初心者に向いているのは面積あたりの賃料単価が高い1Kやワンルームマンション。詳しくは本文で解説します

住まいに関する女性の強みを生かす

 今、人気が高まる不動産投資。株や投資信託、FXなどさまざまな投資先がある中で、不動産投資にはどんな利点があるのでしょうか。

「まず、不動産投資だけは融資を使うことができるんです。融資を受けられる与信を実物資産に変えられる唯一の方法が不動産投資なんですね。また、変動する経済状況の中、不動産を所有することはインフレ対策にもなります」(ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん)

 とはいっても、不動産投資なんて、なんだか難しそう。

「確かに、まったくの投資初心者にとってはハードルが高いかもしれません。ただ、一般的に女性はお金に対してシビアですから、負け物件をつかみにくいという傾向はあると思います。不動産に対して主婦ならではの知識や感覚を生かせる利点もありますね」(風呂内さん)

 実は風呂内さん、26歳のときに貯金80万円でマンションを購入しています。

「なんの予備知識もないまま購入を決めてしまったんです。契約してから本を読んだり、担当の営業さんに質問をしたり、実際にマンションの購入経験がある40代の先輩から話を聞いたりして、慌ててお金の勉強を始めました。もともと貯金やお金の管理が苦手だった私にとっては、いいきっかけになったと思っています」

 風呂内さんいわく、お金に関する知識を身につけることは、稼ぐことに匹敵するのだそう。

家庭の事情で仕事ができなくても、お金の知識を生かして家計を改善することで、働くことに近い効果を得られるんですよ」

■不動産で家賃収入を得て家計のリスクを減らす

「これからの時代は、ひとつの収入だけでは厳しいと思います。副収入の柱を1本か2本は作っておかないと老後破産が現実のものになってしまう可能性もあります」

 そう警鐘を鳴らすのは、不動産鑑定士の浅井佐知子さん。浅井さんは副収入の柱のひとつとして、不動産投資がおすすめなのだそう。

「最初からローンを組んで不動産を購入するのは難しいのですが、現金が300万円あれば物件を買うことができます。毎月、なにもしなくても賃料という固定収入が入ってくることが、不動産投資の大きな魅力です」

 というわけで、ここからは浅井さんに不動産投資の基本を解説してもらいます。

投資にかかるお金・儲かるお金

 不動産を買うにはいったいどれくらいのお金が必要? 儲けはどうやって出すの? まずは不動産投資にまつわるお金の基本情報を知っておきましょう。

■物件購入価格+1割の初期費用がかかる

 不動産を購入するには、まず資金が必要です。約300万円あればスタートできますが、契約の際には売買代金以外にも仲介手数料などさまざまな費用がかかります。すべて合わせると、初期費用の合計金額は、物件購入価格の7~10%程度。つまり、契約時には物件購入価格+1割程度の費用がかかります。

 300万円の物件を購入する場合は、合計で330万円程度の費用が必要になってくるのです。

■不動産投資には2種類の利益がある

 不動産投資で得られる利益には、毎月の家賃収入(インカムゲイン)と、買ったときよりも高く売却できたときの利益のふたつがあります。

 毎月、決まった額の賃料が入ることこそが不動産投資の大きな強み。少々、景気が悪くなったとしても、部屋を借りてくれる人がいる限り安定した定期収入が入ってきます。不動産投資は、この家賃収入(インカムゲイン)で稼ぐことが基本です。そのためには、借り手が見つかりそうな不動産を選ぶことが何よりも重要です。

300万円から始める不動産投資の物件例

■買い替えの時期を見てボーナス的な利益も

 売却で利益を得る方法もあります。はじめから売却益を狙って物件を買うのはプロの投資家でもなかなか難しいもの。不動産投資の基本は家賃収入で稼ぐことです。ただし、いい物件を安く買い、高く売れればボーナス的収入もありうるのです。売るタイミングとしては、不動産所有は5年ひと区切りといわれています。それは5年を越えると売却益に対する税率が低くなり、手取りが全く違ってくるからです。将来的に物件を売却するといった視点を持つことも、勝ち組大家さんへの近道です。

初心者でも勝ち組になる物件選び

 不動産投資の初心者さんは、まずは練習をするつもりで小さな金額の物件から始めてみましょう。いい物件を選ぶことが、勝ち組大家さんへの最短距離です。

 不動産の選び方では「利回り」の見方が重要になってきます。さまざまな経費を引いて、一時空室になっても賃貸経営をするうえで十分に成り立つ目安は表面利回り12%といわれています。なので表面利回り12%の物件に注目することが勝ち組になるための大きなポイント。

 この表面利回りは年間の家賃を不動産の価格で割った、収入の目安を計算するものです。一方、実質利回りは、年間家賃から管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費を引いた収益を不動産価格で割ったものです。

表面利回りと実質利回りの例

■物件の選び方ポイント3か条

(1)土地勘がある場所で探すべし

 不動産を所有して家賃収入を得るためには、入居者が必要です。例えば、駅やコンビニが近い、大学や工場があるのでワンルームの需要が見込める、といった地域の事情を知るためにも、物件は土地勘のある場所で探しましょう。まったく知らない地域で物件を検討する場合は、地元の賃貸管理会社を最低3軒はまわってヒアリングをしたいものです。

(2)1Kやワンルームを選ぶべし

 マンションの部屋には、単身者向けの1Kやワンルームのほか、ファミリー向けの2DK、3LDKなどさまざまなタイプがあります。部屋の大きさが広くなればなるほど、面積あたりの賃料は割安になるのが一般的。そのため、初心者にいちばん向いているのは面積あたりの単価が高い1Kやワンルームマンションだといえます。ただし、狭すぎる部屋はNGです。

(3)小さな金額で現金購入すべし

 ローンを組んで物件を購入した場合、「入居者がなかなか決まらない」、「賃料が入らないのでローンが払えない」といった失敗をする可能性が。現金で購入するだけで、かなりの失敗要因がなくなるものです。区分所有のマンションなら、都心周辺でも200万円台から物件があります。経費を考慮しても300万円程度の現金があればリスクの低い不動産投資が始められます。

■選んだら損をする!NG物件

 失敗しない不動産物件を選ぶには、まずはじめに、選んではいけない不動産を知っておくことが大切! 次の5つのNGに気をつけて!

(1)新耐震基準前に建てられたマンション

 マンションは1981年に耐震基準が大きく改正され、「新耐震基準」になりました。新耐震基準前の建物でも耐震補強をしたものであれば問題ありませんが、将来の転売のしやすさを考えて新耐震基準のマンションを選ぶようにしましょう。

(2)ひと部屋が異常に小さいワンルームマンション

 同じ1Kでも、実際は部屋によって大きさがかなり違います。玄関もユニットバスもキッチンも含めて8畳程度の1Kは小さなビジネスホテルの部屋と同じようなもの。なかなか借り手が見つからず、買い手もつかないのが現状です。

(3)賃貸が成り立たない地域にある物件

 賃貸の部屋を探している人は、利便性を重視しています。例えば、駅から遠い、近くにコンビニやスーパーがない、都心まで遠いといった地域の不動産は、賃貸物件として人気がありません。

(4)供給過剰地域にある不動産物件

 部屋が空室だと、当然、家賃収入は見込めません。賃貸物件が供給過剰な地域の不動産は避けるべきです。購入前に、その地域のアパートやマンション全戸数に対する空室戸数を示す「空室率」をインターネットなどで必ず調べましょう。

(5)事故物件

 事故物件とは、自殺や他殺があった物件のこと。一般的に事故物件は相場より3割近く安くなるといわれており、なかなか売却できないケースも。事故物件をつかまないよう、必ず事故物件公示サイトでチェックするなどの対処をしておきましょう。

工夫次第で大きく儲かる部屋に

 不動産投資でしっかりと家賃収入を稼ぐためには、空室をつくらないこと=入居者が惹かれる物件にすることが大切です。そのためには、内見に来た人に「この部屋に住みたい!」と思ってもらえるような部屋作りが必須。その方法のひとつが「ステージング」です。ステージングとは、空室の部屋に家具や小物類などを入れて演出すること。例えば、窓にカーテンをかけてみたり、照明を変えてみたりと、ちょっとした演出をするだけで部屋の印象が大きく変わります。

 水まわりにだけ赤いアクセントクロスを張って赤をテーマにした部屋にするなど日ごろのセンスと家事力を生かし、コンセプトを作って楽しい部屋にするのもおすすめです。

 また、賃貸物件を扱っている不動産会社に広告企画料を上乗せして支払うのも効果的です。部屋を探している人に実際に物件を紹介するのは不動産会社の営業マン。広告企画料を弾むことで積極的に部屋を紹介してくれるもの。結果的に、すぐ借り手が見つかりやすくなるのです。

■部屋の印象が大きく変わる工夫

(1)玄関に大きめの鏡を置く

 特に女性の入居者を希望している場合は、外出前に全身チェックができるよう玄関におしゃれな鏡を取りつけてみましょう。

(2)家具・カーテンつきに

 家具やカーテンがついている部屋は初期費用がかからないため、特に単身者は魅力的に感じます。

(3)水まわりをキレイにする

 水栓を新しいものに取り換えるだけで、清潔感が増して見えます。キッチンの水栓なら、1万円前後でシングルレバーに交換可能。

(4)照明器具で明るく高級感を出す

 照明器具を1万~2万円前後の少し豪華なものにするだけで部屋の印象が明るくなり、高級感が出ます。

(5)コンセントカバーを替える

 ネットショップなどで手ごろな値段で売っているおしゃれなコンセントカバーに替えるだけで部屋の印象がアップします。

経費を抑え収入を上げるコツ

 いくら理想的な物件を購入できたとしても、毎月、現金が手元に残らないと勝ち組大家さんとはいえません。「家賃収入-経費=手取り収入」、これが賃貸経営の基本です。少しでも儲けを増やすためには、不動産投資に関する経費を削減することもひとつの方法です。ここでは、効率的な経費の削減方法を紹介します。

 例えば、区分所有マンションを購入した場合にかかる維持経費は、(1)管理費、(2)修繕積立金、(3)固定資産税、都市計画税、(4)管理会社(不動産会社)に支払う維持費用(PMフィー)、(5)保険料です。

 このうち、経費が削減できるのは保険料と不動産会社(管理会社)に支払うPMフィー。火災保険の場合、契約期間が長期になればなるほど割安になるほか、一括で支払うと割引が適用されます。

 PMフィーは、より安い管理会社に変えることで削減が可能。管理会社によって金額が異なりますが、入居者が毎月振り込む家賃や管理費の総額から3~5%を支払います。低いPMフィーでしっかりとした対応をしてくれる管理会社を見つけるには、大家さんのコミュニティーの“口コミ”などネット情報が役立ちます。

 また、余力があれば管理会社を使わずに自主管理をすると経費をグンと抑えることができます。敷金や礼金、毎月の賃料などを集金したり、契約更新や退去の手続きなど、不動産の管理業務にはさまざまなものがあります。管理業務をすべて自分で行えば、PMフィーそのものの費用を削減できます。専門的な手続きなど多くありますが、女性ならではのこまやかさが生きることも。最初からは難しくても自主管理を目指すのも手です。

〈教えてくれたひと〉

風呂内亜矢さん◎ファイナンシャルプランナー。大手電機メーカー関連会社を経てマンション販売会社に転職後、2013年にファイナンシャルプランナーとして独立。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などでお金に関する情報を発信している。『その節約はキケンです』など著書多数。

浅井佐知子さん◎不動産鑑定士。浅井佐知子不動産鑑定事務所代表。大手不動産会社勤務を経て、子育てをしながら不動産鑑定士の資格を取得。著書に『世界一やさしい不動産投資の教科書1年生』など。