「音楽番組で共演させていただいてから、自分の曲で一緒に歌わせていただくことが夢だったんです」
10枚目のシングル『母と娘の10'000日 〜未来の扉〜』で“叶うとは思わなかった”という演歌の女王・八代亜紀とのコラボレーションが実現したMay J.。
撮影で、彼女の肩を抱きよせる八代に「娘と一緒にいるお母さんの気持ちですか?」と尋ねると、May J.から「お姉さんです」。続いて八代から「お姉ちゃんと言ってください(笑)」と返ってきた。
話を聞くうちに、仲のよい、本当の姉妹のように見えてきたふたりの初めましては'13年の歌番組。
May J.「大先輩との初共演で、すごく緊張していた私に、八代さんがそっと寄り添ってくださったんです。そのおかげで、安心して一緒に歌うことができました。収録が終わってからお話をしたら、八代さんは、旧姓ですが本名が同じ“橋本”だということがわかって」
八代「共通点があって、すぐに打ち解けてね」
May J.「そのときに“ドレスを作ってあげるわ”って言ってくださったんです」
八代「ドレスとか着物を結構、プレゼントするんです。絵を描くのが好きなので、ドレスは、贈る方の顔を思い浮かべながらデザイン画を描いたりして」
May J.「そのドレスが、八代さんと共演できる、いいタイミングでできあがりました。胸元にスワロフスキーがついているんですけど、八代さんが選んで、縫いつけてくださったんですよ」
八代「上品でシンプルで、すごくMay J.っぽい。“娘さん”っていう感じのドレス」
May J.「八代さんと一緒に歌うときに着たいんです」
八代「ステージは、もっと派手なものがいいわよ」
May J.「え〜っ!? あのドレス着たいです(笑)」
ドレスのお礼として、May J.も八代に手作りのヘアアクセサリーとピアスをプレゼントしたそう。
May J.「なにかお返しがしたくて。八代さんに負けないくらい目立つデザインのものを作りました(笑)」
八代「すごくかわいいの。ステージのときにつけようかな」
May J.「手作りなので、留め金のところが、すぐ壊れちゃうかもしれないんですけど(笑)」
八代「そう、壊れるんですよ(笑)。でも、直せばいいから。ほら、思いが入っているでしょ。それが大事ですよね。May J.ありがとう」
すっかり心を通わせているふたりが歌う『母と娘の10'000日 〜未来の扉〜』は、アンジェラ・アキによる結婚を控えた娘と母の思いを綴ったウエディングソング。新たな一歩を踏み出す娘の気持ちをMay J.が、その娘に向けた母の思いを八代が歌いあげている。
May J.「母への感謝の気持ちを歌にしたいというところから始まったんです。
個人的なことですが、この3年で初めて母が倒れ、2回入院するという経験をしました。“いつも元気なお母さん”だったので、驚いたのと同時に、当たり前だと思っていたことが、そうじゃなくなるんだと考えるようになって。だからこそ、感謝の気持ちを伝えられるような曲が作れたらいいなと思ったんです」
発売前に、いち早くこの曲を聴いた母親から連絡が来たそう。
May J.「“泣いたよ”って、電話が来ました。曲を通して、私の思いが母に届いて、喜んでくれていたらいいんですけど」
八代「もちろん、喜んでくれているわよ」
May J.「この曲って、聴く人の状況でとらえ方が変わってくると思うんです。私は、やっぱり娘目線で聴いてしまいますね。将来、自分が結婚するときに、母と歌えたらいいなって思います」
八代「なかなか、こういう母と娘の曲ってないと思う。いいですよね。ジーンとくる」
声質のまったく違うふたりのハーモニーが心地よく、歌詞が胸に沁みる。
八代「May J.の声は、高くて通る声。私は、ギターでいうベース。低音のね」
May J.「八代さんの声は、厚みがあって、響き方が独特なんです。包み込んでくれるような感じで。今回、八代さんのレコーディング姿を見ることができたのが、本当にうれしかったんです! スタッフの方にも見せたことがないって」
八代「デビューから47年間、スタッフは誰も見たことがないの」
May J.「高倉健さんとか石原裕次郎さんがご覧になったことがあるって」
八代「恥ずかしいのよ、真剣に取り組んでいる顔を見られるのが。なぜか、絵を描いているときは平気なんだけど、歌はダメ」
May J.「そんなとってもレアなレコーディング姿を、しかも、女性の歌手とデュエットするのは初めてってお聞きしたので、本当に光栄です。ありがとうございます」
八代「私も今回初めて、女性シンガーがレコーディングする姿を見ました。May J.緊張してなかったでしょう」
May J.「えっ!?緊張して、大変でした(笑)」
八代「そうだったの(笑)。歌唱力があるから、100パーセントの力で歌いたいのね。完璧に。でも、私は、レコーディングは完璧にしないの。肩の力を抜いて、リラックスして7割くらいの気持ちで歌うんです」
May J.「7割ですね」
八代「ライブは一発勝負だから、100で歌うけど、レコーディングは何回も録るじゃない。もっともっと、と思っていると120とか、150パーセントになっちゃう。そうすると、聴く人はお腹いっぱいになっちゃうのね。だから、May J.に“7割で”って言ってできたのが今回のシングルです。素晴らしい」
May J.「いや、私は、本当に7割で歌ったら、作品にならないので」
八代「そんなことない。(アドバイスする)前の歌声と比べたら、シングルになったもののほうが好きよ。
“もう1回聴きたい、おかわりしたい”と思わせるのが、私たち、シンガーの使命なんです。May J.は、きちんとじゃなくて、楽しんで歌うことを意識したらいいと思う。とにかくまじめなの。真剣で」
May J.「そう、そこが自分でもイヤなんです」
May J.が、悩みを相談すると、すぐに「それはね」と返してくれるという八代。「経験したことばかりだから」と笑顔で語る八代は、歌手としてはもちろん、“花嫁”としてもMay J.の先輩。後輩へのアドバイスを聞くと、
八代「私、妻をしていないので。ダメ奥さんなんです」
May J.「そんなことないですよ」
八代「私の場合、旦那さんが43年間マネージャーであり、プロデューサーで、パートナー。彼は、“八代亜紀は、歌と絵だけを頑張ればいい。あとは、全部オレがやる”って言ってくれているので、私は歌と絵以外は、なにもやらないんです」
May J.「カッコいい。最高ですね!」
八代「そう最高。May J.の周りにもいる? そういう男性をつかまえてほしい」
May J.「どこに行ったら、出会えるんですか?(笑)」
八代「自然とかな(笑)。でも、私も、すべてを捧げてくれていた彼の存在に気づいたのは40代だから。それまでは、結婚はしないと思っていたの。“八代亜紀”で忙しくて、奥さんの仕事はできないから。
それが、“亜紀、結婚したほうがいい。彼ならいいね”って言った父が亡くなって、ある晩、彼が違う女性に取られちゃう夢を見たから、急いで“お嫁さんになってあげる”ってプロポーズしたの(笑)」
May J.「すごい(笑)。私も周りをよく見ようと思います。この人だって、気づくタイミングがいつ来るか、わからないですから」
八代「絶対にいるから! May J.は私よりも早く見つけられると思うよ」
May J.「頑張ります(笑)。そう、八代さんにお聞きしたかったんです。お料理するのかな? って」
八代「しない!(笑)」
May J.「なんだか、安心しました(笑)。いいんだなって」
八代「私よりも才能のある方がいるから。そのかわり、歌と絵は任せてって(笑)。May J.も“歌は任せて”っていうのでいいんじゃない。勉強する時間っていくらあっても足りないもの。ただ、お料理をやってみたら、うまいと思うのよ、私(笑)。なぜか、その思いだけは、ずっとあるの」
May J.「わかります!」
八代「今度、料理を一緒に作ろうか。なにか得意料理をひとつ開拓しよう」
May J.「いいですね。なにがいいかな……」
八代 May J.「カレーライス!」
May J.「私、カレーだけは作れるんです(笑)」
八代「あれ、最初に炒める肉が焦げちゃうよね」
May J.「そう、焦げちゃいますよね! それと、ジャガイモの皮をむくのが大変で」
八代「それは、得意な人にやってもらいましょう(笑)」
May J.「私、八代さんが箱根に持っているアトリエに行ってみたくて」
八代「行こう行こう、May J.絵を描きなさいよ」
May J.「すごく興味があるんです! でも、すっごく下手で……。教えていただきたいです」