶妙なキャッチーさが加味されることに。

 中村が出演するのは6月から。元コミックバンドのメンバーという役どころだ。

「僕は音楽活動もしていて『病名シリーズ』という持ち歌があるんです。『痛風に吹かれながら』とか『振り向けば腰痛』とか(笑)。ドラマでは僕が歌うシーンもありますよ」

 倉本が彼の楽曲を気に入ったことから、演奏シーンが生まれることになったという。最後に『やすらぎ体操』の生みの親はこう締めた。

「絶対に流行ってほしいですね、それこそ“恋ダンス”みたいに。お年寄りの方が楽しめるようなダンスを目指して作りましたから、老人会とか運動会とかで踊っていただければ一番うれしい。スタッフは“これで紅白に行く!”と盛り上がっていますよ(笑)」

 紅白のステージで豪華出演陣の勢ぞろいを見たい!